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俺はマザコンじゃないッ!

この俺が、マザコンだって……!?


「何を言うかと思えば。俺のどこが――」


「ふーん。そんじゃ、テストを始めよっか♪」


アキはにやにやと笑いながら、人差し指を突きつける。


テストだと?

面白い、かかってくるがいい……!


「まずは第一問!

 『あなたが尊敬する歴史上の人物は?』」


「以東 春子」


「はい、マザコン確定ッ!」


ぱん、とアキは手を叩いた。


「いきなりアウト~。はい、閉廷で~す」


ちょっと待て、納得がいかないぞ。


「母さんを尊敬して何が悪いんだよ。

 立派な人だろうが」


「お兄ちゃんさぁ。

 あたしは『歴史上の人物』って言ったよねえ!?」


「ああ」


「それで、答えは?」


「以東 春子――母さんだよ」


「ママがいつから『歴史上の人物』になったーっ!? そりゃ、あたしだってママのことは好きだよ、うん、大好き! でも、ね……『尊敬する歴史上の人物』で真っ先にママの顔が思いつくのが、マザコンの証だって言ってるの!」


「母さんだって人類の歴史の一部だぞ」


「ダメですっ! Wikipediaに個別項目が無い人を『歴史上の人物』とは認めません~!」


個別項目、か……。


「(いや、あるんだよな――母さん名義じゃなくて「星羽ミハル」名義なら)」


でも、そんなことを言うわけにはいかない。

アキは「星羽ミハル」の正体が母さんだと知らないんだから。


「ちなみにね」とアキは得意げに言った。



「模範解答は「坂本龍馬」か「スティーブ・ジョブズ」だよ。『尊敬する歴史上の人物』なんてのは「自分語り」の道具でしかなくて、いかに自分が「既成の価値観」にとらわれない「若者らしい感性」を持っているか……を語るための取っかかりに過ぎないんだ。って、塾のセンセーが受験対策の話のときに言ってたからっ!」



「そういうものなのか。それは勉強になるな……」


「だから「自分の両親」みたいな他人からしたらピンと来ない人物の名前を挙げる人は、その時点で問題の趣旨をはき違えてる……ってわけ! お兄ちゃん、不合格!」


「俺がマザコンかどうかっていう話からズレてないか?」


アキは俺の質問を無視して続ける。


「お次は第二問!

 『今年のバレンタインで貰ったチョコレートで一番嬉しかったのは?』」


一番、嬉しかったチョコレート――

簡単だ。考えるまでもなく答えは出ている。


「ペンギンの形をしたチョコレートだな。ホワイトチョコとミルクチョコを組み合わせてペンギンを象った手の込んだ製品で、食べるのがもったいなかったよ。後で調べてみたら、デパートの予約限定商品で毎年すぐに売り切れるやつだったらしい。きっと、忙しい仕事の合間をぬって……」


「アウトーッ!」


「なんでだ。

 あんなに嬉しいチョコレートが他にあるものか」


「それ、あたしも貰ったやつ!

 ――っていうか、ママのじゃん!」


「そうだが……」


「フツーはお母さんから貰ったチョコを『バレンタインのチョコレート』換算で扱わないの! その時点でマザコン確定ッッッ!」


「くっ、それは否めないかもしれん……!」


できれば否めたいところだが、アキの言葉には説得力がある。

家族から貰ったチョコレートは別扱いか……。


俺の頭の中に一人の女性の顔が浮かんだ。


「(母さんとアキの分を除くと、「あいつ」に貰った一個だけになるな)」


「あいつ」は昨日の俺がバズった件を知ってるんだろうか――

と、考えていると。


「お兄ちゃんもさぁ……」と、アキは神妙な顔をした。


「料理は上手いし、顔だって悪くないし、性格も良いとこだってあるんだし……本当はもっとモテると思うんだよね。でも、たった一つの、大いなる欠点が、その全てを塗りつぶしてるんだよ……?」


アキは人差し指と中指を立てて「3」のサインを作る。


「第三問っ!

 『女の子に最も嫌われる男の子の特徴ってなぁに?』」


「唐突だな。ええと……」


俺は思案する。

女の子に嫌われる特徴、か……。


うーん。


「デートで車道側を歩いてくれない……か?」


「はい、不正解ッ! そんなのは小手先ッ!」


アキは「どるどるどるどる……」とドラムロールの口真似をした。


ばんっ!


「正解は――マザコンッ! マザコン男子は彼女からの好感度をぐーんと下げることで有名です。千年の恋も一瞬で覚めて、百年の孤独に逆戻り! いい歳してお母さん離れできずにいつまでもナヨナヨしてる男は、いくらイケメンでもノーサンキューなんだよーーーっ!」


「たしかに。

 マザコンは女子に嫌われるって聞くよな……」


「他人事みたいに言ってるけど、お兄ちゃんのことだからね?」


「なん……だと!?」


「ちなみに一位はマザコンで、二位はロリコン。三位以下はナルシスト、モラハラ、自己中、カードゲーマー、ネット弁慶……と続いていきます!(私調べ)」


情報源ソースが怪しすぎる。


「でも、シスコンはOK!」


「はぁ?」


「なんていうか、シスコンって可愛げがあるんだよね。女性向けのゲームの攻略キャラでも、シスコンキャラのお兄様って定番だしぃ。完璧超人なのに妹にだけは弱いとか、たぎるよね~~~。だからお兄ちゃんも、やってみない? シスコン」


「やだよ。

 なんで家族にベタベタしなきゃいけないんだ」


「ママに同じこと言ってみろよ、このマザコン兄貴ッ!」


ともかく――と、アキは仕切り直した。


「ミハルちゃん、あの感じだとお兄ちゃんと連絡とってるんでしょ?」


「それは……うん」


「コラボ配信の話とか、来てない!?」



コラボ配信――そう、実はその話を母さんとしたところだった。

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