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機動令嬢伝G-AKUYAKU  作者: スカーレット・オハラショースケ
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戦闘する令嬢たち

先にお話をした金髪のご令嬢、こちらがこの物語の主人公ということになります。

ですが彼女の活躍を描く前に、少々説明をさせていただきたいと思います。


この世界には数多くの国家が存在します。


そのほとんどすべてが、帝国・王国・大公国・公国といった君主制国家です。


侯爵以下の貴族も星の数ほどいます。


また魔法がごく当たり前に使われていますが、行使できるのはほぼ貴族のみです。


魔法が使える庶民は、まれにではありますが出現します。


逆に、貴族でありながら魔法が使えない、というものもやはり少数ですがおるのです。


このような貴族は当主から虐められ、最終的には追放されてしまう、というのが定番となっております。


親としての情はないのか、と義憤にかられる方もいらっしゃるかも知れませんが、各貴族家の当主はそれを当たり前のことと考えているようです。


なお、先に述べた多数の国家のすべてに、「魔法学院」なるものが存在します。


貴族が貴族としての特権を守り抜くために作った階級エゴ丸出しの組織ですが、入学する生徒たちはそういった黒い疑惑は抱かず、素直に魔力向上のための組織であると認識しているようです。


と、ここまで説明してくるとうすうす感づいた方もおられると思います。そうです。ここはよくある乙女ゲームが現実化した世界なのです。


ただ他の乙女ゲー世界と違うところが一つだけあります。


ベースになっているゲームが多数ある、という点です。


多数の国家のひとつひとつが、それぞれ単独の乙女ゲームの世界となっているのです。


ゲームが違うと設定も違ってくるので、混在させると混乱しないかと思われるのですが、実際にはそんなことはありませんでした。


どれもこれも外見だけ十八世紀風で、中身はちょっと遅れた現代風俗だったからです。


典型的なのが女性の下着で、完全に現代のものと同一デザインになっています。素材は多少違うのかも知れませんが。


どうしてですって? リアルに「中世風」にしたらいろいろ捗らないじゃありませんか。実際は近世コスプレで中世ですらないのですが。そこを突っ込むのは野暮というものです。なにせゲームの世界なのですから。


この世界に、近年ちょっとした変化が訪れました。


転生者がどんどこ流入するようになったのです。それはもう埼玉に流れ込む◯◯人のように。


これらの人々の転生先は、大部分が貴族の令嬢です。


そして彼女たちには、幼い頃から婚約者が定められていました。お相手は王子であったり公子であったり伯爵令息だったりします。


平民のクソガキであったということはまずありません。


ただ彼女たちはこの婚約がそのままスムーズに結婚へとつながるものではない、ということを知っています。転生者ですから。


成長して学園に入ると、突然現れた光属性の魔法を使える庶民または下級貴族の庶子が出現し、自分の婚約者をかっさらっていくのだ、と。


そして在学中に「断罪イベント」なるものが発生し、婚約解消に加えオプションとして学園追放とか修道院送りとか国から追放とか酷い場合には地下牢に幽閉とかギロチンでちょーんとかという末路をたどるのです。


あーそこの方。中世にギロチンはねーだろとか突っ込まないように。斧で斬首とかだとゲームがR18になってしまいますから。


ともあれ、令嬢たちはその運命を回避するために学園生活のすべてを賭けます。


そして多くの場合、その努力は実って平和的に婚約者の移譲が行われます。令嬢たちは男を失いはしますが命と身分はなんとか保つことができるのです。


令嬢たちはバッドエンドを回避してああよかった、で済むのですが、周囲はそうはいきません。


令嬢の親はパニックになります。


彼らは王国・公国のトップではありませんが、伯以上の爵位を持つ大貴族です。


その娘が、国のトップである王子・公子から婚約解消を言い渡されるのです。


これはある意味親御さんたちの政治生命の終わりを意味します。


平民の娘の色香に迷って婚約破棄を宣言するなど、馬鹿王子にも程があるのですが、大抵の場合はそれは問題なしとしてスルーされます。


彼らはゲームだとメインの攻略対象の超絶イケメンですから。ヒロインと結ばれたら後は幸福への道が常磐自動車道のごとく開かれることになるのです。


振った旧婚約者の実家が没落しようと、知ったことではありません。


本来のゲームであれば、令嬢たちはヒロインに対して意地悪の限りを尽くすので、断罪・追放・処刑も納得できるものになることでしょう。


ですがこちらの世界において彼女たちは転生者であり、バッドエンドを避けるために「いい人」を必死に演じるのです。


なのでヒロインや王子ですら、断罪後はちょっと後ろめたい気持ちになります。


令嬢の親や取り巻きが納得できなくなるのも、至極当然というほかはありません。


これが国ごとに最低一人ずつ発生してしまうのです。場所によっては断罪される令嬢が二桁になる、というゲームの設定が崩壊してるんじゃないか、と疑われる国すらあります。


というわけで、同じ理不尽な仕打ちを受けた各国大貴族による国際的な連帯が生まれます。



彼らは婚約を解消された自分たちの娘を、なんとかして別の王子・公子と結びつけようと知恵を絞ります。


普通だったら、他国の王子・公子のおさがりなど欲しがるものなどおりません。


大貴族たちは自分の娘に、婚約を解消されたものという欠点を補って余りある付加価値をつけなければなりませんでした。


そこでひねり出されたのが、「令嬢ファイト」です。


つまり、各国から婚約破棄をされた令嬢たちが集い、戦って、戦って、戦い抜いて、最後まで勝ち残ったものを「令嬢オブ令嬢」とし、「これなら文句ねえだろう」と熨斗を付けて適当な国の王子・公子に押し付けることとしたのです。


というわけで、婚約を破棄された令嬢たちは、各国の冒険者ギルドなどにたむろし、クエストをこなしつつ戦闘者としての腕を上げ、自分同様の令嬢と出会ったら「令嬢ファイト」を仕掛けるようになったのです。


かなり長々と話をしてしまいましたが、ご理解いただけたでしょうか。


では、物語を金髪の令嬢「アンヌ・マリー・ド・バトロワゼル」の数奇な生涯に戻すことにいたしましょう。


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