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 その日のうちに私は桃瀬へと連絡をした。馬鹿なことをしたと思う。

 私に唯一許されていたアドバンテージを早々に放棄したのだから、もはや敗退行為と言っても過言ではないだろう。

 姉に話したらまじで殴られるかもしれない。だから今日はもう誰とも顔も合わせずに眠ってしまおう。そうしよう。

 晩ご飯を食べていないからとてもお腹が空いているけれど、今の自分の顔を家族に見られるぐらいなら我慢した方がマシだ。


「ほんと、馬鹿だなぁ」


 布団にくるまりながら思う。


『俺に食べ物をくれる子が一番可愛い』


 長十郎はそう言った。そしてあの男は決して嘘をつかない。

 それはつまり、本当に食べ物をくれる相手なら誰だって構わないってことだ。そこの条件が同じなら、きっと可愛い方――桃瀬が選ばれるに決まっている。

 なにせ相手は将来有望なアイドル候補生。容姿も、頭脳も、身体も、性格も優れたパーフェクトな美少女だ。料理だってすぐに上達することだろう。

 私がそうだったからだ。

 好きな相手のことを想えば、努力なんて少しも苦じゃなかった。私なんかにできたことを、桃瀬にできないはずがない。すなわちこれは負け確の出来レース。

 勝ち目なんかないのは、最初から分かっていたけれど。


「……でも、ほんのちょっと、ほんのとびっとだけさ」


 好きなタイプを聞かれた長十郎が、少し照れくさそうにはにかみながらさ。


「私って言ってくれるの、期待してたんだけどなぁ……」


 じわりとにじみ出た涙を枕で拭う。

 ずっと分かってたことだけど、やっぱり辛い。

 幼馴染みとしてそこそこ深い関係にあるって自負していた。結構、好感度とか稼いでるんじゃないかって。実は長十郎の方もまんざらでもないんじゃないかって。そんな妄想をしていた自分が今では恥ずかしくて仕方がない。


「あー、くそ、無理だこれ」


 好きだったのは私だけなんて、知りたくなかった。

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