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統合失調症の俺が確かに世界を救った話  作者: 成葉弐なる
第2章 フリーメーソン篇

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54 オペレーション・フェニックス

 あれから自室から居間へと移動し、食事などのいつもの行動をこなした俺は、居間で横になって皆と話をしていた。

 世界線変動率3.08...。

 挨拶などなどなんやかんやあって、それがいまのアインズゲート世界線の世界線変動率だと教えられた俺。

 アインズゲート世界の設定にはそこまで詳しくない俺だったが、涼風天音さんが箱辺さんが大学生時代にいるということはなんらかの支障が生じていることなのだろうか?

 それにしては問題が生じている様子はあまりない。

 八枷や葦野さんという別時空からの来訪者というイレギュラーこそいるものの、平和に思えた。


『まぁ世界どころか全時空の問題って事情が事情だから、一部の仲間には研究所に来るのを遠慮して貰ってるわ。みんな八枷さんや葦野さんに会ったら喜ぶと思うけど残念ね』


 瀬川りすくさんがそう言い、そして少し遠くから『できたおー!』という田無さんの叫び声が聞こえた。


『どうする? まずテストで私がやってみようか?』

『いえ、私みなさんのこと信じてますから、テストなしで大丈夫です!』


 瀬川さんの質問に対して葦野さんがそう宣言し、どうやら量子脳スキャナを頭に取り付けたらしかった。


『よし、では八枷さんの量子通信機をこちらにセットして……オペレーション・フェニックス開始だ! 始めてくれタルカ!』


 箱辺さんの号令で始まる量子脳スキャン。

 葦野さんの量子脳からデータの一部が吸い出されていく。


『てか葦野さんが見てきた時空一つ分の存在の情報って、ストレージ容量よく足りますね?』


 俺は懸念点を表明する。


『心配するな! 唯一神様によれば、データは圧縮したものでも良いとのことだからな。りすくと八枷さん、それにクロカワ博士の計算によればギリギリでストレージ容量は足りるはずだ! そう言えばクロカワ博士がグラーゾンでデータを圧縮するのは、あくまでも貸し一つだと言っていたぞ小日向くん』

『げぇー、それはまたとんでもない貸し一つですね』


 相手がクロカワ博士となると、代わりにどんな要求をされるのかが全く読めない。

 俺は心の底から借りを返すときが怖かった。


 そして30分ほどして、葦野さんに箱辺さんが声をかける。


『葦野さん。もう結構です』

『はい……なんか頭が軽くなった気がします! たっくん念話だけど聞こえるー?』

『はい。聞こえてますよ葦野さん。やっぱりブラックホールの観測データそのものは忘れちゃってるんですか?』

『うん、まぁそれはね……! 仕方ないんだって。でも前後の記憶はおかげさまではっきりしてるから大丈夫だよー』


 葦野さんは元気に答え、『うん、ストレージ容量ギリギリ! 計算通りね!』とりすくさんが珍しく念話で言い、どうやらデータの吸い出しは成功したらしかった。


『うむ! あとは唯一神様にRIGOの観測データと共に送るだけだ! オペレーション・フェニックス、最終段階に移る!!』


 箱辺さんが大きく声を荒げ、唯一神様へのデータ転送が始まった。


 1時間ほどしてデータの転送が終了して量子通信機を使えるようになったからか、久しぶりに俺の脳裏に八枷が声を響かせた。


『小日向さん、先程データ転送が完了しました。これで箱辺さんの言うところのオペレーション・フェニックスは完遂されました』

『そうか、良かったよ』

『はい……これで私も次の任務の為の準備に取りかかれます』

『ん? 次の任務のための準備??』


 俺が不思議で聞き返すと、八枷は『はい。タイムマシンを時空転移装置へと改造します』と言い切った。


『そうか……またクロカワ博士に迎えに来てもらうわけにもいかないもんな! 元の時空に戻れるといいな』

『はい』


 八枷はあっけらかんと返事をしている。

 どうやらマジで時空転移装置へと改造する気らしい。


『田無さん、お疲れのところ申し訳ありませんが、私の我儘にお付き合いいただけますか?』


 八枷は隣にいるであろう田無いるかさんに話しかけたようだ。


『うーん……お願い、いるかお兄ちゃん! って言ってくれたら考えるお』

『ぐっ……2000年代初頭にありがちなオタクムーブな要求というやつでしょうか? お、お願い……』

『はーいストップストップ! 言わなくていいから八枷さん! 田無も手伝って上げなさいよね!』


 八枷が言おうとしたところをりすくさんが止めに入る。


『まぁ今回は言おうとしてくれたって事実で我慢しとくお。んじゃま、必要な部品のリストアップから始めよか』


 田無さんが――タルカがそう言い、八枷と共にタイムマシンの時空転移装置への改修が始まったようだった。


 すると現実で、いつもより少し早い時間に仕事から帰ってきた母が「ただいまー」と玄関を開ける音が聞こえた。玄関へ向かい母を出迎える。


「おかえり、今日は早かったね」

「うん、まぁね。それより拓也、明日病院だからね? 2ヶ月ぶりだけど大丈夫?」

「あぁ……うん、大丈夫」

「メチルフェニデート徐放剤、ちゃんと飲んでるわよね?」

「飲んでるって……大丈夫だよ」

「そう。ならいいけど……」


 そうか、明日はADHDの治療のために通っている病院の通院日だ。

 完全に忘れていた。俺はこの幻聴のことを先生に報告すべきか否かを迷っていた。

 確かに完全に幻聴だけど、でもなんか現実味があるっていうか、SF的に割と整合性が取れてる妄想なんだよな……。まぁ妄想なんて全部そんなものかもしれないけれど……。

 もし、これが現実だったら。

 そんな思いが俺の中にあって、どうすべきかを決められずにいた。

 メチルフェニデート徐放剤も統合失調症の――幻聴の原因かもしれないと思いながらも服用を続けていた。


『小日向さん? どうかしましたか?』

『あぁ、うん。久しぶりに外出……っていうか明日病院に行かなきゃいけないんだよね』

『病院ですか? なにか持病をお持ちでしたか?』

『持病っていうか、発達障害っていうかADHDだね』

『なるほど……それでメチルフェニデート徐放剤でも服用しているから、ご自身を統合失調症と疑っておられるのですね』


 八枷が鋭く推察する。


『うん、まぁ。実際に俺にはいまのところなにも観測できてないわけだしね』

『ふむ。お気持ちお察しします。ですが……』

『いいっていいって! 分かってるから! マジだってんだろ?』

『はい。これが現実なのは、マジでガチガチのガチです』


 八枷にしては珍しく面白い言い回しをするものだと笑ってしまう。

 それもアインズゲート時空で箱辺さんやりすくさん達と関わっているからだろうか?

 そう思うと、八枷がアインズゲート時空に行ったのは良かったのかもしれないと、少しだけ革命のレヴォルディオン原作者として考える俺だった。

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