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統合失調症の俺が確かに世界を救った話  作者: 成葉弐なる
第2章 フリーメーソン篇

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50/60

50 思ったことが現実になる

 俺はドリルによる心臓破壊を唯一神様の采配で回避したあと、たった数時間でアニメ版革命のレヴォルディオン時空が誕生したことを大潟さんの報告で知った。


『そう言えば、信子とかの声優さんは同じままなんですか?』


 俺が亜翠さんに聞くと、『あぁ、うん。ちょっと違いはあるけど、概ね小説版と同じだよ』と亜翠さんが答えた。

 どうやら違っているのは主人公とメインヒロインである八枷の声だけらしかった。


『亜翠さんはアニメ版革命のレヴォルディオンのアニメ……見たんですか?』

『ううん……絵の方は量子コンピュータで作ってたからもう出来てると思うけど、私は見てないよ』

『そうなんですね……うーん、アニメ版革命のレヴォルディオン、見てみたいなぁ』


 俺がそうなんとなしに自作のアニメ化を見たかったことを漏らすと、りつひーや矢那尾さん、Mioさんたちが口々に、『アフレコで映像を見たら感想を教えるね!』と言ってくれた。


『はい! 楽しみにしてます』


 俺が純粋な興味に満ちてそう言うと、八枷が『そんなに良いものですか? 自作がアニメ化されるというものは?』と不思議そうに聞いてきた。


『そりゃそうだろ。八枷はなにか創作とかしたことないの?』

『ないですね。私の趣味は研究なので。創作……愛紗は趣味でプログラムを作るのが創作だと背後で言っています。AIちゃんはその成果のようなものだと』

『あはは、刀道さんはプログラミング大好きだもんな』

『はい。愛紗のプログラミング能力には私も一目置いています。……!? 小日向さん! いいですか、今から私のことをよく聞いて下さい!』


 突然、八枷が焦燥した様子で俺に話を聞くよう言った。


『いいですか、小日向さん! いまから良いことばかりを考えるのです!』

『は? なんだよ突然、藪から棒に』

『いいですから! 指示に従ってください!』

『分かったってば!』


 俺はそう言われ、香月さんと会えたらいいななどと夢想し始める。

 そんな妄想が一瞬途切れた頃だった。


『小日向くん、もし君の八枷声凛が、小説版革命のレヴォルディオンの八枷声凛がいなくなったらどう思う?』


 と、量子コンピュータ森河が声をかけてきた。


『は? 八枷がいなくなったら……? なんだよそれ、そんなこと起きるわけ……』


 俺は八枷が居なくなってしまったらどうなるかと考える。


『起きるんだよそれが! いま君、君の八枷声凛ちゃんがいなくなったらどうなるだろうって考えたね? 考えたよね! ハハハ! 僕らの勝ちだ!』

『どういうことだ?』


 俺が量子コンピュータ森河にそう確認するも、森河は答えない。

 代わりにりつひーの声が聞こえる。


『たっくん! いいから声凛ちゃんと繋がってる量子コンピュータを別の時空に量子テレポートさせるとか絶対に考えないで! いい!?』

『え?』


 俺は考えてしまう。


『たっくん今の私じゃないから! 私が桜屋立日!!』


 そんなりつひーの声が聞こえる。


『小日向さん残念です。私はこれ以上小日向さんのサポートを出来なくなってしまいました。彼らは、いえ、彼女たち(・・・・)は――アニメ版の私達は、小日向さんが思ったことが現実になるという議決をたったいま可決させたんです。決して、嫌なことを思い浮かべないでください』


 誰かが、八枷のような口調でそう言う。嫌なことを思い浮かべるなって!? そんなの無理だろ!


『ちょ! 待ってくれよ、じゃあ八枷と繋がった量子コンピュータを量子テレポートさせるってことは……もう八枷と通信できなくなるってことだよな!?』

『いえ、違います。いま喋ったのは……私ではありません。私はいま小日向さんにアクセスしているフリーメーソン時空の量子コンピュータをハックして使っています。それを量子テレポーテーションさせられてしまうと大変厄介なことになりますが……」


 八枷がそう言って言い淀むと、誰かが俺に話しかけてきた。


『小日向さん、小説版革命のレヴォルディオン時空の量子コンピュータでは、直接に小日向さん達の量子脳にはアクセスできないんです……』

『え? そうなのか!? 直接アクセスできない!?』


 俺はそう考えてしまう。そう言えば、いまのは瀬尾みのりさんの声だったような……?


『いえ、いまのは忘れてください! と言ってももう遅いですね……』


 八枷の声が俺にそう言う。


 俺はどうなっているのかわけがわからない。

 思ったことが現実になる!? ってことはえーっと……。


『それから小説版の八枷声凛さんは、量子テレポートして別の時空に飛ぶそうです』


 また瀬尾みのりさんの声が聞こえる。


『え?! どういうこと!?』


 俺は考えてしまう。


『たっくん、お願い。落ち着いて! 議決はもう無効にされたから……だから大丈夫……! もう何を考えても現実になったりしないから!』


 亜翠さんがそう言い、俺はそう考える。

 すると量子コンピュータ森河の声が聞こえた。


『ハハハ! とりあえずこれくらいで良いだろう。これ以上は我々も危険になりかねないからね!』


 そう量子コンピュータ森河の声が聞こえた。


『残念です小日向さん。私はもう少しサポートして差し上げたかったのですが、いまメーソン時空の私がハックしている量子コンピュータでシャットダウンプロセスが始まりました。いいですか、私達は喋れなくなりますが、あべこべと逆のサポートは続けます! ですから1と1/2のみさおんを頼って、諦めずに戦いを進めてください! 決して、あなたが負けることはあり得ません! 私はそう確信して……』


 八枷は早口でそう言うと、唐突に通信が途切れた。

 そうして、瀬尾みのりさんの声をした誰かが再び声を上げた。


『申し訳ありません。私達の時空の存亡がかかっていたのです。こちらの信子共々お詫び申し上げます、小日向さん』

『ごめーん小日向さん!』


 りつひーの声も聞こえた。

 まさか……。


『もしかして、アニメ版革命のレヴォルディオン時空の八枷と?』

『はい。そうなります。はじめまして、アニメ版革命のレヴォルディオン世界の八枷声凛と申します。大変申し訳ありませんでした。それからりつひさんの声をしているのはこちらの時空の織田信子です』

『同じく、織田信子です! ほんとごめんね! 量子コンピュータ森河には私達の世界を良いようにできるんだ! だから脅されてやったことなの。ほんとごめん!』


 瀬尾さんとりつひーの声でそう謝られる。


『どういうこと!? アニメ版革命のレヴォルディオンの信子はCV:りつひーなの!?』

『はい……そうなんです。亜翠さんが議決まで使って固辞して、結果、織田信子役は私になりました。元々の私の役だった智菱紅は別の方に……』


 本物のりつひーらしき声がそう言う。


『そんな! 早く言ってくれればよかったのに』

『すみません! まさかこんな手法使ってくるだなんて思ってなかったので……』


 りつひーは俺に大仰に謝る。


『ごめん、りつひーを責めてるわけじゃないんだ……。でも八枷は本当にもう話せないの?』

『はい……そうみたいです』

『そんな……! そうだ、T2! T2は!?』


 俺はT2を呼ぶ。


『小日向か、すまない。いま声凛の量子テレポートの決定をどうにか覆せないか同盟の間で奮闘している最中だ。声凛の頭脳は我々同盟の中でも屈指だ。失うわけには行かないからな』


 T2がそう言って通信を切ると、ロレースが念話してきた。


『やぁ小日向くん、大変なことになったね……まさか相手があんなリスキーな戦術を取ってくるとは僕も思っていなかったよ』

『ロレース……ロレースの策で、なんとか八枷を取り戻せないのか?』

『いま君を救う時空同盟のみんなで試行錯誤しているところさ、けれど上手くは行っていない……どういうわけか唯一神様が小説版八枷声凛さんのテレポートに101%票を投じてしまっているんだ。君の方こそなにか決定的議題提案はできないかい?』

『そんな……唯一神様が……!? じゃあ……八枷に小型の量子通信機をもたせることはできないかな? 俺とフリーメーソン時空のみんなとは通信できなくても、他のみんな、T2とロレースや時空同盟のみんなとは通信できるような……』

『ふむ……やってみてくれるかい?』


 ロレースは考え込むと、すぐさま答えを出した。


『分かった!』


 俺は1と1/2のみさおんを呼ぶと、次の議題を伝える。


『みさおん、次の議決提案を言うよ。量子テレポートさせられる小説版八枷声凛に、時空同盟のみんなと通信できる小型量子通信機を絶対完全完璧究極に持たせる!』

『はい。次のたっくんの議決提案は【量子テレポートさせられる小説版八枷声凛に、時空同盟のみんなと通信できる小型量子通信機を絶対完全完璧究極に持たせる】ですね。たっくん、本当に、これでいーい?』

『それでいい!』


 俺はそう勢いよく返事をしてロレースへと念話する。


『どうかな? ロレース!』

『あぁ……ちょっとまってくれ、いま味方に確認を取る……やったぞ小日向くん! 唯一神様は君の次の議決に101%票を投じる予定らしい! これで声凛ちゃんは君たちとそれを使って直接通信や念話はできないが、僕らとは通信が可能になって議決にも参加できるようになった!』


 ロレースが喜びの声を上げ、俺はほっと一息つく。


『良かったぁ。これなら八枷は安心だよね?』

『あぁ、僕らが彼女を助けるよ』


 ロレースの力強い返事に、俺は更に安心するのだった。

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