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王女の新しい魔法

俺の側近の一人、草原の国レイモーン王国の神官長で、実は上級悪魔のサヤンの頼みとは、火の国クラティラス王国との国境に近いフィリア瑚の東にあるドワーフの村の洞窟から、けっこうな数のゴブリンが出て来て困ってるみたいだから、フィリア湖の南の道を通って北上しドワーフの村でドワーフのおさに話を聞いてほしいとのことである。

「ねぇ、ルキ、もちろんギネカちゃんに会っていくでしょ?」


「ああ、会うよ」


「分かった。じゃあ先に城に行くわね。あっ、それとルキたちの馬車に最近覚えたての新しい魔法をかけといたから」


「どんな魔法?」


「まぁ、それはすぐに分かるから」


「ふーん、分かった。じゃあリノも気をつけて行けよ」


「うん、ありがとう。じゃあ、みんな、またあとでね」



俺が宿屋の駐馬車場の前の通りから、馬に乗ってけていくダソス王国のプリンセス、リノの美しい後ろ姿を見送っていると、もふもふ騎士団団長もふもふ熊のクレオンが近づいてきた。


「では、ルキ様、我々も厩舎きゅうしゃから馬を連れてきますので」


「ああ、分かった」


俺がそう答えると早速さっそくクレオンを筆頭にもふもふ犬のライラプス、もふもふ猫のタバサ、もふもふうさぎのキラが宿屋の駐馬車場の隣にある厩舎きゅうしゃへと歩いていったのだった。


俺は一人駐馬車場へ向かった⋯⋯。



(しっかし派手だな、この馬車は。街だとちょっと目立ちすぎなんだよ。特にこの扉にでっかく描かれた王族の紋章なんて、どんだけ主張したいんだよ)


俺は宿屋の駐馬車場に入ると目の前の4頭立て大型4輪箱型馬車を見ながらそう思った。


この目の前にある全体が黄金色な上に、馬車の隅々まできらびやかな装飾が施された4頭立て大型4輪箱型馬車で、俺ともふもふたちは、草原の国レイモーン王国から、森の国ダソス王国までやってきたのである。


そこへ宿屋の厩舎きゅうしゃから、もふもふたちがそれぞれの馬を連れて戻ってきた。


クレオンは自分の馬の鼻のあたりを撫でながら俺を見た。


「ルキ様、お待たせしました、さあ、馬を馬車に繋いだらすぐに出発しましょう」


「ああ、そうだな。早くリノに会いたいし⋯⋯」


「なんですと?」


「いや、何でもない、早くギネカに会って守ってやらないと」


するともふもふ犬のライラプスが自分の馬をハーネスで馬車に繋ぎながら俺に言った。


「そうですぞルキ様。だいたい、そのために自国をほっぽらかして、ここまでやって来たのですからな」


「は? なんだよライラプス、結構言うねぇ」


「あっ、これは言いすぎましたルキ様、お許しを。まぁとにかく緊張が高まっている火の国クラティラス王国との国境のそばの街までは様子を見に行ってみましょう。我が国にも関係のあることですし」


「そうだな。リノもそれを望んでたしサヤンの頼みであるドワーフの件は後回しにするか……」


「わ、わぉーん!!!!⋯⋯くぅーん、くぅーん」


「な、なんだよ、突然どした? ライラプス」


「いえ、我があるじ、サヤン様のことを思い出して急に切なくなりまして」


「おい! いくらサヤンの部下で右腕でもあるじは俺だろ⋯⋯あれ? ま、まさかサヤンと悪魔の契約したんじゃないだろな!」


「──ルキ様、さあ、馬車にお乗りください。早く出発せねば」


「は? ごまかすなよ、答えろよ!」


そこで自分の馬をハーネスで馬車に繋ぎ終わったもふもふ熊のクレオンが泣きそうな声を出した。


「私も、我があるじモナルヒス王様にお会いしたいです⋯⋯」


「クレオン、お前もか!!!!」


(まぁ、そりゃー、モナルヒス王に言われてモナルヒス王の息子である俺の側近に任命されたんだろうけどさ⋯⋯そんなハッキリ言わなくてもいいじゃん)


そう思いながら俺がクレオンをにらもうとすると、もふもふうさぎのキラが軽い口調で言った。


「私のあるじはリノちゃんだよー」


「うるさいよキラ、早く馬繋げよ」


その時、自分の馬をハーネスで馬車に繋ぎ終わったもふもふ猫のタバサが俺の方を向いた。


「私はルキ様をあるじとして⋯⋯」


「おお、さすがタバサ! 忠猫のかがみ!」


「ルキ様を主として認めておりませんわ」


「は? どういうことだよ! 今、褒めた言葉返せよ!」


「あら、冗談ですわ、オホホホホ」


「いや、タバサ、目はマジだったぞ」


俺がため息をついていると、いつの間にか馬車の扉の前にいたライラプスが馬車の扉を開けると、こちらを向いた。


「さあ、どうぞルキ様、お乗り下さい」


「えっ? うん、ありがとう」


俺が馬車の扉まで歩いていき馬車に乗りこもうとすると、クレオンが少し高い位置にある御者台に上るところであった。


そして俺が視線を再び馬車の扉に戻した瞬間、キラが俺の横をすり抜け馬車に乗り込んだかと思うとキラはそのまま馬車内の後ろへ走っていった。


俺は馬車に乗り込んだ。


後ろを見るとキラがソファーに寝そべっている。


キラは俺を見てニッと笑った。


「私、ここー」


「いや、そこ俺の席だから」


「いやー、ここ、私が座るー」


急にキラはクロールをした。


「泳ぐなよ」


俺がキラをどかそうとするとキラは抵抗した。


「ルキちゃんは、床に座ればいいじゃん」


「なんでだよ!!!!」


するとキラの師匠のもふもふ猫のタバサが馬車に乗り込んできたのでタバサに言った。


「なぁ、タバサ、キラに言ってくれよ。そこは俺の席だって」


「分かりましたわ⋯⋯さぁ、どきなさいキラ。ルキ様はこれでも一応、王子様ですのよ」


「おい、一応ってなんだよ⋯⋯」



結局俺たちは後ろのソファーに3人で座ることにした。

真ん中はキラ、キラの左側にタバサ、キラの右側に俺である⋯⋯。

ライラプスは一人、前のソファーに座った。


馬車は結構スピードが出ていた⋯⋯。


俺たちは、宿屋から出発して、宿屋から西へ10kmほど行った所の西の森の中にあるリノの城、プリンセス・リノ・キャッスルへと向かっている。


しばらく経った頃、突然軽い衝撃があり馬車が揺れた。


ガタンッ。グラッ。


そのあと馬車は一瞬横滑りした。


「何か踏んだのか?」


俺はそう言い右の窓を手で開けると後ろを見た──。


「あっ!」


俺の視線の先に何かゼリー状の物体がうごめいていた。



「えっ!! あれスライムか?」


その俺の言葉に、キラとタバサも俺の目の前に来て窓から後ろを見た。


キラは俺がソファーの真ん中に移動しないように俺の腕をつかんでいる。


「おい、2人とも! 俺の目の前に来たら馬車の後ろが見えないだろ⋯⋯」


俺が2人にそう言い馬車内に視線を戻すとライラプスが左の窓を開けて後ろを見ようとしているところだった。


その時突然、馬車内が一瞬光ったかと思うと女性の声がした。


ポーン⋯⋯前方にスライムが一体います。ご注意ください。


「は? 何この声?⋯⋯っていうか、おせーよ、もう踏んずけちゃってるよ、スライム」


左の窓を閉めたもふもふ犬のライラプスが馬車内に吹き込む秋風で乱れた自分のもふもふな毛を直しながら俺に言った。


「おそらくこれがリノ様の言っておられた覚えたての新しい魔法なのでしょうな」


「そうなのかな、でもこの新しい魔法⋯⋯魔物探知システムっていうのかな?⋯⋯魔物を探知するのが遅すぎて全然使えねーじゃん」


「ルキ様、今のお言葉、決してリノ様の前では言ってはダメですぞ⋯⋯特定の条件のもとで魔法効果を発動させる条件発動型魔法は非常に難しいのですから」


「わ、分かってるって。それにそんなことリノに言ったら、あとが怖いしな」


「そうですぞ、ルキ様。それでリノ様が怒り出されても、私はルキ様を断じて助けませんぞ!」


「いや、助けろよ⋯⋯」


ヒヒーン!!!!!!!!


──その時、突然馬たちのいななきと共に急に馬車が止まり俺たちの体は前方に傾いた。


馬車が完全に止まると、もふもふ猫のタバサはすぐに馬車から降りていった。


もふもふうさぎのキラはソファーから落ちて床をコロコロと転がっていた。


「あっ、真ん中の席、もーらった!」


俺はそう言い、すぐさま真ん中へ移動した。


するともふもふうさぎのキラがスっと立ち上がり俺を睨んだ。


「もー、ルキちゃん、どいてよ! そこは私の席だよ!!!!」


「いやだ、真ん中は俺の席だ!!!!」


俺とキラは睨み合った。


ゴホンッ⋯⋯。


突然ライラプスが咳払いをしたので見ると、俺に冷たい視線を向けながらライラプスは言った。


「ルキ様、もうこれは王子様らしくとかどうこう言う以前の問題ですぞ⋯⋯まぁ、それより私たちも外に出てみましょう」


「えっ? ああ、そ、そうだな⋯⋯たしかに何で馬車が急に止まったのか気になるよな」


俺たちが馬車の扉から降りようとするとタバサが戻ってきた。


「ルキ様、馬車の前にセバスチャンさんが、いましたわ」


「えっ? セバスチャンが?」


俺はそれを聞き急いで馬車から降りて馬車の前方にいくと、たしかにそこにはリノの城、プリンセス・リノ・キャッスルの執事セバスチャンがいたのであった⋯⋯。


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