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かじってちぎってぱーくぱく

「今日は子供たちが多いな⋯⋯」


ゆっくりとした速度で低空飛行している綿菓子気球で俺たちが和気あいあいとしている最中さなか、綿菓子気球の巨大なワッフルバスケットの中から一人、身を乗り出し眼下を見下ろしていたゴリオのその言葉を耳にした俺は、ゴリオに近寄りゴリオの視線の先を見た。


ゴリオの視線の先には様々なカラフルなカップケーキに似た建物があり、その中にあるキャラメルのような路地の上をたくさんの子供たちが走っているのが見える。多くの子供たちはこちらを見上げながら走ったり手を振ったりしているので、どうやらこの綿菓子気球に興味があるらしかった。


「ゴリオ、あの子供たちは?」

「あの子供たちは綿菓子を待ってるんだよ」

「綿菓子って、この気球のことか?」

「いや、この気球のことじゃなくって⋯⋯そうだ! 魔力が高いリノさんに頼もう⋯⋯リノさん!」


ゴリオの声にリノが振り向く。


「何? ゴリオ」

「この魔法を使って欲しいんだ」


ゴリオの手にはいつの間にか魔法の書が握られ、ちょうど真ん中あたりのページが開かれていた。

リノはゴリオに近寄りそのページを見た。


「何の魔法?」

「お菓子の魔法だよ、唱えるだけでいいからね。リノさんの魔力ならたくさん出てくるはずだから」


リノが魔法の書を覗き込む。


「分かったわ。唱えたらいいのね」


リノは魔法の杖を取り出した。


「じゃあ、いくわよ⋯⋯バ⋯⋯」


その瞬間ゴリオが慌てて魔法の書を閉じた。


「ごめん! ページが違ってた! この魔法を唱えたら大変なことになるところだった!」


そう言ってゴリオは別のページを開いた。俺は思う。


(大変なことって一体どんなことだよ)


ゴリオはそのページに書かれてある魔法の内容をよく確認した後、軽く頷きながらそのページの魔法をリノに見せた。


「これ、このページのこの魔法だよ」


リノが再度魔法の書を覗き込んだ。


「ええ、分かったわ。この魔法ね⋯⋯じゃあ、いくわよ⋯⋯滑台綿菓子スライドコットンキャンディ!!」


何も起こらない。俺はゴリオの顔を見た。


「何も起こらないじゃん、ゴリオ」


その時、突然上の方から、たくさんの袋の擦れる音がし始めた。と同時にもふもふうさぎキラの物欲しそうな叫び声が辺りに響く。


「あ~~!!!!」


俺は上を見上げているもふもふうさぎキラの視線の先を見た。

すると綿菓子気球に突き刺さっている木製の大きな滑り台から袋詰めの綿菓子がどんどんと空中に飛び出している光景が目に飛び込んできた。

その次から次へと滑り台を滑ってくる数え切れない大量の袋詰めの綿菓子は、まるで魔法でもかけられてるかのように⋯⋯ああ、もちろんリノが魔法をかけたんだけれど⋯⋯空中を自由自在に飛んでいき、キャラメルの路地で待ち受けるたくさんの子供たちの手に届けられていった。


子供たちの大歓声の中、もふもふうさぎキラがふくれっ面をこちらに向けた。


「リノちゃん、私も綿菓子欲しい!!」


俺は即座にキラにツッコんだ。


「は? 散々、綿菓子気球をかじって、ちぎって、ぱくついてたくせに何言って⋯⋯ん? あれっ! 何かいいな、このフレーズ⋯⋯かじってちぎってぱーくぱく、かじってちぎってぱーくぱく⋯⋯⋯⋯なぁ、リノどう思う?」


「どうでもいいわよ!!!! ルキこそ何言ってんの!?⋯⋯ほらキラ早くこっちに来なさい、綿菓子あげるから」


リノはそう言って魔法の杖を振ると滑り台から綿菓子が一つ、リノの元へ飛んできたのであった⋯⋯。

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