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不思議な穴の中
何だか奇妙な感覚だ⋯⋯。
リノと魔法のほうきに乗って、ものすごいスピードで急降下した時に似た感じの浮遊感があるのに、周りに見えているキラキラとした渦は、残像を残しながらゆっくりと動いている。つまり未だ俺たちの乗ったジェットコースターは、この時間と空間に違和感を感じる穴から抜け出してはいないのだ。
どうやら幼い頃に体験したゴリオの同じ移動魔法のようだが、リノの瞬間移動魔法のようにはいかないらしい。
それに⋯⋯何だか妙に静かだ⋯⋯。
何しろ空間に音が響いていない。感覚が迷っている。気を抜くとまるで夢の奥深くへと誘われるかのように現実味が薄らいでいく。
そんな中、唯一、手を繋いでいるリノの手の温もりのおかげで、俺は今ここが現実だと認識出来ている。
その刹那、突然感覚が変わった。
まるで音に餓える耳の穴に、我先にと足を生やした音の亡者共が飛び込んできたかのようだ。溢れる音を皮切りに次々と現実の感覚が戻ってくる。眩しい。青空が見える。甘い匂い。爽快な気分。穴を抜けた!!
いや、待て。まだ浮遊感がある。なぜだ?⋯⋯ん? もしかして俺たち落ちてる?
俺は気づいたのだ。俺たちが今居るその場所は、雲が手に届くほど近い雲のそばの空中だということを⋯⋯。




