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俺はゆっくりと目を開けた⋯⋯。

辺りがぼんやりとした柔らかな光に包まれている。


突然目の前に冒険者の服を着ている一人の若い男性が現れた。


(ん?⋯⋯俺か?)


その若い男性はまるで鏡の中に映る俺のようであった。だがどこか違う⋯⋯。


さらに、その男性の周りに三人の女性と二人の男性が現れた。皆ぼんやりとしていて顔はハッキリしない。


急にその女性の中の一人が俺に似た男性の前に進み出たかと思うと、すぐにその場に崩れ落ち男性の足元で泣き出した。


俺に似た男性の表情が曇る。

俺はその瞬間その表情を最近見たような気がした⋯⋯。


(王様⋯⋯あれはモナルヒス王だ⋯⋯)






突然俺は体を強く揺さぶられた。

俺は自分が目を閉じていることに気づき、目を開けた。


「ルキ、朝よ、起きて!」


リノの美しく可愛い顔が逆さまになってる。柔らかな枕が気持ちいい。いや枕じゃない⋯⋯膝枕だ。


「ここは天国か⋯⋯」


リノの声色が変わった。


「は? 何寝ぼけてんの、目を覚ましてあげる」


リノの逆さまの顔が近づく。長く美しい髪が俺の顔をくすぐり、良い匂いが、まるで天から舞い降りる小さな天使たちのように押し寄せてくる。


(ああ、そうか、キスだ⋯⋯あのリノの柔らかで魅力的な唇が今から俺の唇に⋯⋯)


俺はあと少しで得られる甘いキスに心を躍らせた。


だがリノの唇があと数センチまで迫ったその時咳払いが聞こえた。


「おほんっ!」


咳払いが聞こえた方を見るともふもふ犬ライラプスだった。


「わっ! ラ、ライラプス、どうした?」

「何ですかな、その慌てようは、朝ごはんですぞ!」

「べ、別に何でもない」

「ならば良いのですが、リノ様とそのように朝っぱらからイチャイチャされておるのであれば、今いる七段目から一段目のベッドに移動していただき、八段目のリノ様のベッドから離れていただきますぞ!」


(何だよ、ライラプス、しっかり見てんじゃん)


俺はそう思いつつ素直に返事をした。


「分かってるって⋯⋯」






俺はリノと一緒に絵の中の八段ベッドから下りると馬車の中に出た。馬車は止まっている。


すぐに俺のそばにもふもふ猫タバサがやってきた。

「おはようございますルキ様⋯⋯あら、ルキ様、何かありました? ご機嫌がお悪いように見えましてよ」

「ああ、そうなんだよ、ライラプスがさ⋯⋯い、いや、まぁ、それは置いといて」


(タバサに話すとややこしくなるからな)


「なんですの?」

「いや、何でもない」

「気になりますわ、もしやリノ様の事ではございませんこと? それならお二人の愛の使者であるわたくしにお話いただければ⋯⋯」


(いや、それは遠慮しとく。とも言えないか。まぁ、ここは、ごまかしとこう)


「いや、実はライラプスは関係なくて、俺の夢の話なんだけどさ」

「ええ⋯⋯」






俺が先程見た夢をもふもふ猫タバサに話すとタバサは一瞬俺から視線を外したあとすぐに視線を合わせてきた。


「ルキ様の夢の中のことなので、定かではないのですけれど、若いモナルヒス王様が冒険者の服をお召しになられていたということは⋯⋯」

「ああ、思い当たることがあるなら言ってくれ」

「昔、モナルヒス王様はママや仲間たちと一緒に冒険者ギルドでパーティを組んで各地を旅してたと聞いたことがありますわ」

「えっ、それは知らなかった! その仲間たちって一体誰なんだ?」

「さぁ⋯⋯そこまでは聞いてないですわ」

「そうか⋯⋯若い頃って今からどのくらい前?」

わたくしが生まれる前で、ママがまだ水の魔法使い時代のことですから、25年程前だと思いますわ」

「水の魔法使い時代?⋯⋯前から気になってたけど、なんでアイルーリスは今は水の魔女なんだ?」

「あっ! ルキ様、そのご質問はくれぐれもママにしてはダメですの。もし下手に誤解されると殺されかねませんことよ⋯⋯オホホホホホ」

「どういうことだよ、気になるだろ、教えろよ」

「絶対秘密は守ってもらえますの?」

「ああ、絶対秘密は守る」

「実は、私のパパは予知の悪魔、キャットベレトなんですの⋯⋯つまり悪魔と交わった魔法使いは魔女になると言うことですの」

「えっ!? タバサのパパは悪魔?」

「そうですの」


(そうか⋯⋯だからアイルーリスは予言も出来るようになったのかな?)


「それで、そのタバサのパパは今どこにいるんだよ、レイモーン王国に住んでるのか?」

「いえ、今はママと別れて、一人で魔界に住んでますわ」

「なるほど⋯⋯それはアイルーリスに聞いたらヤバそうだな」

「そうですの、いくらルキ様といえども命の保証はございませんことよ、オホホホホ」

「あ、ああ、分かった、タバサのパパのことは胸にしまっておくよ」


(でも俺の見た夢の中にアイルーリスのような獣人はいなかったな⋯⋯まぁ、ただの夢だよな)


そう思った時、開いた馬車の扉の外から漂ってきた良い匂いが、俺の体を優しく包み込んだのであった⋯⋯。

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