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ドワーフ村

たしかにドワーフ村はドワーフの鍛冶屋ボルトスの言う通りそこにあった。

道の先はT字路になっており、つ高台になっていた為、手前からはドワーフ村が見えなかったのだ。


俺は切り立った山から手前にぐるりと崖に囲まれている広い場所を見下ろした。


レイモーン王国の神官長であり俺の側近である上級悪魔サヤンの言った通り正面の切り立った山の下には大きな洞窟が口を開けている。


( あそこからゴブリンが出て来るのだろうか⋯⋯)


俺がそう思っていると自分の馬に乗ったもふもふ熊クレオンが近寄ってきた。


「ルキ様、あれがサヤン様の言っておられたゴブリンが出て来る洞窟でしょうか」

「ああ、俺も今それを考えてた」


俺はもふもふ熊クレオンにそう言いながら、ゆっくりと左右を見た。


T字路の左の道の先にはドワーフ村へ下りる為に左の崖に沿って緩やかにカーブしている下り坂がある。

T字路の右の道は、右の崖の上を切り立った山の山肌まで弧を描くように続いており、そこには小さな洞窟が見えた。

またその小さな洞窟の前には兵士らしき者の姿も動いていた。


俺はミニチュアホースに跨っているドワーフのボルトスにリノと乗っているキラの馬で近寄った。


「右の道の先はどこへ続いてるんだ? 兵士がいるようだけど」

「ああ、あの先は火の国クラティラス王国へ続いているよ⋯⋯でも今は封鎖中だぜ」

「そうか⋯⋯」

「じゃあ、おさの所に案内するぞ」

「ああ、頼む」


俺たちはドワーフのボルトスを先頭にT字路の左の道を進んだ。

緩やかな坂を右にカーブしながらしばらく下っていくと村の入り口らしき巨大な石門の前にドワーフの兵士が一人いた。

幸いドワーフのボルトスのおかげで難なく石門を抜けると俺は一番の疑問をボルトスにぶつけた。


「なぁ、村と言っても村人はいないし住居らしきものもないんだけど」

「村人? ああ、もうみんな夕暮れが近いから家に帰ったのかもな」

「だからその家ってどこだよ」

「あそこだよ」


ドワーフのボルトスはそう言うと右腕を上げ、まっすぐ前に向かって指をさした。


そこには巨大なモニュメントのような巨大な像が八体立っていた。


「巨大な像があるけど、あれが家なのか?」

「違う、その向こうだ」


巨大な像の向こうには崖の下に岩壁を削って造られた神殿のようなものが見える。

ドワーフのボルトスは続けて言った。


「あの中に居住区があるんだ」

「崖の中に?」

「ああ、そうだ。ドワーフ族は地下に住んでんだよ、敵からも身を守りやすいからな」

「そうなんだ」

「あんた、ほんとドワーフ族のこと何も知らないんだな」


俺はそう言われてレイモーン王国の王太子として少し恥ずかしさを覚えた。

俺はレイモーン王国の王太子でありながら、まだここレイモーン王国最北端の鉱山地帯にあるレイモーン王国諸侯が治めていない唯一の自治領であるドワーフ村には一度も訪れたことはなかったしドワーフ族の事も知ろうとはしていなかったからである。


(自治領だからといってレイモーン王国に属する領土に住む者たちなのに⋯⋯俺はなんて世間知らずなんだ⋯⋯)


俺がドワーフのボルトスのその言葉に意気消沈しているとは露知らずボルトスは俺をかすように言葉を発した。


「じゃあ、とっとと行くぞ」

「ああ⋯⋯あっ、待って、あの左の建物は何なんだ?」


この広い場所にある唯一の建物が気になった俺はミニチュアホースで行きかけたボルトスに声をかけたが振り返ったボルトスは明らかに機嫌が悪そうに見えた。


「あれは鉱物加工工場だ! いいからとっとと行くぞ!」

「あ、ああ」


少し行くと高台の上からは正面に見えていた大きな洞窟が今は左側に見えているのだが、その大きな洞窟からは線路が二本出ていて鉱物加工工場の中へと繋がっていた。

俺は気になってボルトスの背後から再び質問した。


「あっ、あの二本の線路は⋯⋯」


俺が言い終わらないうちにボルトスの荒げた声が聞こえた。


「トロッコだ!! もう質問は終わりだ!!」

「トロッコか⋯⋯悪い、もう質問はしないよ」


ちょっと傷ついた俺がリノの肩に顎を乗せため息をついているとタバサの馬が近寄ってきてキラが喋りかけてきた。


「ルキちゃん、私があのドワーフやっちゃおうか?」

「いや、ダメだろ、マブダチをやっちゃ⋯⋯でもありがとうキラ」


その時、馬が水路にかかる橋を渡り始めた。

俺は水路の左側を見た。

水路は鉱物加工工場から出ていた。

俺は水路の右側を見た。

水路の先には池があり、さらにその池からは右側のほとんどの部分を占めている広い畑と、家畜の柵らしき場所へと水路が分岐して向かっていた。


程なくして俺たちはこの広い場所のほぼ中央に位置する八体のモニュメントのような巨大な像の横までやって来た。


そのモニュメントのような巨大な八体の像とは、真ん中に両手を広げた人族のような女性の巨像があり、その周りを七体のドワーフの巨像が囲んでいるものだった。


(ん? なんかあの女性の巨像って王宮にある俺の先祖の銅像に似てるな⋯⋯)


俺が巨像の方を見ながら、そんなことを考えていると突然俺の両腕の中にいるリノが振り返った。


「ルキ、ちょっと、あれ見てよ!」


俺はリノの言葉に巨像から視線を切ってリノの可愛すぎる顔を見⋯⋯


「えっ! デカッ!!!!」


ドドドドドドドド⋯⋯。


リノの可愛すぎる顔の前方、俺とリノが乗っているキラの馬の首の前方五メートル付近を体高三メートルはあろうかという、まるまると太った巨大なニワトリが右から左へ、ものすごいスピードで横切っていったのだ。


俺が巨大なニワトリを目で追っていると俺とリノが乗っているキラの馬の左斜め前方にいるミニチュアホースに跨っているドワーフのボルトスが振り返り俺を見た。


「メガニワトリの、ぴーちゃんだ!」

「えっ? ぴーちゃん?」


俺が巨大なニワトリから視線を切りドワーフのボルトスを見るとボルトスはニヤリと笑った。


「あんた、どうせまたオラに質問する気なんだろうから先に答えてやったんだよ」


俺がそのボルトスの嫌味に返事をしかけた時もふもふ猫タバサの興奮したような声が聞こえた。


「お、お、おいしそうですこと!!」


その声に俺がもふもふ猫タバサの方を向いた時には、もうすでにタバサはもふもふうさぎキラを自分の馬から下ろしメガニワトリのぴーちゃんを追いかけていた。


すぐにドワーフのボルトスの慌てた声がした。


「ちょっと待て! ぴーちゃんを食べるんじゃねぇー!!」


ドワーフのボルトスはそう言うともふもふ猫タバサを追いかけていった。


「ぴょーんぴょん、ぴょんぴょんぴょーん」


突然もふもふうさぎキラの声が右側から聞こえた。

見るとキラが右側へ向かってジャンプしていた。


「おい、キラどこ行くんだよ!」

「ニンジンの匂いするから畑に行くんだよ~!」

「勝手に食っちゃダメなんだぞー!」

「見るだけだよ~!」

「嘘つけ!!」


俺が畑の方へジャンプしながら向かっているキラを見送っていると背後からゴーレムのレムレムの声が聞こえてきた。


「ご主人様、洞窟から石の良い匂いする。食べに行ってもいい?」

「ちょ、ちょっと待てよ、みんな勝手な行動すんなって」


その時もふもふ犬ライラプスの馬が早足で近寄ってきた。


「ルキ様!」

「何だよ、ライラプスも何か食べたいのかよ! 骨なら持ってないぞ!」

「いえ、骨なら持っておりますので」

「持ってんのかよ!」

「はい、それより、ルキ様のその落ち着きよう、もしや、こっそりオヤツを食べてお腹いっぱいなのではないですかな?」

「食ってねーよ!!」


リノがすかさず振り向いた。


「ルキ! あれほど言っといたのに、こっそりオヤツを食べたのね! ひどい!」

「だから、食べてないっていってるじゃん!!」


すると急にリノは冷静になり言った。


「うふふ、冗談よ。そうよね、みんなお腹減ってるわよね」

「はいリノ、お仕置決定ー!!」


俺はそう言うとリノを両手で後ろからギューッと抱きしめ吸血鬼のごとくリノの首筋を甘噛みした。


「は? ちょっとルキ、くすぐったい!!」


当然のごとく速攻もふもふ犬ライラプスが近寄ってきた。


「ルキ様、イチャイチャが過ぎますぞ!!!!」

「分かったよ⋯⋯クレオン、タバサとキラを捕まえてきてくれ」

「分かりました」

「じゃあ、私、毛玉馬車からおやつを出すわね」


リノがそう言って魔法の杖を振ると、たちまちたくさんのおやつが目の前に現れた。


俺はもふもふ熊クレオンの方を見た。

もふもふ猫タバサはすぐに捕まえたようだが、もふもふうさぎキラはまだ逃げ回っている。


突然リノが叫んだ。


「みんなー! おやつよー!!!!」

「はーい」


もふもふうさぎキラが気持ちの良い返事と共に、あっという間にもふもふ熊クレオンより早くリノのそばにやって来た。




かくしてドタバタは収まったのだった⋯⋯。




今みんなは美味しそうにおやつを食べている。

ドワーフのボルトスも俺たちのおやつが珍しいのか黙々と食べている。


ああ、ゴーレムのレムレムだけは石にシュークリームの中身だけをたっぷりと乗せて食べている。

どうやら俺たちが食べる物の中で固形物以外は食べても大丈夫らしい。


リノが急に振り返った。


「ルキ、巨像を背に馬を移動させてくれる?」

「えっ? ああ、分かった」


俺が巨像を背に馬を移動させるとリノは魔道具カーメラを取りだし左手に持って腕を伸ばし魔道具カーメラの中央にキラキラと輝く円錐形の光水晶をこちらに向けた。


「じゃあ、時を切り取るわよ」

「えっ、だって、そのまま押したらぼやけるだろ?」

「大丈夫、自律能力魔法かけてるから⋯⋯はい、ニャンニャン!」


カシャッ!


ウィーン⋯⋯。


リノが魔道具カーメラの上部から、せり上がってきた小さな写実絵画を手に取った。


「ねぇ、見て⋯⋯おやつ食べてるルキ、可愛いから」

「そう? リノもめっちゃ可愛いよ」

「うふふ、ありがとう、後ろの巨像もいい感じね」

「ああ、そうだな、また思い出が一つ増えたな」

「ええ」


リノが顔を上げ、みんなの方を向いた。


「さぁ、みんなも時を切り取りましょうね!」

「「「「はーい!!!!」」」」


こうして俺たちは魔道具カーメラで、たくさん時を切り取ったあと、ドワーフのおさがいる居住区の入り口へと向かったのであった⋯⋯。

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