表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/63

ウホウホウホホッ

あれから10日が経った⋯⋯。


篠突く雨が横殴りに馬車を叩き、吹き荒ぶ風が空気を切り裂く中、相変わらず馬車は深い森を走っている。


突然、微かな稲光を窓の外に見た⋯⋯その寸時雷鳴が轟く。


草原の国レイモーン王国のプリンスにして上級戦士である俺はソファーから立ち上がった。

馬車の速度が遅いためか難なく窓まで歩いていく。


変わらない窓の外の景色を見ながら俺はため息をついた。


(まだ着かないのか⋯⋯)


このところの長雨で深い森の道を走る馬車の速度は確実に落ち到着予定より2日も遅れていたのだ。


俺は窓の外を見るのをやめ振り返った⋯⋯だが、そこで俺はもう一度ため息をついた。

なぜなら目の前のソファーに辺境伯令嬢リオーナが座り、手に持った袋の中に手を突っ込み魔物であるバナナスプリンガーを捕まえようとしていたからだ。

袋は飛び跳ねるバナナスプリンガーによってボコボコと動いている。

すぐにリオーナがバナナスプリンガーを捕まえ袋から取り出した。


(よく食べられるな、あれを⋯⋯)


俺はそう思いながら、その辺境伯令嬢リオーナの手から逃れようとしているバナナスプリンガーをまじまじと見た。

バナナを完全に剥いたような真っ赤な体にその名の通りバネのような足が付いている。

単独ではそれほど脅威ではないが、獲物を見つけると群れで一斉に甘い匂いを出して獲物を誘い出したあと取り囲んで次々と隙間なく獲物の全身に引っ付き血を吸う吸血バナナの魔物なのだ。


このバナナスプリンガーは、数日前に突然バナナスプリンガーの群れに遭遇した際、辺境伯令嬢リオーナにどうしても食べたいから捕まえてくれと嘆願されリオーナのために仕方なく捕獲したものだった。


辺境伯令嬢リオーナがバナナスプリンガーに頭からかぶりついた。


それを見て俺はソファーに戻り、森の国ダソス王国のプリンセスにして上級魔法使いであるリノの隣に座った。

その瞬間辺境伯令嬢リオーナのむしゃむしゃという嫌な音と共に大きな声が俺の耳に投げ込まれた。


「美味しい! ルキさんもおひとついかが?」


昼間は可憐な少女である辺境伯令嬢リオーナの口の周りが真っ赤に染まっている。


「いや、けっこうです!!」

「そうですか⋯⋯あっ、ルキさん知ってますか? このバナナスプリンガーは真っ赤ですけど普通のバナナって黄色なんですのよ」

「へぇー、そうなんですね⋯⋯って知ってますよ⋯⋯ていうかリオーナさんはリンゴしか食べないのかと思ったらバナナも好きなんですか?」

「もちろん偏食といえど私ゴリラですし⋯⋯あの、ルキさんってゴリラにどんなイメージを持たれてるんですの?」

「そうですね⋯⋯ゴリラはイカついイメージですね」

「ルキさん、ゴリラって可愛いんですのよ」

「へぇー」


その時、光が窓から差し込んできた。

どうやら雨が上がったようだ。


突然馬車が止まった。


(ん? 何かあったのか?)


俺がそう思っていると馬車の扉が開き雨合羽を着た御者のゴーレムのレムレムが入ってきた。


「ご主人様、森抜けた、どうする?」


辺境伯令嬢リオーナがその言葉に急いで窓のそばへ行き窓から顔を出すと、突然馬車の前方を見て叫んだ。


「皆さん、着きましたわよ! あれがクレモスの街ですわ!!」


俺たちも急いで窓から馬車の前方を見ると遠くに街が見えた。


ついに俺たちはクレモスの街に辿り着いたのであった⋯⋯。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ