『もふもふ騎士団』もふもふ猫のタバサともふもふうさぎのキラ
俺は、もふもふ熊の獣人クレオンと、もふもふ犬の獣人ライラプスを連れ冒険者ギルド屋内訓練所の2階部分から中庭へと続く2階部分に出ると屋外訓練所である1階のグラウンドを見た。
「氷立方体!!!!!!!!」
突然、魔法騎士、もふもふ猫の獣人タバサが叫んだ瞬間、たくさんの小さな氷がタバサの背後に現れ、それが一斉にダソス王国の美しきプリンセス、リノの元へ放たれた。
だがリノは魔法の杖を振り、一瞬で自らの足元に巨大な魔法円を作り出したかと思うと、次の瞬間にはその魔法円を覆うような半円形の透明なバリアが現れ、タバサが放った、たくさんの氷を全てガードしたのであった。
タバサは少し考え叫んだ。
「氷潜水艦!!!!!!!!」
するとタバサの足元に次々と潜水艦の形の氷が現れ、それらは次々に地面に潜っていった。
そして身構えているリノの足元からその潜水艦の形の氷が浮かび上がり次々とリノに襲いかかった。
リノはギリギリの所でそれらを交わしながら叫んだ。
「風刃!!!!!!!!」
すると、どこからともなく飛び出してきた無数の切れ味鋭い風のカッターにより潜水艦の形の氷は次々と切り刻まれ粉々になったのだった。
「雷矢!!!!!!!!」
リノはそれを見てすかさず叫びながらタバサに向かって魔法の杖を振り下ろした。
するとリノの頭上に現れた雷雲から無数の雷の矢がタバサに向かって一直線に襲いかかった。
「氷傘!!!!!!!!」
タバサが叫ぶとタバサの手には氷で出来た傘が現れ無数の雷の矢を防御しようとしたが、雷の矢が氷の傘に当たった瞬間、氷の傘は粉々に砕け散りタバサの手は痺れたように震えた。
タバサは諦めたようにリノに言った。
「参りましたわ、リノ様⋯⋯やはり私のような水と氷の魔法を得意とする者では、リノ様のように雷と風の魔法を得意とする者にはかないませんわ⋯⋯私お強いリノ様が本当に好きですのよ⋯⋯ああ、今からでもリノ様にお仕えしたいくらいですわ」
その時、突然タバサの後方にいたキラが、リノとタバサに駆け寄ってきた。
「タバサちゃん、リノちゃんって、すごいね! 私もリノちゃんにお仕えしようかな!」
手を叩きながら、リノとタバサの横で喜んでいるキラは、もふもふ猫タバサの弟子で魔法騎士見習のもふもふうさぎの獣人である。
俺は、その様子を見ながらクレオンとライラプスを連れ屋外訓練所2階部分突き当たりまで来ると、そこから1階のグラウンドへ続く階段をゆっくりと下りていった。
「ちょっと、タバサ! キラ! 今、聞き捨てならないこと言ってたよな! 勝手に主君変えんじゃないぞ」
するともふもふうさぎの獣人キラが俺たちに気づき叫んだ。
「あっ、ルキちゃんだ! え~、だって、リノちゃん、すごいんだよー!!!!」
「へー、そうなんだー、それはキラちゃん良かったでちゅねー⋯⋯じゃ、ねーよ! あのな、キラ、そもそも騎士っていうのはだな⋯⋯」
すると急に俺の隣にいたライラプスが、そのもふもふの顔で俺を睨んだ。
「ルキ様!!!!!!!!」
「えっ? ああ、ライラプス、分かってるって⋯⋯王子らしく振る舞えって言うんだろ」
「よく、お分かりで」
「⋯⋯ったく、もふもふワンコめ⋯⋯」
「何か言われましたかな」
「い、いや、何も⋯⋯」
すると、その気まずい空気を察したかのようにリノが歩いてきた。
「それで、ルキ、どうしたの? ルキも屋内訓練所で訓練してたんでしょ?」
「ああ、そうだけど、これから朝メシ一緒にどうかなと思って」
「うん、いいけど⋯⋯でもその前にちょっとシャワー浴びてきてもいい?」
「えっ、シャシャシャ、シャワー? リノが? 裸で?」
「は? あたりまえでしょ! まさかルキってシャワーを知らないの? いい? シャワーって言うのはね、服を着てたら浴びれないものなのよ」
「知ってるよ、そんなことは!!!!」
「じゃあ、何よ」
「何でもない」
その時、突然もふもふ猫タバサが、リノに抱きついた。
「私リノ様とシャワー浴びたいですわ!」
すかさず、もふもふうさぎキラも言った。
「じゃあ、私もリノちゃんと、シャワー浴びる~」
するともふもふ熊のクレオンが恥ずかしそうにリノに近づいた。
「では、わたくしも⋯⋯」
俺はその途端、この世の誰よりも速い反応でクレオンの両肩を持つと激しく揺らしてやった。
「いやいや、クレオンはリノとシャワー浴びちゃダメだろー!!!!!!!!」
それを見たリノはクスクス笑っている。
「じゃあ私たちは女性用のシャワー室でシャワー浴びてくるから、ルキもシャワー浴びてきなさいよ」
「いや、俺はいいよ」
「えっ、なんで? 訓練で汗かいたでしょ? ねぇ、ルキ⋯⋯私がシャワー浴びるの手伝ってあげましょうか?」
「は? い、いや、そ、そ、そんな⋯⋯どうしよう⋯⋯じゃなくて⋯⋯手伝わなくていいよ」
すると、もふもふ犬ライラプスが、呆れたように俺を見た。
「ルキ様、我々も男性用のシャワー室へ行きますぞ」
「だから、いいって!」
「さあ、行きますぞ、ルキ様」
ライラプスはクレオンにそっと目配せをした。
「俺は行かない!」
だが突然、駄々をこねる俺の意思は完全に無視され、俺の左腕はクレオンにガッチリと持たれ、俺の右腕はライラプスにしっかりと持たれた。
そしてそのままクレオンとライラプスは俺の進行方向とは逆向きに歩き出したため、俺は後ろ向きのまま、グラウンドを引きずられるようにリノから離れていった。
俺は呆気にとられているリノに向かって慌てて叫んだ。
「じゃ、じゃあリノ!! シャワー終わったら、通りの向かいにあるカフェに集合だからな~!!!!!!!!」
「ええ、分かったわ、ルキ~!!!!!!!!」
そんなこんなで観念した俺は、そのままクレオンとライラプスによってシャワー室に無理やり連れ込まれたのであった⋯⋯。