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旅立ち

子供たちの甲高い声が聞こえる──。俺はその小さな公園に立ち入った。


「あっ、いた!」


ゴーレムのレムレムは冒険者ギルドの前の通りを少し南に行ったところにあるツリーハウスが立ち並んでいる一角の中にある小さな公園にいた。

子供たちに囲まれているレムレムのそばにはレムレムの背より高く積んである石があった。


その時突然レムレムの足元にいた一人の子供がレムレムの肩までよじ登りレムレムの頭を持ちながら高く積んである石の上に、さらに石を積んだ。

周りの子供たちが騒ぎ立て、はしゃいでいる。

どうやら、石を高く積み上げる遊びをしているようだ。


俺はレムレムの背後から近寄った。


「えっ?」


確かに今の今まで俺の目の前にはレムレムと子供たちしかいなかったはずなのに、今俺の目の前にはレムレムの背後から俺の方をジッと見ている者がいた。


赤いとんがり帽子に、顔全体を覆う黒いペストマスクをし、赤いローブを着て右手には黒い長杖を持っている。黒い長杖の先には大きな赤い宝石のような石が輝いていた。


その黒いペストマスクをした者は突然左手を懐に入れた。俺は反射的に歩みを止めた。


バサバサバサ⋯⋯。


黒いペストマスクをした者が懐から左手を出すと、その左手の先には白いハトがとまっていた。


次の瞬間、黒いペストマスクをした者の周りに次々と子供たちが集まった。黒いペストマスクをした者は右手の黒い長杖を前に放るとたちまちその黒い長杖はテーブルになった。黒いペストマスクをした者は両手で次々と白いハトを出す。子供たちの歓声が一段と大きくなった。


俺はその光景をよそ目にレムレムの肩を叩き声をかけた。


「レムレム!」


レムレムは振り返る。


「あっ、ご主人様⋯⋯」

「どうしてこんな所にいるんだ? どうしてこうなった?」

「レムレム散歩してた⋯⋯子供につつかれた。迷子だった。連れてった。怖がられた」

「だろうな⋯⋯」

「レムレムイジけた。イジけて石積んだ。みんな寄ってきた」

「へぇー、そうなんだ⋯⋯って、どんだけ石積んでんだよ、イジけすぎだよ。大丈夫だよレムレム、いい事したな。レムレムは優しいんだな、ほら、さあ行くぞ」


黒いペストマスクをした者のマジックに夢中になっている子供たちの後ろを通り小さな公園を出た俺とレムレムは、程なくして馬車の前に戻ってきた。


馬車の前方には苦々しい顔をして馬に乗っている冒険者ギルドの監視人ドロフォノスがいる。

俺はドロフォノスに準備が整ったことを告げレムレムが御者台に上ったのを確認して馬車に乗り込んだ。


「出発だ!」


そのドロフォノスの大声と共に俺たちの馬車はアグロス辺境伯領を目指し冒険者ギルドを後にしたのだった⋯⋯。



冒険者ギルドの前の通りを北にしばらく行くと簡素な古びた木の門を抜けた。 どうやら、王都を出たようだ。


俺は右の窓を開け窓の外に顔を出した。

途端に風が舞い込む⋯⋯。


窓からは緩やかな川が見え川の両岸には遠くまで見渡せる広い草地が広がっている。


「ルキ、最高の景色でしょ?」


そう言いながらリノが俺の真横に来て窓の外に顔を出した。リノの体が俺の体にピッタリと引っ付く。俺はリノを見た。


「ああ、最高だ」

「この川はフィリア湖から王都の北側まで流れてきたあと、そこから王都の西側にかけて半円を描くように流れていくのよ」


リノはそう言って微笑んだ。

リノの美しい長い髪が風でなびいている。

なびく髪を押さえて微笑むリノはまるで女神のように美しかった。


ガタンッ!


突然馬車が揺れたので窓から下を見ると手すりのない丸太を組み合わせただけの橋の上を馬車は走っていた。

ガタガタと揺れる馬車。馬車の車輪は丸太をギシギシと軋ませている。


橋を渡り切ると馬車の前方の道は大きく右に曲がっていた。そして広い草地の中にあるその道の先には明らかに深い森が佇んでいたのだった⋯⋯。

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