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『もふもふ騎士団』もふもふ熊のクレオンともふもふ犬のライラプス

俺は宿屋から程近い場所にある冒険者ギルドの受付にいる受付嬢を見た──。


「あっ、ルキさん、おはようございます。また今日も皆さんで朝の訓練ですか?」


「おはようございます。そうなんです。とにかくライラプスがうるさくて」


「えっ、ライラプス?」


「ああ、すいません。こちらの話です⋯⋯それで屋内訓練所と屋外訓練所のどちらが空いてますか?」


「はい、今朝はどちらも空いてます」


「そうですか。では六名で使用しますので、お願いします」


「承知しました。あっ! ルキさん、あの、差し出がましいことで恐縮なのですが、我がギルドで冒険者登録しませんか? そうすると冒険者登録カード⋯⋯つまり冒険者の身分証明書を発行させていただきますので、それを受け取られたあと皆さんでパーティを組まれた場合、パーティレベル1からの仕事の依頼を受けられるようになるのですけれど」


「そうなんですね⋯⋯ちょっと待っててもらえますか?」


俺は振り向きリノともふもふたちと相談することにした。


「どうする? 冒険者登録してパーティ組んどく?」


俺の言葉にもふもふ犬のライラプスがサッと近寄ってきて俺の耳元で囁いた。


「ルキ様、冒険者の身分証明書があれば何かと都合がいいように思われますが⋯⋯」


「そうだな⋯⋯って、ちけーよ! そして何で小声!!!!」


「いえ、極秘事項トップシークレットかと思いまして⋯⋯」


「いや、小声だと逆に怪しいから。堂々としていようよ、堂々と」


その時俺は左からものすごい圧力を感じ左を見るとリノが睨んでいた⋯⋯。


「ルキこそ、大声出さないでよ。注目浴びて恥ずかしいでしょ! とにかく、まずはみんなの意見を聞きなさいよ」


「う、うん⋯⋯分かったよ」






誰の反対もなかったので全員一致で冒険者登録をしパーティを組むことになった。

俺は全員の顔を真剣な顔で見回した。


「それでパーティの名前なんだけど⋯⋯」


突然もふもふうさぎのキラが叫んだ。


「ルキちゃん、私『もふもふ騎士団』って名前がいいなー!!!!」


「は? 俺もふもふじゃねーし! 却下だ! てかリノの話聞いてた? 大声出したらダメなんだぞ!」


俺は再びものすごい圧力を左から感じた。


「ちょっとルキ! キラに対してそんな言い方はないでしょ。あくまで意見なんだし」


「じゃあ、リノはもふもふなのかよ!」


パチンッ!


「痛っ!」


ビンタされた──。


「私、もふもふじゃないわよ! どつくわよ!」


「はぁーー!? もうどついてんじゃん!」


「は? 何? 逆ギレ? 私にケンカ売ってんの?」


「えっ? い、いや⋯⋯リノにケンカなんて売るわけないじゃん⋯⋯まぁ、落ち着けって」


「は? ルキがそれ言うかなー?」


その時、受付嬢が恐る恐る話しかけてきた。


「あ、あのー、もう少し、お静かに⋯⋯」


リノは慌てて答えた。


「あっ、すいません! 全員冒険者登録お願いします。パーティ名は⋯⋯えーっと、もふもふ騎士団で」


俺はすかさずリノに耳打ちした。


「もふもふ騎士団でいいのかよ」


リノも俺に耳打ちしてきた。


「まぁ、キラがそうしたいって言ってるんだからいいんじゃないの」


「リノ、キレてんのかよ」


「キレてないわよ」


リノと小声で話していると受付嬢は俺たちに書類を差し出した。


「では、この書類にご記入して頂けますか?」






冒険者ギルドの受付嬢は俺たちが書いた書類と各々が持つ資格の証明書を持って受付横の階段から2階へ上がっていった。

2階のギルドマスターに冒険者登録証を発行してもらうためだ。

登録料は一人銀貨一枚だったので、俺が全員分の登録料銀貨六枚を払った。

ちなみにもふもふ騎士団団長はもふもふ熊のクレオンに決まった。

もちろんもふもふだからだ。


騎士のもふもふたちは当然騎士の資格を取得済みなので騎士登録をした。


俺は戦士登録をした。

なぜなら俺は、幼い頃から草原の国レイモーン王国の戦士長『ストラティゴス』に剣の先生として剣を学び、剣は俺が唯一、得意なものだったからだ。

その後、上級戦士の資格も取得している。


リノは魔法使い登録をした。

なぜならリノは王女だが、ダソス王国王立魔法大学に進学し、卒業後は上級魔法使いの資格を取得していたからだ。


受付嬢によると、すぐに冒険者登録証は出来上がるらしいので待つことにした。


しばらくすると受付嬢は階段を降りてきた。


「こちらが冒険者登録証になります」


俺は受け取った冒険者登録証を見た。

冒険者登録証には、パーティ名もふもふ騎士団パーティレベル1とあった。

パーティレベルの最高値はレベル100らしい⋯⋯


「では、もし、あちらの依頼板に貼ってある依頼票の中からクエストレベル1と書かれた依頼を受けたい場合は、その依頼票を剥がして受付まで持ってきてください」


俺たちはその他にも受付嬢から二、三注意事項を聞いた後、訓練所に向かったのだった⋯⋯。



「どりゃー!!!!」


俺の前から今の今消えたと思った、そのもふもふの巨体は次の瞬間には俺の頭上にいた⋯⋯。


ガキィーン!!!!!!!!


そのもふもふの巨体から真っ直ぐにふりおろされた剣⋯⋯いやいやいや、違う!違う! その尋常じゃない見た目⋯⋯たしかモーニングスターって言ったか、いやオシャレな名前だな!


しかし訳すと鎖付きスパイク鉄球という物騒な巨大なトゲの付いた鉄の玉の武器である。


(これ、このトゲ⋯⋯刺さったら痛いだろうな、いや痛いなんてもんじゃないな、おそらく頭吹っ飛ぶな⋯⋯でも、受け止めた俺って、けっこうすごくね?)


俺はその鎖付きスパイク鉄球を何とか自分の剣で受け止めたあと心の中でそう自画自賛してるとそのもふもふの巨体は息づかい荒く言い放った。


「まだまだまだー!!!!!!!!」


俺はもふもふの巨体の怪力に押され、その圧力でジリジリと土の地面を滑り後方に追いやられていく。


「ちょ、ちょっと待てよクレオン! 目が血走ってるぞ! これは訓練だろ? なぁ、手加減しろよ。ケガするだろ」


そう⋯⋯もちろん、もふもふの巨体の正体は、もふもふ熊のクレオンなのであった。


俺ともふもふ熊のクレオンは、屋内と屋外に2つある訓練所のうちのひとつ屋内訓練所で訓練をしている。


そして今、このミニコロッセオのような作りの屋内訓練所には、朝の光が差し込んではいるが、必ずしも明るいとは言えず、また夏から秋への季節の変わり目のせいか、少しひんやりした空気が漂っていた。


「ルキ様! 手加減などしていたら強くはなれませんぞ!!!!」


「えっ? いいよ、強くなれなくても⋯⋯ていうかクレオン、絶対俺を殺す気で来てたよな。俺はさ、ちょこっと、朝飯前に上級騎士パラディンであるクレオンと楽しく手合わせしたかっただけなのに。何だよその武器は!!!! 騎士の武器とは思えんシロモノだな!」


「はぁ、たしかに、そうですね。まぁ、騎士らしくはないですが、敵の金属の鎧も楽に貫通しますので」


「いや、今、さらっと恐ろしいこと言っちゃったよ。ちょっとクレオン、騎士道の3つの教え言ってみろよ」


「はぁ、主君への忠誠、名誉と礼節、貴婦人への愛です」


「だろ? 今のクレオンは俺に対して忠誠と礼節がなかったよな! その辺のことをさ⋯⋯」


その時突然、左の頭上から声がした。


「はいはいはい、ルキ様、もうそのくらいで。ルキ様こそ王子としての立ち振る舞いではありませんぞ!!!!」


俺が声のした方を見ると、そこにはミニコロッセオのような屋内訓練所の2階から、こちらを見下ろしながら手を叩いている、もふもふ犬のライラプスがいた。


「なんだよ、ライラプス、朝から説教かよ!」


「なんですか、ルキ様、その王子らしからぬ態度は! そんなことですと、私の飼い主⋯⋯いえ、私の上司であり、またルキ様の教育係でもあらせられる神官長サヤン様に言いつけますぞ!!!!」


「は? なんだよ、今度は脅しかよ⋯⋯さすがサヤンの右腕、騎士聖職会の一員で神官であるライラプスだな!」


「ルキ様!!!!!!!!」


「はいはい、分かったよ、分かりましたよ⋯⋯クレオン悪かったな、朝メシおごるから許してくれ」


「えっ? ルキ様、本当ですか? でははちみつパンケーキ20枚重ねをお願いします!!!!」


「ああ、いいよ、20枚でも30枚でも⋯⋯100枚でもおごってやるよ」


「では100枚で」


「は? いや、冗談だよ、10枚にしとけよ」


「ルキ様!!!! 20枚は譲りませんぞ!!!!」


「分かった分かった⋯⋯」


俺は剣を鞘に収めるともふもふ犬のライラプスに聞いた。


「ライラプス、今リノはどこ? みんなで朝メシ食いに行こうぜ」


「ああ、リノ様なら中庭にある屋外訓練所で、まだタバサとキラと一緒に魔法の訓練をしていると思いますが」


「ああ、そう⋯⋯じゃあ、呼びに行くかな」


俺はもふもふ熊のクレオンの期待に満ちた視線を一身に浴びながらもふもふ熊のクレオン、もふもふ犬のライラプスと共にリノがいる中庭の屋外訓練所へと向かったのだった⋯⋯。


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