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もふもふの騎士たちと王子と王女

(ん? 何かもふもふする⋯⋯)


俺はその感触に目を開けた。


すると俺の目に飛び込んできたのは森の国ダソス王国の王都『プルーシオス』の街の宿屋の部屋にある俺のベッドの上に、四体のもふもふ獣人たちがベッド全体を占領する光景だった。


「あっ、ルキ様、目覚められましたか。おはようございます」


もふもふ獣人の中で1番デカいもふもふ熊のクレオンが俺を覗き込んだ途端、奥の部屋のドアが開きリノの声が聞こえた。


「ルキ、もうそろそろ起きた方がいいんじゃない?」


「えっ? ああ、今起きるとこだよ」


「だったら着替え手伝ってあげるから、ちょっと両手上げてみて」


リノは魔法の杖を取り出すと俺に向けて魔法の杖を振った。


「いいよ、恥ずかしいから」


だが俺の意思とは関係なく俺は自然と両手をあげると、どんどん服が脱がされていく。

ついには尻が出そうになった。


「お、おい、リノ、俺を真っ裸にする気かよ!」


「えっ? 別にいいじゃない、恥ずかしがらなくても。ルキの裸はもう見て知ってるから」


「はっ? それはまだお互い小さかった頃の話だろ!」


そう俺が言い終わった時には俺は見事に素っ裸になっていた。

ああ、言っとくが、もちろん大事なところは両手で隠している。

そしてそれと同時に飛んできた冒険者の服にあっという間に着替えさせられたのであった。


俺は、ひとつため息をついたあとベッドに座った。


「まあ、あれだ⋯⋯着替え手伝ってくれてありがとう。ちょっと、こっち来て座れよ」


「うん⋯⋯」


リノは俺の方に歩いてきて俺の隣に座ろうと⋯⋯座ろうと⋯⋯いや、何とか座ろうとしたが、もふもふ熊、もふもふ犬、もふもふ猫、もふもふうさぎの四体の獣人は俺のベッドを占領したまま動こうとしなかった。


「いや、もふもふたち! おまえたちがどかないとリノが座れないだろ!!!!」






「それはそうとルキ⋯⋯」


リノは何とかもふもふたちの間に割り込みながら俺に目を向けた。

森の国ダソス王国のプリンセスであるリノは俺を真っ直ぐに見ている。


「なんだよ」


「ギネカちゃんとはいつ会うのよ」


「そ⋯⋯それは⋯⋯」


ギネカとは俺の妹だ。

先日リノの兄であるダソス王国のイポティス王太子と盛大な結婚式が執り行われたばかりである。

ダソス王国はレイモーン王国と同盟国で王室同士も交流がありイポティス王太子ともリノとも俺とギネカは幼い頃から親交があった。

俺たち四人は昔から本当に仲が良かったのだ。


リノは俺の初恋だった⋯⋯。






「ルキ、何で黙ってるの?」


「い、いや、その⋯⋯勢いでダソス王国に来たのはいいけど急にどうやってギネカを守るべきか具体的に決めてなかったなーって思ってさ」


「は? 何よ今さら⋯⋯」


俺は本当に勢いだけでこのダソス王国に側近の騎士であるもふもふたちを引き連れやって来たのだった⋯⋯。


それは俺の溺愛する妹ギネカがイポティス王太子との結婚式の最中、ふとしたことでダソス王国と隣接する着物を着た悪名高き火の女王、バシリッサ女王が治めるクラティラス王国の侍軍団と国境での緊張が高まっていると聞き、急に妹ギネカが心配になり居てもたってもいられず、レイモーン王国へ帰るとすぐ自らの側近である外務大臣でソラハン商会の社長ソラハン、神官長で吟遊詩人のサヤン、魔界の悪魔カリン、はぐれ天使セリカルに相談したのだが、俺の教育係でもあるサヤンが、ダソス王国に留学するという形が良いのではということであれよあれよという間に俺は両親であるモナルヒス王とエギエネス王妃にダソス王国へ留学すると嘘をついて説き伏せダソス王国にやって来たのであった。


そして森の国ダソス王国へ来てからは仲の良いリノに訳を話し王都の西の森の中にあるリノの城、プリンセス・リノ・キャッスルに居候させてもらい世話になっていたのだ。

だが、ずっと世話になるわけにもいかず、俺はもふもふたちと街の宿屋に泊まることにしたのだった。


「さて⋯⋯どうするかな⋯⋯」


俺はため息をついた⋯⋯。

ギネカに会うため王宮やイポティス王太子の宮殿に赴いて留学という嘘がバレても困るのだ。

少しの間のあとリノがベッドから立ち上がり振り向いた。

どうやら呆れているようだ。


「ルキ、本当にこの宿屋でこのまま生活するつもりなの? あなたは仮にも草原の国レイモーン王国の王子なんだし、もう少し私の城に居てもいいのよ」


俺はその言葉にリノをじっと見つめた。

(ああ、リノ⋯⋯なんて可愛いんだろう⋯⋯)


「⋯⋯キ、ルキ! ちょっと聞いてるの? ずっと黙ってどうしたの?」


「えっ? ああ、ごめん⋯⋯まぁ、宿屋暮らしも悪くないから、もうしばらくここで生活するよ」


「そう⋯⋯」


リノはそのまま部屋の窓まで歩いていくと両手で窓を開けたのだった⋯⋯。

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