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第三期~硝子のように~

最近ネタが上手く思いつくようになって調子に乗ってまた更新しました。


楽しい!

さとり妖怪へと変貌を遂げた少女、醒邏は一つ一つ、着実に歩みを進めていく。自身の能力を誤って使ってしまわないように服のポケットに押し込みながらあたりを見回しつつ進むと活気のある街並みが彼女の視界に広がる。


少女にとって、その能力は恐怖でしかなかった。自分が今まで知り得ることのなかったことが当たり前のように流れ込んでくる。能力への強い恐怖もあったがそれよりも彼女を支配していた恐怖は『他者に明確に嫌悪を向けられること』だった。


恐怖に畏怖しながら恐る恐る、といった様子で歩みを進めていると後ろから、割れ物を扱うかのように優しく、肩を叩かれる。


「え、ええっと…なん…でしょう… か…?」


少女は恐怖のあまり後ろを振り返ることはできなかったが相手の方が前に回り込む。赤い一本角、白い服、透明感の強いスカートを履いた、とても大柄な一人の女性だった。


少女の脳裏には“鬼”、ただその一文字が浮かんでいた。


「あんた…新入りか?」


「あぁ…はい…緋星…醒邏と言います…」


「醒邏だな?私は星熊勇儀だ。よろしく。」


勇儀と名乗る鬼…その女性は醒邏に手を差し出す。


醒邏はその手にあわてて反応する。


しかし、その手を取ることなく、醒邏は動きを止める。


“見てしまった”、そう“見てしまった”のである。


この街の男たちの“心”を、“記憶”を、そして、“力比べ”を。


醒邏は、儚き心の少女は、見るも無惨にそのガラスの心を粉々に砕け散らせてしまった。


「…っあ…め…なさ…っ…」


「ん?どうしたんだ?」


少女は膝から崩れ落ちる。自らの身体を抱いて体を震わせ、視線の焦点を乱す。息は荒く、その眼からは大粒の涙を流している。頭を抱え、ひたすらに謝り続ける少女の姿がそこにあった。


「…勇儀、その子抑えておきな。」


「萃香…これは…」


「精神崩壊真っ只中、といった方がいいだろうね。キスメあたりならいけそうな気がするし、行ってくるよ。」


二つの角を持つ幼女のような鬼、伊吹萃香が霧のように消えていくのを見て勇儀は優しくガラスの心を粉々にして気を狂わせる少女を抱き寄せ、集まってきた野次馬の鬼たちを追い払う。


「ごめ…なさ…んで…ますから…っ…」


勇儀は抱き寄せたその少女が何か言葉を発していることは認識していたが、その言葉の仔細を聞けていなかったと思い、少女の言葉に耳を傾ける。


“ごめんなさい”“死んで償います”“許して”、そんな悲痛な言葉を吐き続ける少女をしかと抱きしめ、迂闊な行動ができないように拘束する。


しばらくすると勇儀のそばに一人の男が火の粉と共に現れる。


「ん、何があったんだ?やけに外の鬼たちが興味深そうにこっち見てるが。」


「あぁ…龍夜か…実はな…」


勇儀は目の前の龍夜、と呼んだスカジャンの男に事の経緯を語り、龍夜は真剣な表情でその話を自身の中で咀嚼する。


しばらく考え込んだ後にその赤い双眸を少女、醒邏に向け、口を開く。


「十中八九、外来人だな。さとりのお嬢に報告した方がいいんじゃねぇか?今の“地上”の情勢はあの人ならある程度共有をもらってるわけだし。何より“ソレ”、絶対に“サードアイ”、さとり妖怪のソレだろ。その精神崩壊状態もソレが何か噛んでると思った方が辻褄も合う。」


「そうか…龍夜もそう思うか…どちらにせよ落ち着かせないことにはどうにも…」


二人が考え込み、しばらく沈黙が続くと走っているような足音が聞こえる。


「ん、誰か呼んでたのか?」


「萃香がキスメをな。あの大穴から来てるんだったら何か知ってたりしてないかと思ってのことらしい。」


しばらくして勇儀たちの前に現れたのは話の通り、キスメと萃香だった。キスメは慌てた様子で醒邏の手を取ってしっかりと握り、優しく諭すように落ち着かせていった。


落ち着いた少女は、その日はキスメに抱きしめられ、鬼たちのいる旧都、と呼ばれる場所の一つの小屋にて一晩を明かすこととなった。

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