好き。嫌い。
先天性毛嚢異常。僕の弟の陽次は診断されました。最初は漢字も読めなくてお母さんには教えてもらって読めるようになりました。
この病気は体の毛がすごく早く成長するものだと聞きました。体中の毛が長く成長した陽次は動物のようでした。
でも僕は陽次が好きでよく遊んでいます。運動はできないからトランプとかカードゲームでよく遊びます。
でもやっぱり周りのみんなは、陽次の体を見て気持ち悪いと言ったり、人間じゃないと言ったりしてきます。
僕は悔しいです。僕じゃどうしようもなくて、陽次にもどうしようもないのに、笑われたり気持ち悪がられたりするのはすごく悔しいです。
でも、陽次は笑顔でいつも前向きです。僕はそんな陽次とこれからも一緒にいたいです。
3年2組 日野 月冴
教室からまばらな拍手が湧く。月冴は達成感を覚えた。クラスの代表でこの手の作文を読む、人権集会という小学校の行事で自分が選ばれたのだ。6組まである3年の全員の前で読んだのだ。小学生にとっては大きな経験となる。
他クラスの発表は、死んだおじいちゃんや愛犬の話。外国の貧困について小学生なりに触れた話などに対して、月冴は弟の障害についての話であり、少し異質なものであるのは違いないだろう。
「日野くん。ありがとうね。凄い感動した。」
仁奈先生の言葉にさらに日野は高揚した。クラスメイトの称賛もただ一人自分に向けられる。そして考える。そうだ、僕は良い作文を書いたんだ、と。
そして下校時間となる。家路を急いだ。何よりも早く家に帰って父親に知らせたかった。みんなの代表になったと。