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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者、お前とパーティ組むのもう無理だから

作者: 佐崎 一路

ふと寝ていて思いついたので、忘れないうちに書きましたw

10/8 日計ファンタジー第5位になりました。ありがとうございます!

10/9 日計ファンタジー第3位! ありがとうございます!!

10/11 日計ファンタジー第2位☆彡 本当にありがとうございます!

「勇者、お前と一緒にパーティ組むのもう無理だから、悪いけど今日限り出て行ってくれ」


 ブーズ・ゴブリンやチャージ・コボルトとそれを指揮するティプシー・ホブゴブリンなど、約50匹あまりの魔王軍(の下っ端)との戦いを終えて、それなりに高級な酒場で打ち上げをしていた勇者パーティ【ライジング・サン】のメンバーの一人で、〈聖騎士(ホーリーナイト)〉でもあるアーレント(25歳。イケメン)が宴もたけなわになった頃、前置きもなしにそう言い放った。


「はぁ!? 藪から棒に何を言い出すんだ?!」

 悪酔いしているのかと、唯一素面(シラフ)だった僕は、カッパカッパとビール→シャンパン→日本酒→ウイスキー→ブランデーとアルコール度数の高い酒にシフトチェンジを繰り返し、実質爆弾酒を飲んでるも同然なアーレントを、おつまみを食べながら問い返す。


 しかしアーレントは逆に不快そうな顔で、ちょこちょこツマミを食べている僕を指さし、座った目つきと口調で吐き捨てた。

「それだよ、それ! 仲間が気持ちよく乾杯して、楽しんでいる酒の席だっていうのに、ウコン汁で乾杯して、その後もひたすらチョコレートやピーナッツなんぞ、ポリポリ食べてるだけ! 白けるんだよ、場がな!!」

「んなこと言ってもしょうがないだろう、僕は酒が飲めない(下戸)んだから。つーか、体質的にアルコールは臭いだけでも悪酔いするから、酔い覚ましにウコンとアルコールの分解を助けてくれるチョコレートやピーナッツを食べないと……これでもかなり我慢して、せっかくの打ち上げだから参加してるんだけど」


 周囲に充満する酒の臭いで、すでに気分は最低だけど、仮にも勇者パーティ【ライジング・サン】のリーダーとして、仲間の慰労と親睦を図らないといけないと思って、死ぬ気で参加している僕の苦労も少しは察してくれ! と声を大にして言いたいところだけれど、言ったところで通じないのはわかっているので、無駄な徒労はせずに、せめてもの意趣返しとして盛大なため息をついた。


「だ~~か~~ら~~っ、なんだよ『下戸(げこ)』って。酒の飲めない人間がいるわけないだろう! 少なくとも俺は二十五年生きてきて“酒があまり強くない”って奴なら知っているが、“ぜんぜん飲めない。匂いを嗅いだだけで死ぬほどダメだ”なんて奴見たことも聞いたこともないし、そんなフザケタ体質があるわきゃねーだろう!! お前(おめー)はそうやって戦闘には参加せず、仲間を仲間と思っていない最低の野郎なんだっ。そんな奴に背中を預けたり、死線を共にできるか! だから抜けてもらう!! これは全員の総意で決定だっ!」


 ダン! とガラスのグラスを木製のテーブルに打ち付けるように置いて、アーレントは溜まり溜まった鬱憤を爆発させる。

 そんな馬鹿な話があるかと思ってパーティの仲間たちの顔を見回せば、聖女にして第十一王女(16歳。金髪美少女)であるフロリーナもリンゴ酒(シードル)片手にウンウン頷いて、

「勇者たちの壮行会の時に一人だけ国王陛下(お父様)の注ごうとした酒を断ったでしょう? あの時は周りの目もあったから、国王陛下(お父様)も極力我慢したけど――」

「いいや、近衛兵に羽交い絞めされて『(わし)の酒が飲めないというのか、ああん!?』と絡まれて、頭っから酒かけられて、腹パンされましたけど!! 二重の意味でダメージを受けて次の日の夕方まで、便所でエズいてましたよ!」

「壮行会が終わったあと随分と荒れていましたわよ。お陰で支度金も他の勇者パーティの半分以下……はあ」

 なんで王女で聖女の私がこんな町の酒場で飲まなきゃならないのよ、と言いたげな恨みつらみの籠った目で見られた。


 あれ? おかしいな~。普通、異世界から召喚された勇者って、聖女とか王女とかと恋仲になるまでがデフォじゃないのか? なんでゴミ虫とか、蛇蝎を見るような眼で睨まれなきゃならないんだ?


「同時に召喚された勇者のアレクセイ殿やセルゲイ殿、イザーク殿はこちらの人間同様に、毎日毎日仲間と肩を組んで酒を飲んで打ち解けているようですが?」

 宮廷魔術師だったテオドール(28歳、眼鏡)が、リキュールをたしなみつつ鼻で笑って、ボクの反論を真っ向から否定する。

「日本人にはいるんだよ、下戸って体質が!」

 この世界ではとにかく酒が多い。というか酒が溢れかえっている。


 植物のほとんどが生のままでも微細なアルコールを含んでいるし、それを食べている動物はさらに蓄積されてアルコールまみれだし、空からアルコールの雨が降ってきたり、海が全面的にニガリの効いた日本酒か焼酎もどきだった時にはマジで地獄へ来たのかと思ったほどである。


 もっとも同時に召喚された〈勇者〉アレクセイ(ベラルーシ出身)、セルゲイ(ロシア出身)、イザーク(ポルトガル出身)などは、

「「「酒はどこにでも無限にあるし、女はみんな美人で酔っ払ってるし、ここは天国だ!!」」」

 無茶苦茶テンション上がっていたが。

 ※ちなみに『世界各国のアルコール消費量ランキング』ベラルーシ(第1位)、ポルトガル(第6位)、ロシア(第12位)


 んでもってその酒に魔力があって、人間も魔物も魔族も酒を飲んで強化したり、魔法を使ったりしている。

 人間の場合は酔いが醒めると弱体化するので、いちいち酒を補充しなければならないが、魔物や魔族は体内に《酩酊石(めいていせき)》というものがあり、ここから酒が循環するので長時間メートルを上げることが可能らしい。

 あとどーでもいいけど、《酩酊石(めいていせき)》を酒に漬けておくと、純度に応じて美酒になる……とかなんとかで、冒険者ギルドでは率先して買取を行っている。


 ところが最近、異常気象などの影響で魔大陸の酒が枯渇するのに合わせて、魔王(焼酎大好き)が人間やエルフ、ドワーフなどが保持している酒を狙って侵略戦争を始めたらしい。

 劣勢に至った人類はなんやかんやで異世界から勇者を喚起と言う名目の拉致監禁をして、いまに至る……というわけであった。


 ちなみにアルコールを分解するウコンやピーナツ、チョコレートは毒物扱いで、魔物の酔い(ちから)を中和させるために普及している。


 ついでに言えば魔物にもランクがあって、体内に内包されているアルコールの濃度(魔力)によって、

★☆☆☆☆

Lv1 buzzedバズド:酒が回ってきた段階でまだ正常

Lv2 fuzzedファズド:かすかに酒に酔って心地良い状態


★★☆☆☆

Lv1 boozedブーズ:テンションが上がっている状態

Lv2 chargedチャージ:酒を充電しハイパーになった状態

Lv3 crunkクランク:酔っ払って大虎になっている状態

Lv4 juicedジュース:酔って高揚している状態

Lv5 lubricatedルブケディッド:ありきたりな酔っ払い

Lv6 snockeredスノッカード:自覚のある酔っ払い

Lv7 tipsyティプシー:ほろ酔い。フラフラしている


★★★☆☆

Lv1 bladderedブラダァー:クソ酔っ払って潰れる寸前

Lv2 blastedブラースティ:酔って理性が完全に吹っ飛んだ

Lv3 crockedクラクト:酔い過ぎてポンコツになった

Lv4 hammeredハンマー:ひとしきり喚いたちょっと後にうわの空になっているような人

Lv5 hoochedフーチ:コントロール不能の状態

Lv6 lashedラッシュ:ひどく酩酊になる

Lv7 liquoredリカー:強い酒でかなり酔った状態

Lv8 loadedロード:目に見えてかなり酔っ払っている

Lv9 plasteredプラスター:完全に酔っぱらった状態

Lv10 saucedソース:酔っ払って分別が付かなく

Lv11 stewedシチュー:酔っ払ってぐでんぐでんになった

Lv12 tankedタンク:限界を超えて酔っ払った状態


★★★★☆

Lv1 batteredバッター:完全に判断力を失い、まともに立てず言葉も支離滅裂

Lv2 boiledボイル:茹で上がったように真っ赤でクタクタになるほど酔い潰れた状態

Lv3 screwedスクリュー:酒に酔ってどうしようもないくらいめちゃめちゃになった

Lv4 sloshedスロッシュ:完全にノックアウトされた

Lv5 smashedスマッシュ:完全に酒に打ち負かされ見事に敗北した状態

Lv6 trashedトラッシュ:ゴミと化した酔っ払い

Lv7 wasteウエスト:どうしようもないゴミ

Lv8 wreckedレックド:屍と化した酔っ払い


★★★★★

Lv1 annihilatedアナィァレィテッド:完全に意識が飛び、揺すっても反応しない。全滅。完全破壊

Lv2 destroyedデストロイ:救急車を呼ぶレベル。破壊する。滅ぼす

Lv3 obliteratedオブリテゥティド:抹消する。跡形も無く消し去る。もう手遅れ。明日はない


 という感じで、基本的に魔王軍とは会話が成り立たないので、どうあってもお互いに酒飲んで殺り合わなければならない関係なのだ。


 ついでに補助魔法には、

litリット』=能力1.5倍に能力が上がる。その分酔っ払う。

tightタイト』=全能力が限界まで上がる。いい感じで酒に酔ってゾーンに入る。

 などという酔っ払うのと引き換えに強化する魔術があったり、前衛職は前衛職でこれまた酒飲んで強化するのだが、時間の経過で酔いが醒めないように、口に酒瓶を咥えて肛門にももう一本()して、常にアルコールを摂取できる訓練を積んでいるというイカレ具合!


 あと魔法といえば『スピリタス・ファイアー』という、死ぬほどアルコール度数の高い酒を飲んで放つ炎の一撃などが代表であり、治癒術も真っ先に患部に死ぬほど度数の高い酒をぶちまけて『浄化』してから施術するのが常識であったりする。

 で、当然のことながら僕には酒強化戦法も、魔法を使うことも、支援をしてもらうこともできなかった。


 てゆーか、魔物もまた常にベロンベロンの状態で襲って来るので、口から吐かれる酒臭い息だけでも酔っ払って、鍔迫り合いをした→次の瞬間、ゲロゲロと吐き出して戦線を離脱して草むらでリバースしっ放しになるため、三カ月たつけどいまだにレベルは一桁台だったりする。


 あとポーションの(たぐい)も、当然のようにアルコールでできてるし。

 そんなわけで『酒が飲めない』=空気が吸えない=生きていけるわけがない=『嘘をついている』という理屈で、ものの見事にハブられているのはわかっていたが、

「あたしは報酬が出れば何でもよかったんだけど、前の村でせっかく孤児院の子供が作ってくれたブランデーケーキを、目の前で吐き出して、その上、白目を剥いてひっくり返って気絶したフリをしたのは許せないわ。あれで完全に見限ったわ」(女盗賊・赤毛18歳)

「一緒に酒も飲めん奴の武器を揃えたり、整備してやる気にもなれんわ。酒が飲めぬ? 酒の神に対する冒涜だな。なおさら一緒におれんわ」(ドワーフ戦士・56歳)

 他の仲間からも出るわ出るわ……。不平不満のオンパレードだった。


「そんなに僕が嫌いなのか!?!」

 思わずそう逆切れ気味に詰めよれば、

「「「「「酒が飲めれば問題はない!」」」」」

 声を合わせた反論が数倍になって返ってきた。

「できないって言ってるだろう!」

 やろうと思っても体質的に無理なの!! 努力とかそういうもので克服できるもんじゃないの!!!

 そう必死に訴えかけた。説明した。情理を尽くした。アルハラの不条理さ、飲みニュケーションは飲める人間には楽しいかも知れないけど、飲めない人間にとっては時間の無駄でしかないこと……とつとつと説得した。

 酔っ払い共に。


 結果――。

「じゃあお互いに水に流すということで、改めて全員がかための杯を交わすということで手を打とう」

 アーレントがウンウン頷きながら、いかにも妥協しました……という爽やかな笑顔で、全員分の赤ワインが入ったグラスを用意させ、音頭を取ってワイングラスを持ち上げる。

「「「「了解」」」」

 自分たちも言い過ぎた。ここはお互いに矛を収めて、歩み寄ると言うか、譲歩と言うか、折り合いをつけましょう。という雰囲気に持っていかれたが――。


「だから――僕は一滴も酒は飲めないと言ってるだろう! なし崩しで飲ませて丸く収めようとするんじゃねーよ!!」

 全然理解してないな、こいつら!?


「「「「「だったら出ていけ!!」」」」」

 スン……と、一瞬で無表情になった全員の意見が一致した。

 ゴミを見る目だぁ!


 こうして僕は勇者なのに勇者パーティを追放され、残ったメンバーで引き続き魔王軍と戦うということで、国王の元へもその知らせは届いたが大して問題にもされずに、追認する形で了承されたという。なんて連中だ!!














【その後】


 僕はなるべく吞兵衛には関わらない形で、どうにかこの世界で冒険者として暮らしていこうと悪戦苦闘をしていた。


 一本で山脈のように超巨大な樹木を前にして、耳の長い美しい女性が憂い顔で僕に向かって頭を下げた。

「勇者様、このエルフの森を守る世界樹様が魔王軍の放った害獣によって立ち枯れの危機に陥ろうとしています。幸いにして魔王軍の魔物どもは世界樹様の結界に阻まれて近づくことはできないようですが、下等な蟲までは手が回らず……どうか勇者様のお力で――って、どうしました勇者様、涙と咳と鼻水でもの凄いお顔ですけど?」


「げほげほげほ……ずびーずずずずずっ、ハックションハックション……ハクションハクション……!! こ、世界樹(これ)ってもしかして、バカでかい杉? でもって花粉の量が半端ねい! 黄砂でももうちょっとマシだぞ、おい。あと“結界”って要するに花粉症で近寄れないだけで……げほげほっ、鼻水鼻水……ずび、ずびずび……げほげほ、ハックション!」


 思いっきり花粉症で顔面が死にかけている僕を、醒めた目で見ていたエルフの女王が合図を送ると、有名な『ミスリル』らしい銀色の鎧兜に武器を持った戦士らしいエルフが何人か、黄色い結界(花粉)の中から現れた。


「気のせいか、勇者様の反応が結界に触れた魔物に非常によく似ておられますね。もしかして勇者を(かた)る魔物では? 念のためにこちらに用意しました、結界の粉を吸っていただき、何ともなければ本物で、もしも顕著な反応が出れば――」

 さらに肩に担いだ段ボールほどの箱に入った花粉が運ばれてくる。

 そのままいつでも僕に向かって放り投げられそうな姿勢で準備完了をするエルフたち。


「えっ、いや、まて! 死ぬから! マジで死ぬから! アナフィラキシーショックで死ぬから!!」

「やりなさい」

 必死に止めようとする僕の悲鳴を無視して、エルフの女王の命令が放たれ、逃げようとしたところへ四方八方からスギ花粉の雪崩が襲い掛かり、

「ぎゃああああああああああああああああ………!?!?」

 我知らず断末魔の絶叫が放たれる、口から鼻から花粉が流れ込んでくるのだった。

※現在、代表作である『ブタクサ姫』の完結ブーストに向けて全力で取り組んでいる状況です。そのためこの作品のご感想に返信することが難しい状況です(いわゆるゾーンに入った状態で、他のことにリソースを分ける余裕がないため)、ご感想は真摯に読ませていただいています。本当に申し訳ございません。


なお、過去には日本からも転移者が勇者として喚起された例はあります。

「確か出身は土佐とか、薩摩とか、琉球とか言ってたけど、普通に呑んでたぞ」

「ピンポイントで普通じゃない地域ばかりから呼ぶなよ! 日本人のデフォがそれだと後から来る連中の負担も考えろ~~っ!!」


なお、日本人の4割は「飲めない族」で、アルコールを全く飲めないか、少量飲めてもゲロゲロに悪酔いする体質です。

アジア人は総じて半分近くが「飲めない族」。反対に白人と黒人は飲めない人間はほぼ0%。100%酒が飲めるので、酒飲んで顔が赤くなる現象を「アジアンショック」と言います。

ナーロッパが白人種だったらたぶん全員が酒飲めるだろうな。下戸とか信じられないだろうな~、と思いついて書いてみましたw

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