21
後日、わたしたちは召集を受けて剣術部のグラウンドにあつまっていた。
メンバーはラナやメーロル、スキンヘッドや黒髪の少女たち、そしてアリスなど。
つまり、剣術部の試験に合格したメンバーたちだ。
彼女たちは回復魔術師の甲斐もあってピンピンしている。
傷もなく完全復活だ。
回復魔術ってほんとチートだな……
もはや、腕の一本とか、足の一本とか、ともすれば首とか千切れても治せちゃうんじゃないだろうか。
「今から貴様たちの叙勲式を行う! 貴様らは晴れて、剣術部の一員となった。しかし! それは剣士になったことを意味するものではない!
貴様らは半人前、見習いの剣士だ。 しかし、曲がりなりにも剣士の卵、周囲から見れば特別な存在だ!その証として、この剣章を授けるものとする」
アベリア先輩が前に出て、取り巻きたちから紋様の入った小さいバッジのようなものを受け取った。
なるほど、あれが噂の剣の勲章か……
「まずはラナ・ミヤ・ルイス、前へ出ろ!」
「はい!」
ラナが呼ばれて前へ出る。
「貴様にこれを授ける。見習いの剣章だ」
「ありがとうございます! 師匠!」
ラナは片ひざをついて、それを受けとる。
満面の笑みだった。
よかったね! ラナ!
我が友よ!
剣士には剣位と呼ばれる称号があり、その称号ごとに階級を示す勲章が与えられる。
よく軍隊とかでお偉いさんが胸につけてるあれだ。
剣士はそれを身分証明として常に服につけておかなければいけないらしい。
今日はその授与式。
その勲章を贈与され、みんなは晴れて見習いの剣士(位なし剣士)としてデビューする。
れっきとした剣士である、級位剣士になるにはさらに何か実績が必要になるらしい。
しかし、見習いの剣士であっても、勲章をつけなければいけないのは同じみたいだ。
まあ、普通、勲章っていったら何か大きな実績を立てた人に送られるものだと思うんだけど……
「次、ムグラ・ガナ・ヘッド!」
「おうよ!」
「次はメーロル・リンラ・マリッジ!」
「は、はい!」
次にスキンヘッドが呼ばれ、その次にはメーロルが……その後も順番にメンバーたちが勲章を授かった。
わたしも含めて、総勢20名。
わたしを除いて19人が、今日をもって一斉にアベリア先輩の弟子となった。
19人って結構な数だ。
チャムソーさんたち、もとからいるアベリア先輩の弟子を加えるとかなりの大所帯。
そう考えると、先輩が弟子をあまり取りたくないと言っていた気持ちもわかんないでもない気もするよね……
「貴様らは今後、見習いとしてわたしの元で鍛練に励んでもらう!そこで己の強さを示し、認められることで晴れて剣士となることができる! 精進するように! そして、アリス!
貴様は霊熾院より特別にこれを預かっている!」
そして、先輩は懐から、みんなより一回り大きめの勲章を新たに取り出した。
なんだろ、みんなの勲章とは違う。
装飾も豪華なやつだ。
「アリス・ディアノス・アルカディエ! 貴様は今日を持って級位八級剣士となった。よってこの八級剣章を授けるものとする! 」
「え……」
アリスがあっけにとられている。
他のみんなもその発言をきいて、完全にかたまっていた。
級位八級剣士……つまり、それって……
「おいおい、まじかよ……い、いきなり剣士って……やばすぎるぜ! まじで!」
「そんなことあるの!? 聞いたことないんだけど!」
「アリス……わたしたちの世代では最強だってきいてたけど、いきなり剣士になっちゃうなんて思いもよらなかったわ!」
「さらにこれも授けよう。隣国ノースグリーアの名鍛冶士が打った真剣だ」
「え……あ……ありがとうございます」
アベリア先輩の発言を聞いて、みんなが血相を変えて騒ぎはじめる。
わたしも驚いた!
まさかアリスちゃんまで、いきなり剣士からスタートなんて!?
わたしとしては、仲間ができたみたいでちょっと嬉しい!
わたしだけ、剣士です。とかだと目立ってしようがないしね……
「あたしがもらってもいいのですか? いきなり剣士なんてきいたことありません」
「上からの命令だ。貴様は級位八級剣士の実力に値するとな」
スキンヘッドたちは、アリスが剣を授かる姿を見て、目を輝かせて騒ぎ立てている。
一方のアリスは嬉しく思いつつも、どこかふにおちない感じだ。
「ちぇ……ちやほやされちゃってさ。剣士に見合う実力がほんとうにあるとは思えないけどっ。ねえ、リリィもそう思うよね?」
「え……そ、そうかな」
ラナはアリスが剣士になったことが気にくわないみたいだ。
対抗意識みたいなものなのかな?
たしかにラナはアリスに二度も負けてるし、わからなくもない。
まあ、でも何はともあれ、これでよかった。
みんなの晴れ舞台を見届けることができて。
これでラナたちの問題はすべて解決だ。
「そして最後に、リーリアナ。前へ来てくれるか?」
「え……あ、わたし? ……はい」
ああ、そういえばわたしもなのか……
まあ、そりゃそうだ。
一応、剣術部の一員なのだから。
すでにミハニアからいろいろ聞かされてたから、わたしの分はもう終わったと勝手に思ってたけど、そういえば勲章もまだもらってないのだった。
みんなの間を早足で歩く。
背中に差した翠星の剣が鬱陶しく感じられて、ちょっと歩きづらい。
ミハニアからもらった翠星の剣……
剣士になると、必ず常に真剣を持ち歩くことが義務付けられる。
子供の体では腰に差すのは、少々大きいため背中に背負っている。
結構邪魔なんだよね……これ……
「すまん、リーリアナ。本来、剣章などは正式な場で、師匠であるミハニア様から受けとるものであるのだがな。あのお方はいろいろと忙しい。こんな場で私から渡すことを許してくれ」
「え……いえ、全然……! むしろそっちの方がいいっていうか……」
「ふ……では、リーリア・ナ・ルレット。貴殿にこれを贈与する。級位一級剣章! 貴殿はこれより級位一級剣士となる」
アベリア先輩から剣の勲章を受け取る。
アリスのもらったものより、一回りも二回りも大きい。
派手なレリーフが刻まれている。
すごい、豪華だなあ、これ……
でも、これ服につけながら人前を歩くの……なんか嫌だな
身に付けないといけないなら、足の下にでもつけておこうかしら……
「え……えっ……どういうこと……あの子も剣士って」
「一級っていったら、級位の最上位じゃ……それより上はもう冠位だよ……」
「ま、まさか信じられない……強いってのはわかっていたけど……」
「ベージュの悪魔……ほんとうに悪魔だわ……」
みんなが目と口を大きく開いてポカンとしている。
みんな得たいの知らないものでも見ているかのような反応だ。
アリスの時の反応から、何かしら驚かれるとは思っていたけど、わたしの時と全然反応違うくない?
もっと騒いでくれても……
「おい、貴様ら。リーリアナは級位一級の剣士となった。今後、リーリアナに話しかける際は私に話しかける時と同じように、礼節を持って接するように!」
「いっ……いや、そんなことしなくて、 ふ、普通にしてくれていいですから!」
みんなが石のように固まっている。
そんなにおかしいことなの?
今のわたしの状況って?
まさか、ラナやメーロルも……
「ラナ……メーロルちゃん……」
「リリィ……」
「リリィちゃん……」
ラナやメーロルも、他の人と同じように目を見開き、かたまっていた。
スキンヘッドや黒髪の少女たち……ともに先輩に挑んだメンバーもこっちを見ている。
みんな……
「す……すごいよ、リリィ! け、けんし! それも級位一級の剣士だなんてっ!!!」
「すごい! すごすぎる! リリィちゃん!最強だよ!」
目を輝かせたラナとメーロルが、飛ぶように走ってきて抱きついてくる。
まあ、そんなことだろうと思ってたよ。
二人が剣士って言葉を聞いて、静かにしておけるわけないよねー。
「ま、まあ、ベージュのやつならいきなり級位一級でも驚かねえな……なんせ、あれだけ強かったしな……」
「ふふ、そう言って驚いて腰抜かしてたじゃないの、あなた」
「フっ、嘘はよくないよ、きみ」
スキンヘッドはラナとは違って、おもいっきりビビってるけど。
でかい図体して意外と情けないやつだ……
「その後ろに差してるのって! もしかして剣!?」
「あ、うん、これね……ミハニアから貰って……あっ! ちがっ、ミハニアさんからいただいたやつで」
「えっ、ミハニアって、あのミハニアさん!」
「「ぇぇええええぇええ!!! あのミハニアさん!!?」」
みんなが今日一番の驚いた顔をする。
なんかやっぱりめんどくさいな……もう……
「ちょっと、見せてよ! その剣! 」
「うん……いいけど……」
「あのミハニアさんから貰った剣なんでしょ……! 一体どんな剣で……てぇっ、おもッ! なにっこれっ……持ち上げるのでせいいっぱいだよっ……!!」
「ちょっと貸して。うっ、ほんとに、おもッ……どういう剣なのかしら? これ……? こんなのでホントに戦えるの? そもそも、鞘からぬけないんだけど……」
「てか、どうやってあの大剣士ミハニア様から剣をもらったんだ? もしかして知り合いなのか!?」
「う、うん……まあ、そんな感じかな……」
まあ、けどいいか……
みんな楽しそうだし。
「おい、貴様ら! これにて解散だ! いつまでしゃべっていやがる! リーリアナもあまり他人に自分の剣をさわらせない方がいい。いざというとき、命取りになるぞ」
「アベリア師匠! ぼくもリリィみたいにミハニアさんから剣をもらいたいです! どうすればいいですか?」
「なに? 貴様ごときがミハニア様から剣をいただけるわけないだろ! 身の程をわきまえろ。リーリアナが剣を授かったのはリーリアナがミハニア様の弟子だからだ」
「ええええ!!? リリィってミハニアさんの弟子なの!!?」
「なにぃっ!!? ベージュのやつ、あの大剣士ミハニア様の弟子なのか!!?」
たとえ、わたしが話に入らなくても勝手に盛り上がっている。
ああ、このままいけばまた質問責めにされるなあ……これは……
さっさと離脱するか……この場から……
そもそもあの女の話はできればしたくないんだよ。
因縁の相手だから……
「あっ、リリィが逃げたよっ!」
「なっ、あいつ! 逃げやがった! 聞きたいことがあるのによお!」
「リリィちゃんを追いかけなきゃ!」
「あ、あの子、あんなに速く走って! よく、あのバカ重い剣を持ったまま走れるわね」
みんながわたしの後ろを追いかける。
はあ、剣術部に入るの嫌だなあ……なんて
最初はそう思ったけど、何だかこれはこれでわるくないかもしれない。
この世界にくる前、わたしの周りはいつも静かだったから。
周りが騒がしいのは少し新鮮で。
主人公と悪友たちがふざけあったり悪ノリして騒ぐするシーンを見て、こういうの憧れるな、なんてほんのちょっぴり思ったりして……
今の状況は全然似てないけど、騒がしいのも悪くない。
借金を還すまでの間、剣術部にいてあげよう。なんて思った。




