第2話「謎の赤い戦士」1
まさか本当に変身してしまうとは思いもしていなかった。
さっきまで着ていた服はどこへ消えたのやら、視線を落とし身体を見ると緋色のスーツを着用している。
まさに子供の頃に見ていた特撮ヒーローのような格好だ。
戸惑いながら美瑠は自らの身体を包むスーツを触り、視界を覆っているバイザーを触る
突然の状況を理解する間もなくアキラメの化身が突撃して来た。
拳が美瑠めがけて繰り出され、咄嗟に後方へジャンプをした、すると普段の身体能力では考えられないほどの飛距離で身体が飛び上がり、あまりの驚きで着地に失敗し不格好に尻餅をついてしまった。
「どうなってるの~!夢なら醒めてよ~!」
「夢なんかじゃないよ!キミが奴等を倒すんだ」
ビョウシンが美瑠に駆け寄る
「そんなぁ、私喧嘩とか全然したことないし、そもそも運動が苦手なんですけど~!」
「大丈夫だよ、さっきの回避行動で理解出来ただろう?キミの身体能力は大幅に強化されている!」
ビョウシンのその言葉に美瑠はハッとした。その場で軽くジャンプして感覚を確かめてみる。
「確かに普段とは比べ物にならないほど身体が軽い感じがする」
もしかすると今の自分ならやれるのでは?こうなればもうヤケクソでもなんでもやるしかない。美瑠はグッと脚に力をこめ重心を僅かに低くした、そして拳を握り相手へ飛びかかった。
このまま渾身のパンチをお見舞いしてやる!と勢いのまま拳を叩き込もうとした
その瞬間、先程の子供の姿が脳裏に過った
そうだ、この化け物にあの子が取り込まれているかもしれない。
慌てて攻撃を逸らそうと美瑠は顔面から地面に突っ込んだ
「ハハハハハハ!なんだこいつはぁ!アキラメの化身よ、やってしまえ!」
コーカイの指示を受けアキラメの化身が腕をふりあげた
着地のダメージを負っている美瑠はすぐには立ち上がれず、もうだめだと目を閉じた
その時、何者かが上空から飛来してきた
そして着地の勢いのまま剣を振り下ろしアキラメの化身を一刀両断した。
美瑠が恐る恐る目を開き見上げるとそこには自分と似たような格好をし、長い髪を風になびかせた赤い戦士がそこに立っていた。
「なんだぁ!?次から次へと!」
赤い戦士が次はお前だと言わんばかりに剣をコーカイへと向けた
「おもしろい!と言いたいどころだが今日の所は退散だぁ!ザセツ様に報告だぁ!」
そう叫ぶとコーカイは姿を消した。
「どういう事だ...変身パッドあと2つはここにある。ならキミは一体何者なんだ?」
ビョウシンが問い掛けるが赤い戦士は何も答えずその場から去っていった。
ビョウシンは彼女の行方を視線で追っていたが、美瑠の慌てふためく声が聞こえ、視線をそちらへ向けた。
「ああああああ、ねぇ、この子死んじゃったの?ねぇ、ねぇ!」
美瑠は男の子を抱き抱えパニックになっている。
ビョウシンが男の子の心臓へ耳をあてた
「大丈夫だ、生きている」
「よかったぁ...」
安心したと同時に美瑠の変身が解けた。
「ああああああああああ!!!!」
「な、なんだ、今度はどうしたんだ!?」
「こんなことしてる場合じゃないよ、バイトがあるんだった!」
「バ、バイト...?」
美瑠は男の子をベンチに寝かせて大急ぎで帰宅した。