第1話「変身!ワナビースカーレット」2
「おのれ...女王フリコ!!!」
フリコとの戦いで力をほとんど失い、自らの拠点へと撤退したザセツは実体を保つのもギリギリの状態になっていた。
「わが僕達よ、この世界の人間共から負のアキラメエネルギーを奪い再び私に力を与えるのだ」
ザセツは傷付いた自分を回復、強化するためのエネルギーを集めさせるために人間界へ自らの僕の素となる闇のエネルギーを放った
そのエネルギー達はごみ捨て場のゴミや、倉庫に眠る用具等に取り付き、姿を変えて再びザセツの元へ集まった
「偉大なるザセツ様、この度は我々にお力を与えてくださりありがとうございます。」
「1人足りなくねぇか?」
「まぁ後々こちらへ合流するでしょう。」
3人の僕が各々顔を見合わせる
「さぁ、さっそくアキラメエネルギーを集めてこい!」
ザセツが声を張り上げ僕達へと指示を出す
「うおおおおおおおおお!!!!俺におまかせを!!!」
雄叫びのような声をあげてコーカイは真っ先に単独で人間界へ向かった
「はぁ~掃除したってやる気なんて湧いてこないじゃんか~!!!」
翌日になっても美瑠はプロットに手をつけていなかった
結局掃除のあと、休憩がてらに起動したゲームにのめり込みその日を終えてしまったのだ。
「今日は昼からバイトだし作業進めるのはムリだなぁ~。あ~あ、なんかネタ無いかなぁ~」
美瑠は漫画のネタ探しと称してお菓子を買いに家を出た、近所のコンビニで買い物を終えるとそのまま公園へ入りベンチに腰掛けた。
(あぁそっか今日は日曜日だっけか)
公園で遊ぶ子供を見て曜日を認識する、フリーターのあるあるである。
「おう!まさと!」
背後から子供の大きな声が響き、美瑠は少しビクッとした
振り返ってみるとバットとグローブを持ったいかにもな野球少年が眼鏡の男の子に声をかけていた
「まさとも野球やろーぜ!」
「ご、ごめんね...今から塾なんだ」
「えー、またかよ~、じゃあ塾が終わった後は?」
「ごめん、その後はそろばんが...」
「まじかよ~、じゃあいいや。また明日学校でな~」
「う、うん」
眼鏡の少年は寂しそうに野球少年達と別れていった
(はぁ、なんてかわいそうなんだろう。でもキミの将来の為なんだよ、頑張れ少年)
勝手に会話を盗み聞きしていたたまれなくなった美瑠は、勝手に心の中で眼鏡の少年にエールを送る。
(ボクだって本当は野球したいのに...勉強なんかより野球選手になりたいのに...)
眼鏡の少年は足を止めて涙を堪え、うつむいた
「うおおおおおおおおお!!!!感じるぞ、アキラメエネルギーを感じるぞ!」
少年から発するアキラメエネルギーを察知したコーカイが少年の元へ急降下する
突如異様な姿の大男が目の前に現れた恐怖で眼鏡の少年は声も出せず足を震わせる
「お前のアキラメエネルギー、利用させてもらうぞ!!!!!」
コーカイが少年に手をかざすと少年はアキラメエネルギーにつつまれそして、怪人「アキラメの化身」へと姿を変えた
「さぁ、アキラメの化身よ!人間共を恐怖させてやれーい!!!」
アキラメの化身は唸り声をあげ公園へ突入してきた
その姿に気付いた子供達は泣き叫びながら逃げ惑う
そして騒ぎを感じた美瑠の視界にもその怪人の姿が飛び込んできた。
「え、え、え、え、え、ちょっと、な、なにあれ!?」
いかにも特撮に出てくるような姿の怪人に美瑠は何かの撮影が始まったのかとカメラを探す
「え、え、でもスタッフらしき人とか全然いないよね、なにこれ、どうなってんの?」
すると、どこからか微かな声が聞こえてきた
「ボクだって...みんなと野球したいのに」
「なに?空耳?」
美瑠は辺りを見回す
「習い事なんて行きたくないのに、野球の方が好きなのに...」
「この声...さっきの男の子?」
微かに聞こえてくるこの声の方には怪人がいる、もしかしてさっきの少年が何か事件に巻き込まれたのではと目を凝らす
「何をボーッとしてるんだ人間!はやく逃げて!」
今度は別の声が聞こえてきた
一体どこから聞こえるのかと辺りを見回す
「いいからはやく逃げて!」
「でも!多分あの化け物の所にあの男の子がいるんだよ!自分でもワケわかんない事言ってるって思うけど、でもきっとあの男の子が何かに巻き込まれてるんだよ!」
「恐らくキミの言っている通りだよ、でもここにいてもどうにもならないよ」
「そ、それでもなんとかしないと!苦しそうな声が聞こえるんだもん、なんとか助けてあげないと!」
アキラメの化身が美瑠に気が付き向かってくる
かっこいい事を言ったものの、身体がうごかない、逃げる事もできずじっと怪人を睨む。その目には恐怖で涙が浮かんでいる。
アキラメの化身が腕を振り上げたその時、足下から強い光が発生し、視界が真っ白になった
アキラメの化身も光で視界が奪われ目を手で覆っている
「こ、これは!アイテムが反応してる! まさかこの人が...?」
視界がはっきりし始めた時、うつむいたままの視界にはハクビシンのような生物が映り、美瑠は驚いて後退りした
「あの!今から言うことに何も聞かず、すぐにしたがってほしいんだけど!」
「し、喋ったぁ!?この声、さっきから話し掛けてきたのはあなた!?」
「その変身パッドを使って光の戦士に変身しほしいんだ!」
「はい?」
「今は何も聞かないで!はやく!」
少し小さめのタブレット端末のような物が美瑠はの元へスイスイとやってくる、とりあえずそれを受けとってみる。
「変身って、何をどうすればいいの!?」
「そのパッドの変身ボタンをタップして、とにかく気持ちを込めて変身って叫ぶんだ」
夢なら覚めてほしい、もう何が何だかさっぱりわからないけど、とりあえずこの状況を打破するために、ヤケクソで叫んだ
「変身!!!!」
すると瑠美の着ていた服はまさに特撮ヒーローそのものといえるようなスーツに変化し、頭部にはバイザーのついたメットが装着された。
その日、夢尾美瑠は真っ赤な正義のヒロインへと変身した。