第1話「変身!ワナビースカーレット」1
「くっ...これ以上は...!」
「そこをどけ!そして大時計の鍵を寄越せ!」
「それだけはなりません!」
女王フリコが決死の力でザセツの攻撃を受け止める
「ち、ち、長老!このままではフリコ様が!」
「う、うぬ、このままヤツと大時計を接触させる訳にはいかん!」
「きゃあああああああ!!!」
爆発と共にフリコが吹き飛ばされた。ビョウシンは慌ててフリコに駆け寄る
「フリコ様!」
「ビ、ビョウシン」
満身創痍のフリコの体から小さな光の球体が出現しビョウシンの目の前へ移動した
「それは大時計の鍵と大いなる光の力を授けるアイテムです。ビョウシン、今からアナタはそれらを持って人間界へ行き、この悪に立ち向かってくれる光の戦士を探しなさい」
「で、でもフリコ様」
「私達なら大丈夫です。なんとかこの場は凌ぎます。さぁはやく!」
ビョウシンの付近にワープホールが出現する
「させるかあああああ!!!」
「ビョウシン!はやく!」
フリコが再びザセツの攻撃を受け止め、ビョウシンを庇った
「う、う、うおおおおおおお!」
ビョウシンは光の球体を抱えワープホールに飛び込んだ、するとすぐにワープホールは消滅した
「ビョウシン、頼みましたよ...」
フリコの巨大な光のエネルギーがザセツを包み込んだ。
「さーて!今日も元気に実況していきますよ~!」
夢尾美瑠はベッドに横たわり、気が付けば動画サイトのゲーム実況動画をぼんやりと眺めていた。
たいして興味のあるゲームではないし、たいして面白いとも思わないが、何故だろう、ただぼんやりと動画を眺めて時間だけが浪費されてゆく。
机の上には、書きかけのプロット原稿と「尾野庄太郎賞応募受付開始!」と掲載されたページを見るためだけにいつまでも雑に置かれている数ヵ月前の週刊誌
その尾野庄太郎賞への締め切りまでもう1ヶ月も残っていない、それなのにいまだにプロットも仕上げずダラダラと寝転がっている始末。
本当はもうムリだということは心の中でわかっている。それでも認めたく無くて、一応、応募するつもりはありましたよという言い訳を自分にするための書きかけのプロットだ
「はぁ...なにしてんだろ私...」
動画を途中で閉じて、目を瞑る。
足音が聞こえ、部屋に近づいてくる。扉がノックされるとこちらの返答を待つ間もなく扉が開き母親の声が聞こえた
「まーたゴロゴロして、あんたいつ漫画描いてんのよ!」
「うるさいなー、ほっといてよ、休憩中なの」
「いつ覗いてもそればっかりじゃない」
「うるさいなー、もう子供じゃないんだから」
「子供みたいなもんでしょ!もう、そうやってダラダラするのが癖になっちゃったときはね、掃除よ掃除。あんたもうずっと年末にも大掃除してないでしょ?この際だから断捨離するくらいの勢いで部屋を整理しちゃいなさい!いいわね?」
美瑠は追い払う仕草をするかのように手を振る
母親は呆れたように部屋を出た
「私だってなんとかしなくちゃって思ってるよ...」
漫画家を志して高校卒業後に専門学校へ通い3年間漫画について学んだものの、いまだに漫画でお金を稼げた事はない、二度ほど努力賞のような小さな賞をとったことがあるくらいだ。
ネットにイラストを投稿もしているが、いいねが来るのはほとんどネットで繋がりのある人達からだ。
専門学校で同期だった友人の捨木は月刊誌で掲載順中間辺りの漫画を連載している。
後輩の森上は今注目のライトノベルのイラストを担当していてアニメ化も近いと噂されている。
それに比べて美瑠は何もなし得ないまま25歳の年を迎えていた。
「あーあ、掃除したくらいでやる気が湧いてくるならいくらでも掃除してやるのになぁ、そもそも掃除をするやる気が起きないんだよなぁ」
と言いつつ部屋を見渡す。
小さなため息と共に美瑠はベッドから出ると押し入れを開いた。
「仕方ない、ちょっとやってみるか」
押し入れの中にある昔使っていたオモチャ箱を開いてみる。
懐かしい人形やオモチャの中に落書き帳が埋もれていた。
「う~わ懐かしいなぁ、いつ頃のだっけこれ。かなり小さい時のだよなぁ」
中身を見てみると、色鉛筆で描かれた動物や女の子、戦隊ヒーローが描かれている
「あぁ、いかんいかん、こうやって片付けの手が止まってしまうんだ。」
美瑠はゴミ袋を用意し、落書き帳やオモチャを放り込んでいく
「こういうオモチャって意外と高値がついてたりするんだよなぁ」
部屋中のモノをチェックし終えたが結局捨てる事になったのはオモチャ箱の中身と溜まっていた週刊誌くらいだった
それでも一応部屋の整理が出来た事は少しながら進歩だ
ゴミ袋を結び、外のゴミ回収ボックスまで捨てに行った。