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エリオットの話(スパダリ♡)

騎士団長はいい加減に結婚したい⇒どうしてこうなったのだろう?

作者: ユミヨシ

エリオットシリーズに出て来るジオルド騎士団長のお話です。

ジオルド・テリース伯爵令息は、人生で一番の幸せの中にいた。

騎士団で7年間頑張って来た甲斐があった。


25歳で有能さが認められハリス王国の騎士団長に抜擢されたのだ。


黒髪碧眼で口髭を蓄えたジオルドはそれなりにハンサムな男である。


今まで、騎士団で真面目に働いて、まったく女性と縁が無かった。


騎士団長となったからには仕事も大変になるだろうが、それよりもジオルドは結婚したかった。


25歳になったのだ。いい加減に家庭を持ちたい。

テリース伯爵家は兄夫婦が継ぐだろう。

自分は次男で一代限りの騎士爵しか貰えないだろうが、それでもだ。

騎士団長の給与はとてもいい。妻になった女性にドレスを買ってあげられて、社交界でも大きな顔をさせてあげることが出来る。


ジオルドは両親と兄夫婦に頼んだ。


「今度の王宮の夜会に俺も出ようと思っています。ですから、母上、義姉上、さりげなく私が嫁を探していると広めておいてくれませんか。その日までにダンスを習得し、私は見目麗しい令嬢を見極め、結婚したいと思っています。」


男ジオルド、一大決心である。


母のテリース伯爵夫人は頷いて。


「やっと結婚する気になったのね。ジオルド。解ったわ。」


義姉のレリーヌも嬉しそうに、


「協力は惜しまないわ。いいお嫁さんが見つかるといいわね。」


女性陣の協力は得る事が出来た。


父のテリース伯爵も、


「お前ももう、25歳だ。確かに身を固めた方が良いだろう。夜会で見極めたいのか?」


「ええ。お見合いは私は嫌です。まずは令嬢の人となりを見て、それから身元を確認して、

結婚相手を見つけたいと思います。」


「解った。良い相手が見つかるといいな。」


兄であるロイドも、


「協力は惜しまんぞ。」


「有難う。兄さん。さぁ、そうと決まったらダンスの練習だ。未来は明るいぞ。」


まさか、あんな恐ろしい夜会になるとはジオルドも思いもしなかったのである。




母と義姉が広めておいたはずなので、ジオルドの事が気になる独身の令嬢が夜会には集まるはずだと、ジオルドはおしゃれをして張り切って夜会に出席した。


着飾った美しい令嬢達の視線を感じるのだが、何故か誰一人、ジオルドに近寄って来ない。


こういう時は男性から近寄って、ダンスの相手を申し込むべきか…


と思っていたら、金色のドレスを着た一人の見覚えのある令嬢が近寄ってきて、


「貴方、わたくしと結婚しなさい。」


命令口調で言ってきた令嬢の事をジオルドは知っていた。

噂と顔だけはである。


王立学園で学年が一つ下であった、イデランヌ・キルディアス公爵令嬢である。


キルディアス公爵と言えば、今やハリス王国の最も権力のある宰相を勤めており、

キルディアス公爵家はそれはもう、飛ぶ鳥を叩きのめすくらいの勢いのある公爵家であった。


その令嬢は気の強い令嬢として王立学園にいた時から有名で、彼女はこの国の王太子、ファルトの妃になりたかったようなのだが、ファルト王太子は婚約を結ぶのも嫌がっており、


「イデランヌと結婚する位なら、廃嫡して貰った方がマシだ。」


と言い切って、婚約を断られた過去を持つ。


当時、学園で有名な高位の男性と言えば、他にエリオット・イーストベルグ公爵令息がいたのだが、彼は嫌と言う程、素行が悪く、女性をとっかえひっかえしていたので、イデランヌは父であるキルディアス公爵に、エリオットと婚約してはどうかと勧められたが、


「エリオットと結婚する位なら、魔王の妃になった方がマシです。」


と言い切って、エリオットとの婚約を断った。


エリオットの方はイデランヌの事をどう思っていたかは定かではない。

イーストベルグ公爵家にその話が来る前に立ち消えになったからである。


当時のジオルドは目立たないテリース伯爵家の次男であった為に、イデランヌに目をつけられなかった。

多分、学園でジオルドがいた事すら、イデランヌは覚えてはいないだろう。

学年も違ったし、接点がまるで無かったのである。


そんな自分に対して、イデランヌは嫣然と微笑み、


「キルディアス公爵家の命令を断ったらどうなるか、お解りでしょうね?」


ジオルドは慌てて、


「私などではとてもとても、イデランヌ様のお相手は務まりません。ですから、他の方をお探しになった方がよろしいかと。」


「わたくしが、貴方を気に入ったと言っているのです。ジオルド。わたくしに恥をかかせる気?貴方を狙っている令嬢達には宣言しましたのよ。貴方はわたくしと結婚するのだから、手を出すなと。」


「それじゃ、皆が遠巻きにこちらを見ているのは…」


「そう、わたくしが宣言したからです。貴方はわたくしと結婚すると。」


あああああああっ…なんて事だ。


理想の女性を探そうと、根回ししておいた事が裏目に出るなどとは…


キルディアス公爵家と縁を結んだら、間違いなく婿として入る事になるだろう。


気の強い妻と、やり手で恐ろしい義父。


自分の人生は詰んだ…何で、騎士団長になるまで頑張ってしまったのか。今一歩下がって、近衛騎士辺りにしておけば、よかったのではないのか…


グルグルと後悔が頭に回って離れない。


イデランヌはジオルドの腕に手を回して、


「さぁ、皆に発表しましょう。貴方のご両親も喜んでいますわ。」


ふと視線を向けて見れば、キルディアス公爵の横で青い顔をしている父と母、そして兄夫婦が目に入った。


もう逃げられない…ジオルドは覚悟した。



婚約期間も無く、すぐにジオルドはイデランヌと結婚をし、(公爵家の手回しが早かった。ウエディングドレスも出来ていた。あっという間に教会で式を挙げた。)

ジオルドはキルディアス公爵家に婿として入る事となった。

ジオルドは結婚と同時にキルディアス公爵の爵位を継いだ。

しかし、騎士団長の仕事は今もしている。

義父は公爵を退いた後もしっかり宰相を勤めており、領地経営はイデランヌが今までもやっており、凄腕を振るって、領地は更に発展していっている。


そして、5年が経ってそんなジオルドも今や、一児の父である。

可愛い娘、5歳のリアーゼはこの恐ろしいキルディアス公爵家で、唯一の癒しだ。


ある日、ふと公爵家の一室の物置を見ていたら、凄い美しい剣を見つけてしまった。

触ろうとしても、バシっと弾かれて触れない。黄金色に輝いているその剣は何なのか?

以前、見かけた他国の勇者が持っている聖剣に雰囲気が似ているようだが。


イデランヌが入って来て、微笑んで、


「あら、懐かしい。聖剣じゃない。」


「え??何故、聖剣がここに?そもそも、勇者はこの国ではまだ見つかっていないはずだ。」


そう、勇者は国に一人、出現するものなのだが、ハリス王国では勇者が見つかったと言う報告がない。


しかし、何故か聖剣はここにある。


イデランヌはその剣を手に取って、


「ああ、やはり手にしっくり来るわ。聖剣って最高ね。」


ええええええええええっ???イデランヌが聖剣を手に取っている、って事はイデランヌは…???


イデランヌは聖剣を元ある台座に置いて、


「でも、ここに聖剣がある事は内緒にしてほしいわ。わたくし、剣を手に戦うなんて嫌ですもの。いいわね?ジオルド。」


「わ、解った…」




イデランヌを愛しているかだって?

勿論、愛しているとも…愛しい妻、可愛い娘、凄腕の義父。

最高ではないか…


ハハハハハハハ。


これは間違いなく、ジオルド・キルディアス騎士団長である俺の恋愛話だ。




「お父様、お母様。おじいちゃま。お茶しましょ。」


ああ、リアーゼは今日も可愛い。

マジでこの公爵家の俺の天使だ。



「さぁ、貴方、行きましょう。」


イデランヌに腕を組まれて、ジオルドはお茶を飲みに行く。


今日もキルディアス公爵家のなんてことはない平和な日が過ぎようとしていた。





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