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2.ちから、ちから、力とはパワァ!

力が欲しいか、ならばくれてやる!

(脱

 この世界、いや…この国における主教である十字聖教。

 その教えは神を信奉し、貞淑に、真面目に、そして品格を持って生きることが美徳とされている。


 だが、今の俺はその真逆の行いをせざるを得ない状況にあった。


『……エヴァよ、聞いているかエヴァよ。』


「何だよ、変態仮面?」


『……おまえな、それは盛大なブーメランだぞ、自分の格好を良く見てみるといい』


 ……煩い煩い、あー、煩いよ!

 そうだよ、ブーメランだよ!?

 でも悪いのは俺じゃないだろっ!!


 そう、今の俺は言い逃れようの無い変態そのものだった。

 フルフェイスの仮面、と言うか兜。

 そして他はマントに、両手足のアンクレットと、靴……それにブーメランパンツ一枚と言う有様だ。


「好き好んでこんな格好してねえよ!?」


『ふははは、歴代の守護者とまるで同じ反応で愉悦である! 白米が美味い!!』


 ぐうっ、この野郎…俺が自分の力を必要としてるからって好き放題言うかっ…てか米食う身体無いだろおまえ!


『ところで良いのかエヴァ、悪党が逃げるぞ?』


「ぐっ、わかってるわい!」


 思わず前世の自分の素が出る。

 普段の「僕」からは考えられない口調だ。


 この世界、ファンタジーらしく魔法もあればアビリティやスキルの概念もまた存在した。

 スキルとは、努力によっても身につく一種の蓄積した経験からくる能力の発現であり、アビリティとは生まれつき、もしくはなんらかのアーティファクトによってもたらされる恩恵による能力を指す。


「固有アビリティ、全属性ダメージカット発動、固有アビリティⅡ無属性ダメージカット発動ーー固有アビリティⅢ、身体能力超向上発動ーー!」


『承知ーー代償を確認、アビリティの発現を承認ーー発動……』


 その瞬間。

 高い高い針葉樹の頭頂部に何故か立っていた己の体が宙を舞う。


 そして、フルフェイスマスクの目の部分が赤く禍々しい輝きを、帯を引いて放っていた。

 さらには、涌き上がる力と万能感。

 そして同時にマスクの口腔部分がバカッ、と音を立てて開き…まるで獣が獲物へと噛みつく時のように開きーー


 吠えた。


「『ヴゥ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』」


 この時ばかりは俺と、変態仮面野郎の意識は重なり、まさに獣の如く敵を捕捉した。


 眼下に見えるのは、数十人の盗賊だ。

 昨今、町や村の物資輸送を狙っては奪い、殺し、と非道を繰り返す罪人たち。


 容赦などイラヌ。

 どんな目に遭うともそれは奴らの自業自得。


ソウ、好きニシテいい、ノダ!


 着地と同時に疾風のように四つ足で駆け抜けると、盗賊集団の真ん中へと突っ込み、盗賊の頭目と思しき男に体当たりをかます。


「ぐっ、な、なんだぁ!?」


 勢い良く転がった頭目の男が慌てながらなんとか立ち上がろうとした矢先。

 その手足は俺の両手足が封じていた。


「ヒッ! か、仮面……ぜ、全裸の仮面騎士…ま、まさかテメェ……今噂の……ギャッ!?」


「『全裸じゃねえ、間違えんなボケ……半裸だ馬鹿野郎!』」


 そう告げ、光眼が一層赤々とした凶光を放ち、マントが変質した。


「『過ちを犯し、尚且つ俺様を全裸などと破廉恥な姿と誤認した貴様には特上の罰を降す!!!』」


「えっ、は、へぇ!?」


 情けない声を上げる盗賊の頭目。

 次の瞬間には、マントが紐状に変化し、身体中を拘束していた。


「『絶・悶絶亀甲縛りアブソリュートタートルゥ!!!』」


 絡んだ紐は亀の甲羅模様に編み込まれ、頭目を完全に縛り上げる。

 絶妙な縛り加減は苦しくて仕方ない、けれど何故か火照った顔の頭目。


「アヒィ! 痛い、気持ちいい、痛い、気持ちいい、なんじゃ、こりゃあぁーー!?」


「『我が絶技に縛られて逝かぬ者はないーーさあ、心ゆくまで堪能して果てろ!』」


「「「おっ、お頭ぁーー!?」」」


 周りで奪った物を抱えたままフリーズしていたお仲間が今更助けようと動くが、遅い。


「『…此奴を縛るためにマントを脱いだ俺/我の身体は羽毛の如しーー捉えられるなどと思うなよ三下共ッ!!!』」


 殺到してきた盗賊団全員の周りを一瞬、微風が撫ぜた。


「えっ、あれ…奴は何処に…?」


「『俺様なら、今おまえ達のすぐ側だ』」


「「「えっ」」」


 同時に上がる素っ頓狂な間抜け声。

そして、次に聞こえるのは悲鳴だった。


「「「ぎゃああっ変態が増えたあーー!?」」」


 そう、今この瞬間に俺様は12人+本体に分身し、奴ら全員の背後をとっていた。


「おっ、おい後ろ、おまえらの後ろに……」


「馬鹿、おまえの後ろだろ、ってなんで他の奴らの後ろにも居るんだよ……ぎゃああ!?」


 などと叫ぶ奴らの背後から抱きしめるようにして拘束し、俺たちはそれぞれ技を仕掛ける。


 コブラツイスト、アルゼンチンバックブリーカー……etc etc。


「『罪には罰をーー咎ニハ断罪ヲ』」


 同時に輝く26の瞳。


「『|十二神座同時多発関節痛オリュンポスブレイカーァ!!!!!』」


 バキゴキボキバキボリゴキボリンッ!


 嫌に鈍い音、同時に感じる関節が外れ、骨が砕けた感触。


 実体を伴う12体の残像により、オリジナルを合わせれば最大13人までの敵に同時に技をかけられる絶技、十二神座同時多発関節痛ーーオリュンポスブレイカー。

 この変態仮面、獣の守護者オリオンを宿した神具の極固有アビリティ……脱ぐほどに神に等しい力を得ることができる能力。

獣の栄光(ビーストイズム)によって得られるさまざまなバフ…強化による身体能力あっての常識外れの力技である。


「ああ……なんで俺こんなことしてるんだ。」


 いや、わかってはいるんだ。

 正義を貫くには力がいる。


 貧乏を脱するためにもこうした人々を食い物にしてる輩は野放しにはできない。


 三年。

 鍛えに鍛えても身体はまだまだ出来上がってこない。

 前世ではわりと厳ついくらいに筋肉もあったんだけど今生の体はどうにも生白く、ひ弱感は否めない。


 ……それでもまあ、筋肉質にはなってきているが、ファンタジー世界の住人と渡り合うにはまだまだ足りない。


「うーん、まだまだ力不足、かな。」


 とりあえずこいつらを役人に突き出そう。

 そう決めた俺は再び力を解放しーー


「『どっせええ、い!!』」


 盗賊団一人一人を茂みに隠していた一輪車に積み上げるのだった。


書いてて楽しい回w

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