表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/63

第60話 魔素の拡散

「ようやくゴールか……?」


 何十層にも及ぶダンジョン。

 そこに閉じ込められた司は、1人攻略を目指して突き進んできた。

 もう何層目なのかもに分からず新しい階層に進むと、いつもと様子が違った。

 そのことから、何年ものダンジョン生活も終わりが来たのだと司は理解した。

 何度も死ぬ思いをして心折れそうになったが、諦めずにいて良かったと、心の底から思えた。


「……というか、何なんだ? この空間は……」


 ダンジョン核の側にある空間に、司は首を傾げる。

 まるで書斎のような場所で、明らかに人の手で作られた様子がうかがえる。

 こんなダンジョン奥地に誰が作ったのか分からないが、とんでもない人間がいるものだと、司は棚にある本に手を伸ばした。


「……っ!! これは……」


 司は表紙を見て驚く。

 何故なら、ほんの表紙には大和王国王族の紋章が描かれていたからだ。


「初代様……」


 王族の本に手をつけるなど恐れ多い。

 しかし、手に取った以上、中身が気になったため、司は本を開いた。

 少し読んでみると、これは本などではなく日記のようだ。

 しかも、初代国王が書いたのだと分かった。


「国ができる前なんて、大昔にできたダンジョンだったのか……」


 初代国王の日記には、このダンジョンのことが書かれていた。

 日記によると、このダンジョンは大和王国ができる前からあったそうだ。

 そして、その当時は魔物の蔓延る島だというのに、何故だかこのダンジョンの周囲は魔物が少なかったため、初代はこの側に村を造ることにしたそうだ。

 村ができ、発展し続け、国へと変わっていったのだが、このダンジョンを中心として発展させることにより成功したことから、何故だか核の破壊をする事は躊躇われた。

 ゲン担ぎで放置していると、更に周囲の魔素が減っていき、更に開拓が進んで言ったことから、余計にダンジョンの攻略をすることができなくなってしまったそうだ。


「……つまり、このダンジョン核にはそれだけの年月の魔素が溜まっているって事か……」


 大和王国は、建国して300年ほど経つことから、それだけの年月魔素を溜め込んでいるということになる。

 初代の時には小さなダンジョンだったとしても、そんな長期間放置すればたしかにこれだけの危険な魔物が蔓延るダンジョンになってもおかしくない。


「……もしかして、こいつを使えば……」


 そこで司はあることを思いついた。






「広がれ膨大な魔素たちよ!」


 あの時ダンジョンの奥で思いついたこと。

 それが、今、司がおこなったことだ。

 300年以上の年月溜め込んだ魔素。

 それを帝国の帝都にまき散らしてやることだ。


「っと!!」


 ダンジョン核を破壊し、上空に投げたことにより、大量の魔素が周囲へと広がり落ちてくる。

 その結果に司が満足していると、地上から強力な魔力弾が飛んできた。

 その攻撃を躱し、司とファウストは飛んできた方角に目を向ける。


「送故司!! 貴様何をした!?」


「……たしか将軍だったか?」


「えぇ、一番の筆力者という話です」


 魔法を飛ばして来た人間を見て、司はファウストに問いかける。

 攻撃をして来たのは、将軍グエルリーノだった。

 そのグエルリーノを見下ろしながら、ファウストは冷静に司へと返答した。


「何をしたかだと? この帝都に大量の魔素をまき散らしただけだ」


「なっ!! なんてことを……」


 何をしたかなど答えてやる義理などない。

 だが、帝国の奴らに絶望を与えるためには教えてやった方が良いと判断した司は、拡声魔法を使用して、グエルリーノの問いに答えを返してやった。

 その答えを聞いて、グエルリーノはその行為の意味をすぐに理解した。


「これでこの国には大量の魔物が出現する土地になる!」


 魔素は生物の体内に入ることにより魔力に変換され、魔法を使用する源となる。

 しかし、魔素が濃いと、人間にとって好ましくないことが起きる。

 作物が枯れ、水も濁る。

 更に、生物が魔素を取り込みすぎると、変異を起こして魔物へと変化してしまったり、魔素が集結して魔物が突如出現したりとなる場合がある。

 どれをとっても、人間にとっていいことなど一つもないことだ。

 上空の魔素魔素による暗闇は、帝都のみならずその周囲にまで広がっていっている。

 つまり、帝都だけで済まなくなっているということだ。


「大和王国が300年以上溜め込んだ魔素を解くと味わうがいい!」


「300年……だと?」


 司の言葉を聞いて、グエルリーノは言葉を失う。

 それだけの長い年月溜め込んだ魔素。

 だとすれば、どこまで魔素による悪影響が及ぶか分からない。

 場合によっては、帝国の全土へ及ぶかもしれない。

 そう考えると、グエルリーノのみならず、帝国兵たちも顔を青くすることしかなかった。


「ではさらばだ!」


「あっ! お、おい!」


 簡単に説明を終えた司は、もうこの場に用はないというかのようにこの場から去っていく。

 それを見て、グエルリーノは手を伸ばして呼び止めた。

 しかし、その声は司に届くことはなかった。


「これでお前ら帝国人は安住することはできない。せいぜい苦しめばいい」


 ファウストに抱えられてた状態で上空を移動しながら地上を眺めると、帝国兵たちが右往左往している。

 大和王国の国民に対し、好き勝手おこなってきたのだから、帝国はそれ相応の報いを受けるべきだ。

 その光景に、司は思わず笑みが浮かんできた。


「皇帝はどちらへ逃げるでしょう?」


「恐らく、タボクーラだろう」


「左様ですね……」


 帝国全土に広がるであろう魔素。

 そうなると、皇帝は帝国を捨てるしかなくなる。

 帝国を捨てて逃げる先は、北か南の国に攻め入るしかない。

 北の国は強敵スペリカ王国。

 攻め入るには相当な準備を要するため、そちらへ向かうことはないだろう。

 そうなると、グエルリーノが攻めていたというタボクーラ王国へ攻め込むことを選択するはずだ。

 司の推測に、ファウストも納得の頷きを返した。


「帝国の全てがタボクーラに向かって来る。それを止めるのが俺たちの仕事だ」


「はい。最後までお付き合いいたします」


 司の復讐は、あくまでも帝国に対してのみだ。

 周囲の国に被害が及ばないようにしなくてはならない。

 皇帝がタボクーラへ逃げ込むことを阻止するため、司はファウストと共にタボクーラへと向かうことを決定したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ