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第58話 帝国の行動

「どうなっているんだ!?」


「……も、申し訳ありません」


 煌びやかな玉座の間にて、エウプーラ帝国皇帝のミシェル・ディ・エウプーラが怒りを露わにして大声を上げる。

 その前には、ベニアミーノが片膝をついて首を垂れている。


「ベニアミーノ!」


「ハ、ハイッ!」


 ミシェルの声に、ベニアミーノは恐縮する。

 皇帝の恐ろしさを知っているがゆえの反応だ。


「お前は私にカルメーロは死んだと言っていたな?」


「……ハイ」


 司との戦闘から逃げ出したベニアミーノは、帰国するとすぐに皇帝へと報告に来た。

 その時、自分の都合の良いように報告した。

 カルメーロの隊が複合魔法の発射装置をぞんざいに管理したため、使用時に大爆発を起こし、自分の隊は撤退せざるを得なくなった。

 その爆発によって、カルメーロも死亡したということにしていた。

 そのことを皇帝が確認すると、ベニアミーノは小さい声で返答した。。


「その死んだはずのカルメーロが、船で北の地へと向かっていたという報告が上がっている。……これはどういうことだ?」


 ベニアミーノの報告を受けた皇帝は、ほぼ手に入れていた大和王国が手からすり抜けていくのを感じた。

 これ撫であの国を手に入れるためにどれだけの人・物・金を使用してきたと思っている。

 このまま諦めるなんてことはできない。

 そのため、皇帝はすぐさま兵を召集し、復興を遂げる前の大和王国へ攻め込ませるつもりでいた。

 それが、カルメーロの生存が確認され、北の地へと向かって行ったのが確認された。

 カルメーロが生きていることは数人の兵によって確認とれているが、死んだと言っているのはベニアミーノだけ。 

 どちらが嘘を言っているかは分かり切ったものだ。


「……どうやら、カルメーロが死んだというのは私の勘違いだったようです。爆発の規模から死んだと思ってしまいました」


 カルメーロを囮にして逃げたということは隠し、ベニアミーノはあくまでも死んだと判断して逃走したと押し通すことにしたようだ。

 ベニアミーノとしても、司に殺されていると思っていたため、カルメーロが生きていたことは予想外だった。


「……なるほど」


 ベニアミーノの発言に、ミシェルは頷きを返す。

 その表情は、決して納得している様子はない。

 言い分だけ聞いているといったところだ。


「どうやらカルメーロは、あの送故司と行動を共にしているという話だ」


 カルメーロの乗っていた船には、帝国にとって憎き存在となった送故司も同乗していた。

 敵であるはずの存在と行動を共にしているということは、カルメーロが寝返った可能性が高い。

 それが例え奴隷化されてのことであろうと、皇帝には関係ない。

 敵対するなら潰すだけだ。


「陛下! 私にカルメーロのもとへ真意の確認に行かせてください!」


 カルメーロが生きていたのは意外だが、敵対状態になったのは都合がいい。

 送故司を相手にするにしても、万全の対策を取れば対応できる。

 まとめて始末してしまえば、今後自分にとって汚点となる存在を消し去ることができる。

 そんな考えから、ベニアミーノは自分がカルメーロと接触することを皇帝へ求めた。


「……良いだろう。お前に任せよう」


「ありがたき幸せ」


 ベニアミーノの考えていることは透けて見える。

 恐らく真意を確認するつもりなんてないのだろう。

 しかし、それが分かっていても、ミシェルはベニアミーノを行かせることにした。

 カルメーロのことは気になるが、送故司を殺すことの方が重要だ。

 追い出されたと言われていても、再度大和王国を攻め込むときまた送故司が立ちはだかる可能性がある。

 死体からアンデッドの魔物を生み出すことができるなんて、ミシェルからすると自分が欲しいところだ。

 しかしそれが手にとなれば話は別。

 この機にベニアミーノが仕留めるのであれば、それはそれで良しといったところだ。


「行け!」


「ハッ! 失礼いたします」


 帝国北東は魔物の森が存在している。

 そこ以外から侵入してくる方法はないはずだ。

 待ち受けて対処させるために、ミシェルはベニアミーノを行かせることにした。

 それを受けたベニアミーノは、意を得たりと意気揚々玉座の間から退室をして行った。


「……失礼します」


「聞いていたか?」


「はい」


 ベニアミーノが去ってすぐ、玉座の間に1人の男が入ってくる。

 ミシェルが指示を出し、隣の部屋に待機させていたのだ。


「わざわざお前を呼び戻してしまったが、無駄になってしまったかもな? グエルリーノ……」


「お気になさらず。送故司を仕留めることができれば、誰であろうと問題ないことです」


「そうだな……」


 帝国将軍のなかでも、最も実力を有する存在のグエルリーノ。

 司を始末する指示は、本来彼に任せるつもりでいた。

 ミシェルにとって右腕の彼ならば、確実に司を仕留めてくれると信じていたからだ。

 ベニアミーノがどこまで真実を報告しているか分からないが、今回も退却するようなら将軍としての地位は確実になくなることは分かっているため、きっと死に物狂いで対処するはずだ。

 一応将軍になるだけの能力はあるのだから、今回は大丈夫だろう。

 グエルリーノの方が安心できる気もするが、やる気のあるベニアミーノの方が戦闘経験がある分、送故司に対処しやすいだろう。

 グエルリーノもミシェルと同じ考えらしく、素直にベニアミーノに任せることを受け入れた。


「私は、ベニアミーノが戻ってきたらすぐに大和王国に攻め込めるように、軍備と兵の召集に当たりたいと思います」


「あぁ、そうしてくれ」


 前回は大和王国という、いわばアウェイでの戦い。

 突発的な問題が起きた時、対処できないことがある。

 しかし、今回はホーム戦だ。

 問題が起きてもいくらでも対応できる。

 送故司の討伐もそうだが、王国を奪い返すことも考えなければならない。

 この大陸の覇者を目指す皇帝からすると、肥沃な地である大和王国は手に入れておきたい。

 あと少しで手に入るところまで来ていたのだし、これまでつぎ込んだ物を無駄にする訳にもいかない。

 本来ならすぐにでも乗り込みたいところだが、後顧の憂いとなる可能性のある送故司の討伐結果を待ってからにすべき。

 とりあえず準備だけ始めておくことにし、皇帝はグエルリーノに任せることにした。


「失礼します」


「あぁ」


 今後の指示を受けたグエルリーノは、早速行動を開始するべく、一礼して玉座の間から去る。

 その表情は、強者である司と戦えずに若干残念な思い潜ませていた。



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