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第43話 内部侵入

「チッ! ()切れか……」


 防壁を守るために使用していた奴隷たち。

 それが減って来たことに、ベニアミーノは舌打ちをして呟く。

 奴隷にした大和国民を人間爆弾として利用している上に、奴隷を弾と言っている時点で、人間として見ていない。

 分ってはいたことだが、帝国の者からするとそれが当たり前だと思っているようだ。


「仕方ない。魔法兵の準備をしろ」


「了解しました」


 奴隷がいなくなってしまっては、魔物たちによって防壁を突破されてしまう。

 そのため、人間爆弾の言い出しっぺであるカルメーロは、これまで温存していた兵を動かすことにした。


「お前たち! 出来る限り魔物を倒せ!」


「「「「「了解しました!!」」」」」


 奴隷兵は全て爆弾として使用し終わってしまい、代わりに帝国兵たちが防壁に列を作る。

 そして、ベニアミーノの指示により、魔法や弓などの遠距離攻撃で防壁へと迫るアンデッドや巨大蟻たちへ攻撃を開始した。

 これまでの奴隷たちとは違い訓練をしているためか、帝国兵たちの攻撃が蟻やアンデッドたち命中していった。


「それと、怪我はしても致命傷だけは避けろ! 死んだらスケルトンにされちまうぞ!」


「「「「「了解しました!!」」」」」


 戦うのが帝国兵に代わり、カルメーロは戦う上での注意点を兵たちに告げる。

 大怪我を負っても、死にさえしなければ敵の戦力が増えることはない。

 司が、死んだ帝国兵をスケルトンとして利用していることを理解しての注意点だ。

 それからしばらくの間、兵と魔物たちとの戦いが続いた。


「そろそろ限界だ。門は諦めて、中で奴らを迎え撃つぞ」


「あぁ」


 迫り来る魔物から防壁を守るのそろそろ限界だ。

 二重の防壁、バリスタ攻撃、奴隷爆弾。

 これらによって、ここまでかなりの魔物を減らすことに成功した。

 防壁を突破されても、こちらの兵数を考えれば倒せない数ではない。

 そのため、ベニアミーノとカルメーロは防壁内で迎え撃つことを決断した。






「ハァ……、ようやく中に入れるか……」


 防壁の上にいた兵たちが、段々と姿を消していく。

 どうやら、これ以上防壁へ侵攻してくる魔物たちを抑え込むことは不可能だと判断したようだ。

 それを見て、司はようやく中に入れるのだとため息を吐いた。


「しかし、だいぶ数が減らされてしまいましたね」


「あぁ……」


 防壁内に入れるのはいいが、ファウストの言うようにここまでの戦いで大量にいたアンデッドたちや巨大蟻がかなり減らされてしまった。

 中にどんな罠があるのか、それとどれほどの数の帝国兵が待ち受けているかも分からない。

 ファウストはそのことが気になっているのだろう。


「大丈夫だ。その分俺が動けばいい」


「……お待ちください」


 敵の対策によって、たしかに魔物の数は減らされてしまった。

 しかし、司はなんてことないようにファウストへ返答する。

 その言葉に、ファウストは待ったをかけた。

 いつもは司の言葉に素直に従うファウストだが、その考えをすんなり受け入れる訳にはいかなかった。


「何だ?」


「先に私を行かせてください!」


 止められたことを意外に思っている司に対し、ファウストは先に自分が戦うことの許可を求めた。

 司が前線へ出るということは、それだけ危険が増すということ。

 主を危険に晒すわけにはいかない。

 司が戦うにしても、先に自分が戦ったうえで敵の戦いを理解してからにしてもらいたい。

 それならば、危険も少しは和らぐというものだ。


「……分かった。任せる」


「ありがとうございます!」


 大和国民を爆弾として利用した将軍の2人だけは譲るつもりはないが、それ以外の相手なら任せてしまっても構わない。

 そのため、必死にも近いファウストの申し出に、司は折れることにした。


「死ぬなよ」


「もちろんでございます」


 司にとって、死地さえあれば増やせるスケルトンは帝国を潰すための駒でしかない。

 しかし、ファウストほどの強さのアンデッドは、代わりになるようなものはない。

 そのため、司はファウストに死なないように忠告をした。

 それを受けて、ファウストは深く頭を下げてその場から移動を開始した。






「やれ!!」


 堅牢な防壁の門を破壊して、巨大蟻とスケルトンたちが中へと侵入する。

 建物が壁のようになり一方通行になっている道を進むと、少し開けた場所へ突き当たる。

 そこで待ち受けていた帝国兵たちが、ベニアミーノの指示を受けて建物内から魔法攻撃が繰り出す。


「「「「「ギッ!!」」」」」


 魔法攻撃を受けた蟻たちは、一匹また一匹と動かぬ骸と化した。

 それを受け、スケルトンたちは蟻を庇うように自ら魔法を受けに行く。

 スケルトンたちの身を挺した行動により、攻撃を逃れた蟻たちが、左右へと続く道を先へと進んで行った。

 しかし、左右へ分かれて突き進むが、またも同じように開けた場所へと突き当り、帝国兵たちの魔法攻撃を受けることになった。


「ギッ!!」


「フッ! ここまで来れても、その数で勝てる訳がないだろ!」


 建物によって迷路のようになっている道を突き進むと、ようやく本丸のような建物の前へと辿り着く。

 当然そこには大量の帝国兵が待ち受けており、たどり着いた魔物たちへいつでも魔法を撃てる状態でいた。


「やれ!」


「「「「「ギッ!!」」」」」


 ベニアミーノの指示を受け、兵たちが魔法を放つ。

 色々な道へと分散されて、たどり着いた魔物たちの数少ない。

 スケルトンたちの身を挺した防御も、魔法の数が多く無意味。

 たどり着いた魔物はどんどん数を減らしていった。


「ハハッ!! 所詮魔物だな!」


「あぁ、わざわざ分散してくれたんだからな!」


 目の前に広がる魔物死体の山。

 それを見て、ベニアミーノとカルメーロは笑みを浮かべる。

 敵がアンデッドの魔物を使用してくるということは分かっていた。

 そのため、2人は部下に指示を出し、奴隷たちに強固壁による通路を作らせた。

 知能の低い魔物たちは、思った通りに行動し、死滅する結果になった。


「これで残りの魔物は僅かだ。殲滅しろ!」


「「「「「ハッ!」」」」」


 迷路のような通路からこの場にたどり着く数が減っていく。

 しかも、分散されて数が減り、攻撃を受けて傷を負った魔物たちばかりだ。

 手負いで動きの鈍った魔物の相手なんて容易い。

 ベニアミーノの指示を受け、帝国兵たちは順次たどり着く魔物たちを仕留めていった。


“ドーーーン!!”  


「「「「「っっっ!!」」」」」


 2人の将軍と同様に勝利を確信している帝国軍だったが、突然の爆発音に目を見開く。

 爆発は1度ではなく、迷路を形成していた建物が次々と破壊されて行った。


「用意周到なのは良いことですが、それが通用するのもここまでです」


「「っ!!」」


 建物の破壊音と共に、ファウストが姿を現したのだった。



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