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第22話 2人がかり

「ハァッ!!」


「っ!!」


 拳闘家集団のマミーたちの出現に、帝国兵はまたも数を減らしていっていた。

 そんななか、コージモが戦斧によってマミーたちを数体斬り飛ばす。

 スケルトンを相手にしていた時と変わらない殲滅力に、帝国兵たちは驚きの目でコージモへと視線を向けた。


「強者たる帝国兵が、マミーごときに手こずってんじゃねえ!!」


「コージモ様!!」


 マミーを倒したコージモが檄を飛ばす。

 たしかにマミーの出現と戦闘力は予想外だった。

 しかし、訓練を重ねてきた帝国兵なら冷静に戦えば互角に戦える相手のはずだ。

 その檄を受け、帝国兵たちの士気が高まった。


「帝国兵が魔物ごときに負けてなるものか!!」


「その通りだ!!」


 士気の高まったことにより、帝国兵たちはマミーたちとの戦闘に対応し始めた。

 マミーが相手なら、11対1ではなく1対2で戦うことで対応し、スケルトンたちが数で押してくるようなら数人で固まって対応する。

 その戦い方を繰り返すことで、敵にやられる数が段々と減っていったのだった。






「ハァハァ……」


「張り切りすぎるなよ!」


「フッ! お前もな!」


 息を切らし汗を掻くビアージョに、同じく汗を掻くコージモが声をかける。

 どこか揶揄うような発言に、ビアージョも笑みを浮かべて言葉を返した

 背後から大量の魔物が出現してしばらく経つと、帝国兵の数は半分以下まで減っていた。

 しかし、ようやく勝利の道筋が見えてきた。

 兵の指揮が上がったとは言え、戦況は均衡状態へと陥った。 

 それを覆したのは、ビアージョとコージモの副将軍たちだった。

 味方の兵が手こずるマミーを、ビアージョは槍で、コージモは斧で撃ち倒してきた。

 そうなると他の兵たちはスケルトンに集中することができるようになり、死ぬ数を減らしていったのだった。


「このまま押し切るぞ!」


「あぁ!」


 マミーもスケルトンも、もう帝国兵よりも数が少なくなっている。

 このまま勝利を得るために、ビアージョとコージモは声をかけ合ってもうひと踏ん張りすることにした。


「……何だ?」


 勝機が見えた所で、突如魔物たちの様子に変化が起きる。

 何故かビアージョとコージモには目もくれず、他の兵たちへ襲い掛かるようになった。

 何者かの指示を受けたかのような動きだ。

 ならば、自分たちが動けば良いと、2人は自ら敵へと動こうと思った。

 そこで、魔物が道のように空けた場所をゆっくりと近付いてくる者が現れた。


「初めまして、帝国軍エレウテリオ軍の副将軍の方々」


 とても戦場にふさわしくない、モーニングのスーツを着た紳士風の男。

 それがビアージョとコージモに対して、丁寧なお辞儀と共に挨拶する。


「……てめえ何もんだ?」


 格好だけ見れば、とても戦えるようには見えない。

 しかし、自分たちに近付いてくるまでの歩行姿から、只者ではないという印象を受けたビアージョとコージモは警戒心を最大に高めていた。

 そのため、彼らは武器を構えてたまま、その男へと問いかけた。


「私、ヴァンパイアのファウストと申します」


「ヴァンパイア?」


「何をふざけた……」


 エレウテリオの時と同様に、ファウストは自己紹介する。

 思った通り、2人はファウストがヴァンパイアと嘘を言っていると判断したようだ。


「信じてもらえていないようですが、まあいいでしょう」


 ヴァンパイアと言っても信用してもらえないことは、ここ数日で理解している。

 そのため、ファウストは早々に理解してもらうことを放棄した。


「主の命により、帝国兵殲滅の弊害となる御二人の始末に参りました」


「「っ!?」」


 言葉は丁寧だが、言っていることは2人にケンカを売っている内容だ。

 その言葉に、2人はこめかみに血管を浮き上がらせた。


「……武器も持たずにか?」


「あなた方相手に持つ必要はありません」


「何だと!?」


 戦いに来たというのに、ファウストは武器を持っていない。

 そのことをビアージョが指摘すると、ファウストは平然と返答する。

 完全に自分たちを下に見た発言に、コージモは更に怒りの表情へ変化した。


「俺がやる!!」


「いや、俺にやらせろ!!」


 舐められたことに腹を立てた2人は、自分が戦うと前へ出ようとする。

 しかし、お互い譲り合うつもりがないのか、少しの間無言で睨み合った。


「私は御二人同時で構いませんよ。エレウテリオ将軍もかすり傷1つ付けられませんでしたからね」


「「……今なんて言った!?」」


 ファウストが小さく呟いた聞き捨てならない言葉に、2人は睨み合いをやめて反応する。

 まるでエレウテリオを殺したのが、自分だと言っているような言葉だ。


「ご想像の通り、エレウテリオ将軍を殺したのも私ですよ」


「「っっっ!?」」


 2人が何を言いたいかは分かる。

 そのため、ファウストは2人がきちんと理解できるよう端的に説明した。


「……それを聞いたら、てめえがヴァンパイアだろうと何であろうと関係ねえ!」


「我らが恩あるエレウテリオ様を殺したというなら、この場で斬り殺す!」


 武人として、2人がかりで武器を持たない者を討つなど騎士としてあるまじき行為だが、帝国人の自分たちにはそんなこと関係ない。

 そもそも、目の前の相手は恩あるエレウテリオを殺した張本人だという話だ。

 それに、相手はヴァンパイアだと言っているのだ。

 魔物相手に2人がかりなんて当たり前のこと。

 そう都合よく解釈した2人は、獲物となるファウストの奪いなどやめて、2人で戦うことを選択した。


「行くぞ!?」


「おうっ!」


 小さく会話を交わし、2人は武器をファウストへと向ける。


「「ハッ!!」」


 まるで合図をしたように、2人はファウストへと向けて同時に地を蹴る。

 そして、左右へと別れ、ファウストを中心として円を描くように動き回る。


「どれほどのものか、楽しみですね」


 いつ襲いかかってくるか分からない状況でありながら、ファウストは冷静に2人を眺める。

 主である司以外の人間など、ファウストにとって脅威になり得る存在ではないと思っている。

 しかし、逆に司という存在が人間の中にも特別な者がいると証明している。

 この2人がそんな存在だとは到底思えないが、せめて楽しませてくれることを期待し、ファウストはゆっくりと構えを取ったのだった。


「「行くぞ!!」」


 構えを取ったのを待っていたかのように、ビアージョとコージモの2人はファウストへと攻撃を開始したのだった。



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