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第19話 再挟撃

「司様。そろそろ行動を開始した方が宜しいのでは?」


「……そうだな」


 昔のことを思いだしていた司。

 その間に、帝国軍は青垣砦へと攻撃を開始していた。

 エレウテリオの時のように、ビアージョとコージモも初めは奴隷兵を送り込んでいた。

 相変わらず江奈たちは、同国民を相手にしなければならないことにやりづらそうにしている。

 しかし、前回の経験があったからか、躊躇うようなことはしていない。

 門を破られたら終わりは今回も同じ。

 全力の抵抗をしているが、敵も数を連れて来ているため、いつまで城壁に登らせないようにできるか分かったものではない。

 そのため、前回よりも早い段階で動くべきではないかと進言してきたファウストの言葉に、司も納得の頷きを返した。


「そろそろ動かすか」


 多少早いが、司からすると帝国兵を1人でも多く青垣砦前に集めるのが目的だ。

 その背後にスケルトンたちを展開し、今回も砦とスケルトンたちの挟み撃ちをおこなうことで、帝国兵を殲滅する予定だ。

 集まってしまえば、後は司の指示次第。

 砦が潰される前に、行動を開始することにした。


「失礼ながら、スケルトンだけで大丈夫でしょうか?」


 帝国の背後から攻め込むのは、前回と同様に大量のスケルトンたちだ。

 しかし、今回は前回よりも帝国兵の数が多い。

 司のスケルトンがそれよりも多いとは言っても、全滅させるには厳しいかもしれない。

 そう考えたファウストは、不安そうに司へと問いかけた。


「あぁ、あの2人か……」


 ファウストが言うことに心当たりがあった司は、すぐに何が不安要素なのかを理解した。

 今回帝国兵を指揮している2人の副将軍。

 彼らは前回攻め込んで来た将軍エレウテリオと同様に、戦闘技術の高さによって今の地位を手に入れた者たちだ。

 スケルトンに攻め込まれようとも、その戦闘力でこの場から逃げきられてしまう可能性がある。

 全滅を目指す司からすると、それは由々しき問題だ。


「折角一気に減らすためにここに集めたんだ。逃げられそうになったら()も出すさ」


 この戦いで使うのはスケルトンがメイン。

 後は、戦場を把握するために、ゴーストを数体上空へ放っている。

 スケルトンだけでも大量の数だが、司にはまだ使える戦力が残っている。

 それを出しても別に構わないが、司にとって問題がないわけではないため、今の所出すつもりはない。

 しかし、数人でも逃げられると自分の戦術がバレてしまうため、場合によっては手持ちの駒を出すことも検討している。


「あの2人はエレウテリオと同じ位とか言っていたから、お前なら余裕だろ? 念のためお前も準備しておいてくれ」


「了解しました」


 2人の副将軍は、調査によってある程度の実力は分かっている。

 エレウテリオと同様に、武器による戦闘が得意だという話だが、ファウストなら相手にならないだろう。

 念のためを考えて、今回もファウストに動いてもらうことにした。

 司に協力を求められたことが嬉しいのか、ファウストは笑みを浮かべながら頭を下げたのだった。






◆◆◆◆◆


「何かあるかと思っていたが、これまでと変わったことなどして来ないな」


「そうだな」


 青垣砦へと攻撃を開始したエレウテリオ軍の副将軍のビアージョとコージモだったが、まずはこれまで通り大量の大和国民の奴隷を攻め込ませた。

 戦闘好きのコージモも、エレウテリオのこともあるため、警戒してビアージョの策を仕方なく受け入れた。

 しかし、警戒したのが無駄だったかのように、砦からの攻撃はこれまでと変わりがない。

 そのせいか、コージモはいら立ちが募っていた。


「このままなら問題なく攻略できるだろう。門が開いたら、俺は突っ込むぞ?」


「あぁ、好きにしてくれ」


 奴隷兵の数に、砦の対応も間に合わなくなりつつある。

 もう数時間経てば、恐らく門の開閉もおこなわれるはずだ。

 それが分かっているからか、コージモはビアージョよりも先に砦内へ攻め込むことを宣言した。

 エレウテリオがやられた理由が分からないが、このまま砦を攻略できるはずだ。

 兵たちに任せておくだけで問題ないが、コージモが攻め入るならなおさら安心して任せられる。

 ビアージョはコージモの宣言を受け入れ、砦内への侵攻を任せることにした。


「ビアージョ様! コージモ様!」


「ん?」「どうした?」


 警戒が薄れ、ビアージョとコージモはあとどれくらいの時間で攻略できるかを考えるようになっていた。

 そんな時になって、1人の兵が慌てたように2人へと駆け寄ってきた。

 何を慌てているのか分からず、2人は不思議そうにその兵へと問いかけた。


「我らの軍の背後から、大量のスケルトンが出現しました!!」


「何っ!?」「そんなバカな!?」


 その兵から伝えられた報告に、2人は同時に慌てたような声を出した。

 虚偽の報告かとも思ったが、たしかに何者かがこちらへ向けて歩み寄る足音らしきものが聞こえてくる。

 それが本当にスケルトンによるものかは分からないが、この兵の言っていることは本当と羽猿を得ないようだ。


「魔物なんて出るはずが……」


「あぁ……」


 青垣砦までの道のりで出現した魔物は、兵たちによって狩られているため、大量の魔物が出るなんてことはあり得ない。

 そのことが分かっているため、コージモは納得できないように呟き、ビアージョも同意の呟きを返した。


「そうか! これがエレウテリオ様がやられた理由か!?」


「何だと!?」


「何の警戒もしていない背後からの奇襲なんて、どんな指揮官でもどうしようもない。エレウテリオ様でもだ」


「なるほど。そう言うことか……」


 あまりにもタイミングよく、そして王国軍にとっては都合よく魔物の大群が現れた。

 というより、都合が良すぎる。

 そのことから、ビアージョはこの魔物の群れによる背後からの攻撃を、王国軍の仕業だと導き出した。

 背後からはスケルトンによる攻撃、前方には王国軍が防衛する青垣砦。

 挟み撃ちを受ければ、当然兵は慌てて統率がとれなくなる。

 そんな状況では、エレウテリオが1人が頑張ろうと、軍を立て直すことは不可能だろう。

 王国軍の者たちがどうやってこの状況を作っているのかは分からないが、これがエレウテリオがやられた原因だと2人は理解した。

 自分を引き上げてくれたエレウテリオが、王国軍を相手にどうしてやられることになったのかを理解したことで、コージモは獰猛な笑みを浮かべた。

 復讐相手が何なのかが分かったことで、自分が今どうするべきかが決まったからだ。


「ふんっ! 今回は挟み撃ちごときで敗北などあり得ん! 何かがあった時のために数を増やしているのだからな!」


「あぁ、そうだ!」


 魔物を使っての挟み撃ち、これが王国の最後の策だと知り、コージモは鼻で笑う。

 たしかに挟み撃ちを受けたことは驚いた。

 しかし、今回は何かあるかもしれないと用心のために兵を大量に連れて来ているため、挟み撃ちにされても充分対応できるはずだ。

 そのことから、2人はすぐに冷静になることができた。


「先兵隊はそのまま奴隷に砦を攻めさせろ! 他の隊は背後から来る魔物の相手をするんだ!」


「「「「「了解しました!!」」」」」


 連れてきた兵の数を考えると、スケルトンの大群を相手にしつつも砦の攻略を止める必要はない。

 そのため、ビアージョは奴隷を指揮している隊の者たちにはそのまま砦攻略をさせ、他の者で魔物の相手をすることにした。


「お前はどうする? 砦と魔物」


 少し前に奴隷たちが砦内へ入り込み開門をした場合、コージモは自分が攻め込むと言っていた。

 しかし、背後からはスケルトンの大群が近付いてきている。

 スケルトン化王国兵か、どっちの相手をするのかは本人に任せようと、ビアージョはコージモへどっちを相手にするのかを尋ねた。


「砦はまだ時間がかかる。魔物を相手にしよう!」


「分かり易くていいな。お前らしい」


 コージモの性格上、単純に暴れたいのだろう。

 どっちと戦うことができるかよりも、自分がすぐ暴れられるのはどっちかでコージモは選んだようだ。

 この答えは簡単に予想できたが、そんな選択が迷わずできるのことがビアージョとしては羨ましく感じたのだった。



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