あるかな?ないかな?
山本ちなつです。
読んで頂きましてありがとうございます。
はじまりとおわりはポップに可愛く描かれていますが中身は割とダークな内容になります。
核家族のご時世である現代あるあるな現象かなとも思います。
どうか、少しでもこの家族のやりとりの切ない感情を読み取って頂けたら嬉しく思います。
いつも探してる
どこかにあるかな?ないかな?
私の さがしもの
ここにあるかな?そこにあるかな?
どこにもないのかな?
何を探しているのかさえもさっぱりわからない。
さがしものはなにかな?
それさえ忘れてしまった。
若年性アルツハイマーの母親と私は都内の築45年以上経つ1LDKのアパートで暮らしている。
大好きだった母親
いつも私の仕事を応援してくれていた母親。
小さい時は手を繋いで河川敷を歩いたね。
ペロペロキャンディーを片手に20分歩いた先にあった我が家ももう今は火事で燃えて無くなった。
母親「あるかな?ないかな?」
小さい頃私によく母親が言っていた言葉
今でも母親は繰り返し私に告げてくる
私「さがしものは見つかった?」
そう問いかけると母親は悲しそうにこう答える
母親「私のさがしものはもう見つからないみたい」
私「そう?何を探していたの?」
リビングでお茶を入れながら訪ねてみた
母親「ありさちゃん知らない?5歳くらいの二つ縛りの女の子!」
私「...見つかるといいね」
思わず言葉に詰まった
母親「?どうして、泣いてるの。」
母親は不思議そうに私を見つめる
私が言葉に詰まったのはもう母親には見せてあげることの出来ない、30年以上も昔の私の姿だ。
いつも探してる
どこかにあるかな?ないかな?
私の さがしもの
ここにあるかな?そこにあるかな?
どこにもないのかな?
何を探しているのかさえもさっぱりわからない。
さがしものはなにかな?
最後まで読んで頂き感謝致します。