7章act7 庭師と剣士
こんばんはおはようございますこんにちは
7章もいよいよ大詰めになりますね
真実というのは斬って知る。
祖父はそう言ったきり私に後を継がせどこかへ行ってしまった。
これも教えなんだろう。
私はそう考えていた。
しかし…再び姿を現した祖父は私の隣に立ってはいなかった。
星に憑かれた敵として立っていた。
「…お祖父様。あなたは私が斬ります」
私はそこに行く。
迷いの竹林。
現在は危険なため立ち入り禁止にしている。
しかしここにいるとなぜか分かっていた。
理由はない。
「お祖父様…ここにいましたか」
「……」
真っ黒なローブを着た大柄な人物がいた。
「お祖父様、私は庭師を…そして剣士を努めて来ました。お祖父様の教えを大事にしてきました。
…あなたはなぜそちらに立っているんですか」
「……………」
「お祖父様が斬った真実はなんだったんですか…」
私は鞘に触れながら問いかけた。
黙っていた祖父は静かに口を開いた。
「真実とは時に残酷である」
「…え?」
「妖夢よ。儂達は代々あの白玉楼で剣豪であり庭師を務めた」
「…はい」
「名を上げ銘ある刀を持つことが出来た」
「…」
「しかしな…果てはただの墓標だったのだよ」
「は…?」
「名のある者も消えればただの墓にしかならぬのだ。いくら腕を磨いても最後は何も残らない。…それが儂ら魂魄家の命運だ」
「そんなこと…」
ありません。そう言おうとしたが祖父はフードを取る。
久々に見た祖父の顔は悲しみと怒りに溢れていた。
腕には禍々しい紋様が浮かび、黒と緑の二つの刀を携えて。
「何が…あったのですか」
私はそんな祖父を見たくなかった。
同情をしてしまった。
久々に会った祖父に…敵としてでも良かった。
剣で語り合いたかった。
強くなった自分を見てほしかった。
星に操られている様子はなく、むしろ制御している姿はかっこよくも見えた。
しかしその表情は辛そうだった。
「…ついてくるといい」
祖父は歩きだす。
私は付いていく。
その道のりは遠いようで近く不思議な道だった。
最後に祖父は柏手を二回打ち、右を向く。
奇妙に開けた場所が広がっていた。
「…!」
私は驚いた。幻想郷にこんな場所があったなんて。
この森を知り尽くしているという女性、藤原妹紅がいるが彼女はここを知っているのだろうか。
そこには幾重もの刀や剣が地面に突き刺さっていた。
まるで剣達の墓場のようだった。
誰が使っていたのかもわからない。
銘のある刀剣類が何本もあるのがわかった。
「儂らは半生半死。故に寿命は半永遠。故に長寿であり死人。だが命を取られれば永遠ではない。血を流し続ければ亡霊となるのだ」
「…ここは剣士として息絶えた者の墓場ということですか」
「そうだ…たくさんの無念を背負った墓だ。かつては儂らの代々はこの幻想郷の結界と境界を守るために八雲に協力し戦った。人間のために刀を取った。ある時は妖のために刀を取った」
「…」
「しかし感謝こそされど死ねば塵芥のようだった。儂の前期の男はこの幻想郷で妖によって命を散らした。良い剣士であり素晴らしい腕だった。しかし何事もないように時間は進んだ。まるで替えがいくらでもいるかのようにな」
「…今はそんなことありません。スペルカードが生まれて妖怪も人も減ることがなくなりました」
「しかし結果、衰退の悪化を辿っているのだ」
「…昔は強かったと言いたいのですか?」
「巫女も殺せぬ、妖怪も人も殺せぬ。外からやってくる人間は皆虚弱だ。これが続いたところで変わらぬよ」
「そんなことはないと思います。あなたは師匠…カオルと戦った。それを感じて何も感じなかったのですか」
「感じたとも。本物の死を感じた。あれこそが儂らが求める世界だ。世界は再び1つとならねばならない。幻想郷を解放するのだ」
「幻想郷を解放?」
「そうとも。この星の力で外の世界を力で満たす」
「っ!」
「今外の世界には星座が集っている。その星座から外の世界に向かって力を流す。そうすれば幻想郷にいる妖怪は力を更に得て自由を手にするのだ」
「師匠がいるような世界に変えることがお祖父様の目的?」
「そうだ。そのためには八雲の力は必要だ。あちら側の人間が何人生き残るかはわからないがな」
「そんな方法でこの墓標の剣士達は嬉しいんですか?喜ぶのですか」
「喜ぶとも。力のある世界へと変わるのだからな」
「そんな世界…私は望みません」
私は刀を抜いて構える。
「ならば見せよう。真実を。博麗大結界と境界が無くなり世界は上書きされるのだ」
祖父は刀を抜く。
お互いの金属の響く音が響き合う。
同じ技、同じ型が繰り返される。
「お祖父様、どうですか」
「……」
「私は強くなりました」
「強くなったか…たしかに強くなったな。しかし」
そこから私の知らない型を見せた。
二本の刀を片手で持ち巨大な鋏のように私を抉ろうとした。
「ッ!」
「よく避けた。だがこれは二連撃だ」
私はその刀の鋏に抉られた。
「ッア!!」
痛い。
魂に対してだから身体は何ともない。これを生身に受けていたらと思うとゾッとした。
「ヘカーティアを討ったことは誉めてやろう。しかし儂を倒すことはできん。なぜなら儂はあやつより強いからだ」
「やってみなくちゃわかりませんよ」
私は長刀『楼観剣』と、短刀『白楼剣』を構える。
「ふん、よかろう」
お互いの刀身が伸び間合いを取ったまま打ち合う。
祖父の姿は消える。
「っ!」
どこだ!いや上!
祖父は上から突き刺すように降りてくる。
私は楼観剣を上に構え刀の腹で防ぐ。着地寸前に横に薙ぐが祖父は刀を地面に刺して柄を足場にし私の横薙ぎは防がれる。
地面に突き刺さった刀は足が離れたと同時に刃先がこちらを向き私は楼観剣と白楼剣を交差して押し返す。
祖父は呟く。
「決まったな」
「え?まだです!」
「わからぬか?自分の刀を見よ」
私は刀を見て驚愕する。
「楼観剣にヒビが!!?そんな!」
「儂の勝ちだ。大事な刀なのであろう?次の一撃でそれは折れる」
「くっ…」
「儂の言葉を聞いてもらうぞ妖夢」
「まだ…まだです!」
「何を言うか?」
「まだ…戦えます…!」
「………」
『相手が同じ剣士だった場合で劣勢に立ったとき?そうだねぇ』
ふと、私はカオルさんと修行している時の言葉が過っていた。
『そういう時は自分の腕じゃなくて自分の剣を信じてみてよ。こういうのは龍太くんのほうが上手に答える気がするけどね』
そんなことを言っていた。剣を信じろと。
この状況がそうなのだと。
「まだ折れてませんよ」
「だが次で折れる」
「いいえ!!」
そして私は駆け抜ける。
二振りの刀をそのまま気合いの一閃と一緒に振り抜き祖父へと叩き付け楼観剣は折れる………
いいや。折れなかった。
ヒビがあった場所に白いお化けのような靄が現れて刀から消えた。
「なぜヒビが嘘だとわかった?」
「腕より剣をと教わったからです」
「………そうか。ならばもう決着を付けてやろう」
祖父が構えを取る。
私も構えるが体力の限界があった。
このままだと先に倒れるのは私の方だ。体力の限界を悟らせてはいけない。
つまり私もこれで決めなきゃならない。
祖父は必ず決めに来る。
私もやらねばならない。
…できるの?私に?。
カオルさんの…あの構えをまだ見られてなければ…まだ勝機はある。
祖父は刀を十字に構え突撃する。
私も構える。納刀もしない。
ただ刀を下げて構えた。
「…?」
祖父の顔に疑問視が浮かんだ。それでも突撃を止めない。
私は構えたまま。
祖父がそこから切り込む寸前、私は刀を前に倒し身体を後ろに傾ける。刀は地面ギリギリを通り、傾けた身体をバネのように起こし祖父の真横を通り抜ける瞬間、前にした刀を握り直し一瞬で切り込む。
高速の三連撃、狙いは祖父とあのカニギリとか言う刀。
私の放つ三連撃は祖父の腹と背中と刀に命中した。
刀は真っ二つに折れ祖父は倒れた。
うつ伏せに倒れた祖父が呻く。
「ぬぅッ…!?…ぐっ…今の放つ…何だ」
「私が師匠に教わった『楼観剣』と『白楼剣』を使った三連撃……外の世界の剣技です」
実際にこの技はカオルがカウンターとして使う技だそうで最大で五連撃まで出来るらしい。
光の速度の五連撃、いつか見てみたいと私は思った。
「…儂の負けか」
言った後、腕にあった紋様は消えていき祖父は気を失った。
誰もいない静寂の中、私はゆっくりと拳を上に掲げた。
風の流れる音が勝利を祝福しているようだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
祖父と孫の対決でした。
ここまで読んでくれてありがとうございました




