4章act3 子供の言葉を聞いてあげるのも親なんじゃないですか
こんばんはおはようございますこんにちは。
4章act3です。
今回は主人公ではなくヒロインが視点になります。
わたしの話。
幻想郷に来て少しした時の、そんな話。
フランとわたしは夜の人里を歩いていた。
「それでねカオル。ルーミアが私に言ったの」
「うんうん、なんて?」
「もっと自信を持ってーって」
「ふふ。よかったねフランちゃん」
「うんー。あ、ここ」
「ここ…?」
「うん~魔理沙の実家」
「実家……実家?!」
「うん」
看板には霧雨商店と書いてあった。
たしか魔理沙の家は霧雨魔法店だったなとわたしは思った。
「ちょっと寄っていい?」とわたし。
「いいよ」とフランは頷く。
ガラララと入ると小物や道具や布物が売られていた。
「いらっしゃいませ」と女性が言った。
キレイな金髪の髪をしていた。
うわぁすっごい美人!。え、つまりこの人が?
フランも同じことを感じたようだ。
「もしかして二人は妖怪さんです?」
「え!あ、わたしは違いますけど」
「私は妖怪だよ」
「そうですか」と女性が小さく笑顔を作って言った時、奥の部屋が開いた。
「客か」
「???」
ガタイのいい男の人が出てきた。
男の人はわたし達を一瞥した。
「…。名前は?」
「あ、桜カオルです」
「フランだよ」
「そうか。…魔理沙の知り合いなら伝えてくれ。家に顔を出せとな」
「え、あ、はい」とわたしは言った。
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「私は帰らねーよ」
「でもなんか心配してたよ?」
「心配なんかしてねって。跡継ぎの心配とか、そういうのを私に継がせて楽したいんだろ。というか…」
魔理沙はわたし達を見やる。
わたし達はあの後、魔理沙のところに向かったのだ。
途中で出会った、チルノと大妖精も一緒だ。
「なんでお前らまでいるんだ…」
「あたい達はさっき会ったんだよ」
「しかもフランまでいんのかよ」
「一緒に歩いてたの」
「それで実家に寄ったのかよ」
「「うん」」
わたしとフランは声を揃えて頷く。
魔理沙は頭を抱えた。
「魔理沙はどうして実家に行きたくないの…?」
大妖精が口を開く。
「知ってるだろ?縁を切った。絶縁したんだ。私はちゃんと魔法使いとして稼ぎたいんだ。なのにあいつらは嫁げだの跡継げだの」
「でも魔理沙、魔法使いより不死に興味あるんじゃなかった?」
フランが言ったことに思わず「え?不死?」とわたしは反応する。
魔理沙はそれには気にせず話す。
「そりゃまフランの言うとおり興味はあるがまだ不死になるとは決めてねえよ。あー、そうじゃなくて…とにかく私はあんな夢もない場所にゃあ帰らねーよ」
「とりあえずストレスはマッハだろうけど帰ってみたら?わたし達も着いてくよ」
わたしの言葉に魔理沙は固まった。
魔理沙は正気かよ…みたいな顔をしながらわたし達を見た。
フランもチルノも大妖精も頷いた。
わたし達四人の視線に魔理沙は帽子を脱ぎ頭をガシガシ掻いてため息。
「…わかったよもう。一回だけな」
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魔理沙の決意が揺らぐ前にと、わたし達はそのまま実家へ直行した。
そのままみんなで霧雨商店に入る。
「ただいま…」
「「「「おじゃましまーす」」」」
陰鬱な声と四人の元気な声が響いた。
「おかえり魔理沙」
「あ、あぁ…ただいまおふくろ」
「二人ともまた来てくれたのね。お友達もいらっしゃい」
わたしとフランは頷き、チルノと大妖精は驚きながらも会釈した。
魔理沙は母親に対しては思いの外、嫌な空気を出さなかった。
仏頂面だけど、ちゃんと話していた。
わたし達は居間に通されお茶を飲んだ。魔理沙の表情は固かった。
大妖精とちるのは霧雨母について話していた。
表情の固い魔理沙を見かねたのかフランが魔理沙の頬を引っ張ってじゃれだした。
「いたた!ちょっおいフラン、やめくすぐったい!」
「あ、やっと魔理沙、笑った」
「………え?」
「ずーっとそんな変な顔だし。私達もいるんだからいつも通りでいてよ~」
「いやまあそうなんだけどな…」
…思えば森宮学校に入学してからわたしもまだ実家に帰っていなかったなとそんなことを考えた。今年は帰れるなら帰ってみようかな。
と、襖がパン!と強く開きさっきのガタいのいい男が出てきた。
「帰ったか魔理沙」
「親父か。あぁ…仕方なくな」
わたし達の空気に緊張が走った。
やっぱりこの人が魔理沙の父親だったんだ。
わたしは心の中で霧雨親父と命名した。
「お前には言いたいことが山ほどある。魔理沙、お前はこの商店を継がねばならない。後継ぎのため男と見合い婚姻し子供を産まねばならん。霧雨の一人娘として恥じない女にならねばならないんだ」
「だから私は何度も言ってんだろ。私は魔法使いだ!。商店なんか継がねぇ。後継ぎのために結婚もしねぇ。相手は私が決めんだよ。親父にああだこうだ言われる筋合いはないんだ!」
「筋合いはないだと?!何聞き分けがないことを言ってる!。親の言うことを聞くのは娘として、子供として当然だろ!」
「ふざけんな!私の事は私が決めるんだよ!自分のことは自分で決めるってな!」
「勝手なことを言うんじゃない!!。わからないなら…!」
霧雨親父の腕が金色に輝いたように見えた。
目にも止まらぬ速さで魔理沙の胸ぐらに迫る。
「?!ッ…!」
魔理沙がそれに怯えるように身体を縮めたようにわたしには見えた。
だからわたしは魔理沙と霧雨親父の盾になるよう間に入った。
「なんだ!どきなさい」
「どきません」
即答する。
霧雨親父は唸った後口を開く。
「…桜と言ったな。お前さんも魔理沙に言ってくれ。子供は親の言うことを聞くんだと。お前さんもそう教わっただろ」
わたしは魔理沙を見る。
魔理沙はすっかり顔を伏せてしまっていた。
フランもチルノも大妖精も何を言えばいいのか、わたし達のやりとりを見守るだけでいた。
どうしていいのか…わからないのだろう。
妖怪、妖精である自分達は気持ちをわかっても言葉にできないのかもしれない。あるいは…してはならないかもしれないというもどかしさ。
誰が見てもわかる悲しい雨だった。
きっとその雨を少しでも晴らすには魔理沙とそして霧雨の人達のことを考えられる誰かじゃないとダメなのだ。
わたしはゆっくりと口を開く。
わたしが今…言えることを。
「たしかに……子供は親の言うことを…聞くものです」
魔理沙はチラりと陰りが差した表情でわたしを見た。
霧雨親父はうんうんと頷き魔理沙に向かって口を開こうとした。
「でも…!」わたしは遮り言葉を続けた。
「子供の言葉を聞いてあげるのも親なんじゃないですか」
霧雨親父は開きかけた口を飲むように無言になった。
シン……とした空気になり音が消えたように沈黙した。
魔理沙もまたその空気を感じたのか今度は光が差したような表情でわたしを見た。
降っていた雨が少し晴れた。そんな感じだった。
沈黙はしばらく続いた。
そんな沈黙を破ったのは
「魔理沙、帰ろ?」
フランだった。
「そう…だな」
魔理沙はゆっくり立ち上がり玄関に向かう。
わたしもチルノも大妖精も互いに頷く。
霧雨母に「帰りますね」と告げる。
ぎこちないながらも霧雨母は
「ありがとうございます。また来てくださいね」と言ってくれた。
霧雨親父は最後まで口を開くことはなかった。
外に出ると魔理沙は空を見上げた。
「今日は帰るわ」
その言葉にわたし達は頷いた。
「カオル………ありがと」
表情は見えない。けど少し泣いていたような声がわたしには聞こえた。
そう言い残し箒に跨がり飛んでいった。
姿が完全に見えなくなりチルノが口を開いた。
「…アタイ達じゃ何を言ってもきっと魔理沙動いてくれなかったかもね」
「うん…」と大妖精。
「そうなの?」とわたし。
フランはゆっくり口を開いた。
「魔理沙が家族と上手く行ってないって話は意外とみんな知ってるの。私がカオルをここに連れてきたのはたまたまなんだけどね…」
「そっか。…よかったのかな来れて」
「少なくとも進展はあったように思います…」
「そうそう大ちゃんの言う通り!進展はあったんだよ」
「それならよかった」
「でも今日のことは内緒にしておいたほうがいいね」
フランはそう言った。
魔理沙に気を遣ってのことなのかもしれない。
チルノも大妖精も頷く。わたしも頷いた。
少なくともいずれは彼には話してしまうだろう。
でも森宮に帰るまではこの話は龍太にも内緒の話になるかもしれないと感じた。
そうしてわたしはみんなと別れ、博麗神社へと戻った。
4章act3end
ここまで読んでくれてありがとうございます。
ネタバレになってしまうんですが原作では魔理沙は家族と長い間、勘当しているんです。
あくまでも考察ですがそれはやはり魔理沙だけじゃなく魔理沙の家族にも言葉や思いを意地でも届けなくてはならないと考えました。
それでさらに喧嘩になってもさらに親子不仲になっても伝えることに意味があるのだと結果もですが過程も大事になると考えてみました。
なのでこちらではせめて魔理沙とその家族を和解させようと思ったのです。
ちなみに和解できるかできないかはくじ引きで決めました。和解できそうでよかったです。
今回はここまでです。
次回は4章act4になります。
ここまで読んでくれてありがとうございました。