3章act4 後悔させたかったんです
こんばんはおはようございますこんにちは。
連日投稿になります。
3章ラストになります。
こいしやお燐。
後からお空も会話に加わり、みんなでお茶して楽しく過ごせたなと考えた時だ。
「さて、そろそろ時間なのですが。龍太さん」
「ん?」
「あなたは最初、私の力を便利だと言いました。私は妖怪さとりです。だから宣言通り後悔させようと思います」
「は?ちょっと何する気よ」
霊夢が席を立ち臨戦になりかけるがさとりは待ったをかける。
「焦らないでください。何も弾幕勝負をしようと言っているわけじゃないんです」
霊夢は胡散臭げに座り直す。
俺は口を開く。
「ほんとにそう思っただけだ」
「わかっています。ですがこのままではあなたは後悔しないまま去るでしょう。心を読まれることが如何に苦痛か教えるだけです」
「さとり、あんたいい加減に」
「いい霊夢」
「…いいの?」
霊夢が初めて俺に気遣う表情をしながら聞いてきた。
俺は頷く。
「ああ。それでさとり。何をするんだ?弾幕勝負じゃないってことは何かゲームでもするのか?」
「察しがよくて助かります。そうですね。ではこれをやりましょう。私と龍太さんで」
トランプだった。
「ポーカーをやりましょう。ルールは…。知っているようですね。これをしましょう。これならお互いに怪我はしませんから」
「わかった」
確かにこれは弾幕勝負でも戦いでもない。
霊夢は助けに入る必要がない。
文字通り俺に後悔と苦痛を与えることができるわけだ。
だから霊夢は静観する役回りになった。
カオルは「おおポーカーだ。ルールなんだっけ?」と疑問符を浮かべていた。
そもそもポーカーは心理戦を強く要求する。圧倒的にさとりが有利だ。
「勝敗を決めるので持ち点は6。一回負けると3減り、一回降りると1減ります。0になれば敗けです」
「いいよ。なら交換は」
「一回。交換も降りるかも先攻から。先攻後行は交代制ですね?」
「あぁ…。配るのは」
「先攻からですね」
「ああ」
「その提案を飲みましょう」
みんながざわつき出す。
カオル、霊夢、こいし、お空、お燐は俺とさとりが醸し出す空気に何かを言うことはなかった。
ゲーム《喰らい合い》はもう始まっている。
最初の先攻後攻はじゃんけんで決める。
勝ったほうが決めれる。
当然ながら俺は負けた。
さとりは後攻を選んだ。
ここまでは予想通り。
ポーカーは後攻のが有利に運べるからだ。
先攻は俺だ。
カードをショットガンシャッフルで切り、五枚ずつ配る。
1回戦
先6龍太―さとり6
心を読むさとりは負けることを微塵も考えてない。
普通にカードを見た。
さとり
ダイヤ3、クラブ3、スペードJ、ハート4、ダイヤA
(とりあえず札は弱いけどペアはできる…さて)
さとりは俺を見る。
が、さとりは言葉を失った。
心のどこを見ても手札がなかったのだ。
(なにを考えているの)
俺の手札は伏せられたままだったからだ。
(読まれるくらいなら見ないってわけ?)
「ね、ねぇ龍太さん。手札見てもいいのよ」
霊夢がそう俺に言う。
「いやこれでいい。交換もしない」
その言葉にみんなが驚く。
さとりが見た"龍太"は飄々とした態度。
もう1つの瞳が見たのは煽ってやるという一色のみだった。
(…もしかして馬鹿にされてるのかしら。イカサマはないみたいだけど)
さとりは心を読む。ならば弾幕勝負でも何事においても心を読むことに依存している可能性がある。
ならばわからないことに対してはさとりは弱い可能性もまたある。
(この時間もかなり考えを巡らせてる…。手強いかもしれない。案外交換なしで行ったほうが彼は降りてくるかもしれない。ショウダウンになったら3のペア。初手で役が揃う確率は二回に一回。それは大体3ペアより強い。ここで3点失うのはキツイ。=つまり短期決戦になる。なら正攻法で取ったほうが有利)
「交換するのか?」
「三枚交換します」
スペードJ、ハート4、ダイヤAを交換する。
手元に来たのはハート7、クラブK、クラブ2だった。
さとり
ダイヤ3、クラブ3、ハート7、クラブK、クラブ2
これがさとりの手札だった。
(弱いわね…)
「俺は降りんぞ」
今の交換の仕方。
多分ワンペア止まりだったんだろう。
表情から見てもペアは来なかった可能性が高い。
勝ったかもな。
(当たりよ。五割で負けているわ)
「私は降ります」
言うまでもないが手札を見ないほうがかなり不利である。
1減点されたとしても五分五分の勝負は避けるべきだ。
(大丈夫…五回までは降りられるんだから)
「龍太さん手札見てもいいですか?」
「いいよ」
だが龍太の手札はどの役も揃っていなかった。
(勝っていたのに降りてしまったのね…)
さとりはカードを手でまぜながら切り集めて配る。
「え、つまり今龍太さんがさとりに先手を取ったってこと?すごくない?」
霊夢の言葉にカオルは何度も頷く。
2回戦
5さとり先―6龍太
(気を取り直そう。次にちょっと強い役を作ればいい。手札を見ないなら勝ったも同然だわ)
「さて、じゃ見るか」
「「「「「は??」」」」」
さとりを含め全員が声にだした。
さとり
クラブJ、ハート5、スペード8、スペードK、ハート7
龍太
クラブ7、スペード7、スペード3、ダイヤ10、ハート4
(どういうこと?ばれるのになぜ……。いや。ばれていても勝っていれば先行に降ろさせることができる。降りなければ降りればいい、か。後攻は手札を見るわけね)
さとりは負けている手で降りるパワープレイはしない。ということをさとりは読み終えた。
「三枚交換します」
さとり
クラブJ、ダイヤ2、ダイヤ6、スペードK、クラブK
(無理してストレートを狙わなくてよかったわ)
さとりは龍太の心を見る。
引いたか。
(いやなんでわかるのよ。…いや確かに無理にパワープレイができない以上わかることかもしれないわね)
「俺は三枚交換だ」
龍太
クラブ7、スペード7、スペード5、ダイヤ10、ハート2
「ん~…」
(勝った)
「私はいきます」
「俺は降りる」
次は俺がカードを切り配る。
「今のはお姉ちゃんが勝ったんだよね」
「みたいね。なんかヒヤヒヤするわ」
「霊夢ちゃんも?わたしもヒヤヒヤする」
3回戦
5さとり―先5龍太
また先行がやってきた。ブラインドゲームが始まる。
さとりは手札を見る。
さとり
クラブ5、クラブ7、クラブ9、クラブ11、ハート12
(来た。フラッシュを狙える。…)
あの表情は、多分絶好調ってやつだな。
思いきり揺さぶるくらいはしないとな。
じゃないと勝てない。
(この人、心を読む相手でもほんとに勝とうって言う意思が伝わるから少し怖いわね)
龍太
クラブ10、クラブK、クラブA、ダイヤ8、ハート2
「二枚交換する」
龍太
クラブ10、クラブK、クラブA・?・?
二枚をテーブルに伏せた。
(そうくるのね…)
「私は一枚を交換します」
(あれだけクラブが潰れてるのにまだくるのね。彼にはストレートの可能性もある。もしこのフラッシュに失敗したら私の勝ち目はなさそうね)
さとり
クラブ5、クラブ7、クラブ9、クラブ11、クラブJ
(これで負けはない)
「俺は降りないぞ」
龍太の答えにさとりは戸惑う。
(なぜ?イカサマはないみたいだけどいったい…)
この寒いゲームだが、だんだんみんな熱くなってきていた。
「悩むのか?」
「いいえ。この手を降りるわけがないでしょ」
「了解。それじゃ」
「いくわ」
「じゃあ」
「「ショウダウンだ(です)」」
ショウダウンは意外も三回戦だ。早かったほうだと思う。
さとりはクラブのフラッシュ。
龍太
クラブ10、クラブK、クラブA、ダイヤ6、スペード2
さとりの勝ちだ。
(やった!これで相手は残り2点私は5点!。私は安全に降りられる。勝ったも同然!そうよ。あそこからフラッシュなんてそうそう出るものじゃないわ!)
さとりは嬉しくなり龍太の悔しがる心を読もうとする。
読んだら嬉しさはどこかへ行った。
--勝たせてもらう。
後悔も苦痛すら1つも曇りのない勝利への自信だった。
(何のつもりであんなに自信になれるのよ。負け惜しみでもないことがわかる。本気で私に勝つ気でいる)
カードを切り、さとりはカードを配る。
「うにゅ?今のは龍太が負けたってことですか。さすがさとり様です。圧倒的でしたね」
お空の言葉に霊夢は「そうねぇ…」と呟く。
「龍太くんあと二点だよ」
「さとりはあと五点もある。状況は龍太さんが不利よね」
4回戦
先5さとり-2龍太
さとり
クラブ5、ダイヤ6、クラブ7、ハート8、ハートJ
「一枚交換します」
(また出来かけの札。その自信折ってあげるわ)
さとり
クラブ5、ダイヤ6、クラブ7、ハート8、クラブ9
(できた!。これで私の勝ちね)
さとりはもしかしたらまたフラッシュを完成させたのかもしれないと龍太は考える。
一枚ということはその可能性が大きい。
2連続は勘弁だな
「そう考えるなら交換すればいいんですよ」
「いや俺はこれでいいよ」
再びカードを全て伏せていた。
「そうですか。私は降りませんよ。…龍太さんにチャンスをあげましょう降りるチャンスを」
そう言ってさとりは手札を公開した。
「ストレートよ。さぁ降りてください。私の能力が便利だと思ったことを後悔してください」
(彼はそれでも降りない。でも自爆させるよりはさらにいたぶりたい)
覚りという妖怪の本性が出てきていた。
覚りという妖怪に心理戦など無意味だと、後悔しろと。
だが
「ふはははっ」
「…なんですか」
さとり、さとりはカードに慣れていない。
まずシャッフルな。
さとりのシャッフルは普通の混ぜ方だ。
俺はショットガンシャッフルだった。
さとりのシャッフルじゃカードは混ざりにくいんだ。
「…何が言いたいの?」
「そのカード、見覚えはないか?クラブの5と7に」
「???」
「わからないか?今まで配ったカード。出た数字。俺のほうに何が入ってるか想像がつくか?」
「え?ちょ…まさか」
「あぁ、俺も降りない。
ショウダウンだ」
俺はバン!とテーブルに叩きつけてカードを一斉に開く。
龍太
クラブK、クラブQ、クラブA、クラブ10、クラブJ
ほぼみんなが一瞬静寂した。
テーブルにはプロでも滅多にできない代物があった。
「ロイヤルストレートフラッシュ…」
さとりの呟きが地霊殿に響く。
これで点数は並んだ。
「え、なに?龍太くん何したの?」
「私もわからないんだけど、龍太さんは勝ちを確信してたってことよね?え、どうやって」
「お姉ちゃんを圧倒的に負かしたって、だって心を読むんだよ。何をやったの?」
「龍太さんを死体にしたいほど興味が出たです」
「いやはや、たまげた」
5回戦
2さとり-先2龍太
さとりはいきなり敗北という現実を見せられてプレッシャーがかかっていた。
「配ったぞ」
「あ…はい」
さとり
ハート10、ダイヤ10、クラブ5、ダイヤ8、クラブQ
龍太
スペードJ、ハートJ、スペード5、ハート7、ハート8
「俺は三枚交換だ」
この方法がさとりにはかなりプレッシャーになると見た。
龍太
スペードJ、ハートJ・?・?・?
「俺はこれでいい。さとりの番だ」
「さ、三枚交換します」
さとり
ハート10、ダイヤ10、ハート3、ダイヤ3、スペードK
「俺は降りない。さとりはどうするよ?」
(負けそうになっている?私が?心理戦で?)
覚りは心理において自信がつきまとう。
事前に知ることができるからだ。
だからこそ、俺は読まれても構わないしやっぱり便利だと思ったのだ。
確かに読まれた側は怖いかもしれない。
でも使い方次第で、誰かを助ける力にもなれると俺は知っている。
自分のためにじゃない。
どんな力も誰かを助けるためにあるのだと
「さとりにも怖いことがあるってわかったんだ」
「え?」
「さっき作ったストレートを見せた理由。ほんとは怖かったんだ。3点で倒すより確実な1点を狙ったんだろ。本来このゲームは裏向きにするのは不利だ。さとりは降り続ければよかったんだよ。がむしゃらの俺に確実に勝てるまでな。さとりは知らないことが何より怖いんだ。だからあの時、勝負を付けにきたんだろ?」
「……。降ります」
「いいのか」
「はい」
さとりはカードを集めて切り配る。
「お姉ちゃん…」
「ちょっと予想外すぎたわね。これは」
霊夢はここでどちらが勝つか確信したようだった。
6回戦
さとり1ー先2龍太
さとりは役が上手く作れずそのまま勝者が決まった。
さとり0-2龍太
勝者、巫凪龍太。
「この勝負、龍太さんの勝ちね」
そう言って霊夢は拍手する。
カオルも拍手し、みんなが拍手する。
この拍手は俺だけじゃない。
さとりにも送られる拍手だ。
「………。後悔は、しないんですね?」
拍手の中、さとりは俺に尋ねる。
あぁ。と心の中で言ったがさとりからは反応がなかった。だから
「あぁ、しないよ」と言葉を交わした。
「…そうですか」
と萎んだ返事が返ってきた。
…へこませたかな……?と考えた。
さとりを見たが変わった表情だった。
一回瞳を閉じ、再び開けるといつものさとりだった。
「ではそろそろ皆さんを返さなきゃいけませんね」
「ん?ああもうそんな時間か」
「すごく盛り上がったね」
「私達見てただけなのにお姉ちゃんと龍太さんの戦いドキドキした」
「そうね。びっくりしたわよ。ロイヤルストレートフラッシュだっけ?何百分の一みたいな確率だすとは思わなかったわ」
思い思いの感想を述べながら俺達は帰りの身支度をする。
霊夢とカオルが部屋を出て、みんなはお見送りしたいのか付いていった。
俺は最後に部屋を出る前にさとりに「おじゃましました」と挨拶しようとし振り返ったら
「さとり?」
さとりがすぐ隣にいた。というか少し近い。
「どうした?」
「後悔…させたかったんです」
「あぁ」
「でも嬉しくもあったんです」
「??」
「私はさとり。どこまでも心を読む覚りです。私の能力で私は嫌われ怖がられます。ですが後悔しないということは嫌わない怖がらないということです…よね?」
「そうだな」
なぜに最後疑問系?
さとりは慎重に俺の表情を見ながら口を開く。
「嫌われる前に嫌われたかったんです。少なくともそのほうが痛みは少ないから」
「…つまり?」
何となくだがわかった。
これは、さとりなりの俺に対する歩み方なんだと。
距離感が近いのはパーソナルスペースがわからないからかもしれない。
「……後悔しないと龍太さんは言いました。その言葉が後々になって後悔したと言われるのは辛いです。ですから…」
俺はさとりがいい終わる前に無言でさとりの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「後悔しないぞ」
「わかりました…。では1ついいですか?」
「ん、ああいいぞ」
「カオルさんからは何1つ読むことが出来なかったのですが」
「……」
いきなりミサイル撃ってきタアアァァ。
「やっぱり…」
「おい今の読んでないだろ、からかったな」
「すみません…読んでないです。でも答えにくそうなことは表情でわかりました」
「そうだな。まぁ答えることはちょっと今は難しい。けど一番は正直俺もわからないんだ。なんで読めないのか。え?…ほんとに読めないのか」
「は、はい。むしろ読もうとすると」
「…すると?」
「どこまでも広がる大空が見えるんです。そこにはカオルさんがいて、あなたがいます。それだけなんです。ずっと見ようとすると今度は飲み込まれそうになります」
「さすがカオルというべきか」
大空と聞いて嬉しくなった。
カオルに似合う空だと。
俺も一緒に飛んでいるんだなと。
ここで俺は1つ気付いた。
さとりは俺の心を読めていなくなっているのだ。
答えるのが難しいのはほんとだ。
カオルは本来は戦えるし俺より強い。
今それを思っているのにさとりからは何も反応がない。
一時的かはわからないが何かしらさとりの心に大きく影響を与えたのかもしれない。
「事情があるということはわかりました。カオルさんのことはばれるまでは私も誰にも言いません」
「ありがとう。助かるよ」
「はい。また遊びに来て下さい」
「もちろん。トランプ一緒にできて楽しかったよ」
「――――――。はい。私も…。私もとても楽しかったです」
「よかった。またポーカーしようか」
「いいですよ。次は私が勝ちまくりです」
「いやなんでさとりが勝つ前提なんだよ」
さとりはその時、初めて小さく笑顔を見せた。
いいものが見れたんじゃなかろうかと考えた。
「それではまた会いましょう。次は宴会の時ですかね?」
「そうだな。じゃあまた。おじゃましました」
みんなから「おそーい!」と言われながら俺達は博麗神社に帰るのだった。
3章end
ここまで読んでくれてありがとうございます。
3章無事に終わりを迎えることができました。
読んでくれている方々ありがとうございます。
ネタバレをしますが、
今回はポーカーというバトルをしました。
理由としては心理的に最強と言われるさとりと、ゲーム強しと自負のある主人公が戦ったらどうなるかという点でトランプバトルにをしました。
結果としては自分でも予想外な結末になりました。
どうなるか考えておらず、遊戯の神の赴くままにという感じで書いてました。
もし主人公が負けていたらさとりに伏して詫びる光景がありありと浮かびます。
けど次は勝つ!とか楽しげに言いそうなのが主人公の持ち味ですね。
では今回はここまでです!
次回から4章になります。
まだまだよろしくお願いいたします。
ここまで読んでくれてありがとうございました!