2章act4 俺と私が過ごす幻想郷
こんばんはこんにちはおはようございます
2章ラストになります。
お盆終わってしまいましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?
「「でっかな虫だー!」」
こいしとフランは二人して叫んでいた。
蜂のグリームは羽音を唸らし、風の刃を飛ばしてきた。
しかも俺を無視して二人を狙っていた。
「フラン!こいし!」
俺は杖を振り光の刃を放つ。風の刃とぶつかり合って消失する。
「あの虫はドカーンしてやったほうがいいね!」
フランが既に臨戦体勢に入った。
紅魔館の人材は戦える人が多いんだなぁ。武闘派だな。
「龍太さん戦えるんだね」
こいしが帽子を抑えながら言った。
「ああ、まあな。こいしは?」
「私、戦えなくはないけど」
と胸の辺りにある目玉のような物を撫でていた。その瞳は閉じられている。こいしはちらっとフランを見た。
「うん、私は戦えるよ。こいしは私より戦いは多分得意じゃないかもしれない。けど」
「けど?」
「こいしは戦えるよ。何かあるなら龍太がどうにかしてくれるだろうしね」
「あーそうなるのな。いいぞ。二人は戦いに集中してくれ。俺は二人を支えるし守るから」
「「…………」」
二人は無言になり俺を見た。
「え、何?どうしたの?」
「う、ううん何も」
「…龍太、お姉様にも変なこと言ってないよね?」
「え?ないない!ないよ!って言ってる場合じゃない!」
俺は二度目の追撃を防ぎつつ"無意識"に二人とリンクした。
「二人とも。あの蜂は明らかに二人を狙ってる。なるべくだがアイツには近距離戦は控えてくれ!」
俺の言葉に二人は頷いた。
こいしはどこから取り出したのか右手には大型の友切包丁を握り左手には黒電話があった。
「じゃあいくよ。本能「イドの解放」!」
ハートの弾丸のようなのが一気に放たれた。
蜂のグリームはそれらを器用に回避しながら突っ込んでくる。
「さて」
俺は魔法陣を一つ作り前方に放り投げる。バチバチと電撃を放つ魔法陣を蜂のグリームはそれを無視して空へ上昇する。
「かかった。禁弾「スターボウブレイク」」
フランから色とりどりの弾が舞い上がり降り注ぐ。上空に回避した蜂のグリームをフランの技が捉えた。かわしているが弾を時々掠め呻きが聞こえる。
《ジュバババババ!!》
羽音を一気に甲高く鳴らし弾を全て吹き散らす。
「え、ちょ…吹き飛ばされた?!」
蜂のグリームは尾から針を複数飛ばしてきた。
針は景色の色と同化したような色だ。
「毒針か!」
「針?」と言いながらもフランはその針を全部見ようとした。
「フラン!見える?!」
こいしに早口で訪ねられたフランは歯噛みしながら首を横に振った。
暗闇だからか。あるいは針が景色に紛れているせいなのかフランは針を全て捉えきれなかったらしい。何をしようとしたかわからないが見えていれば打開策があったようだ。
「なら見えればなんとかなるんだな?」
「え?どうやって?」
俺の言葉にフランは困った顔をする。
とりあえず答える時間が今は惜しかった。
俺は光を出し、杖に集めて、ある形に変えてその光を放つ。
「プロキオンの光」
実質ただのフラッシュだ。目眩ましの用途だがこの光が今は必要だ。
瞬間、景色が明るくなった。
俺達が有利になる光になってくれよ!。
「フラン!どうだっ!」
「ッ!見えたよ!ありがとう!」
フランの瞳が輝いた。
そして飛んできた針は全て爆発した。
蜂のグリームは自らが不利と悟ったのか逃避しようとしたのがわかった。
「あ、逃げるよ!」とこいし。
「わかってる!」
俺は重力で蜂の速度を下げて地面に叩き落とす。
再び羽を広げようとし宙に浮かぶ…ところをこいしが技を放つ。
「茨符「コンファインドイノセント」!」
長い茨の蔦が幾重もの伸び蜂のグリームを捉え絡め、動きを封じ、再び俺は重力で蜂型グリームを地面に叩き付ける。
「そのまま押さえててね」
フランはそう言い右手を開いて閉じてを繰り返す。
そして
「きゅっとしてドカーン!」
蜂型グリームはフランが最初に言った「あの虫はドカーンしてやったほうがいいね!」の言葉通りドカーンに見合う大爆発を起こして消滅した。
そして静寂が戻ってきた。
どうやら
「勝ったの?」
「勝ったな」
俺達はあのグリームを倒せたようだ。
思えばあのグリームはカオルを見ると警戒するか逃げるかだったからな。
もし最初からカオルがいたら一目散にあのグリームは逃げたかもしれない。あのグリームは確かに賢かったからな。戦力差がわかるとすぐに判断を変えていたから。そういう意味では倒せてよかったかもしれない。
「龍太さん龍太さん」
「ん?どうしたこいし?」
「結局あの虫ってなんだったの?」
「あああれな」
俺は簡単にグリームについて説明した。
「全世界共通の敵かぁ…」
フランはそう返した。
「あれが幻想郷にいっぱい来たらちょっと大変かも」とフラン。
「うん~」とこいし。
「でもこれで幻想郷は安心だ」
「そうだね。龍太はあとはもう外に帰るだけなんだよね?」
「ん、そうだな」
「そっか。また話とかできるかな?一緒に遊んだりもできるかな?」
「え?遊ぶの?あぁもちろん。そもそも賢者が留守って聞いたからしばらくは幻想郷にいるよ」
「そっか!よかった」
「えー私も龍太さんと遊びたい」
二人は俺と遊ぶ権利をどうこうと話し始める。このままでは俺はあっちこっちと大変な目に合いそうなので二人の頭をガシガシ撫でながら言った。
「幻想郷に来てるのは俺だけじゃないから、その人も来ればみんなで一緒に遊べるぞ」
そう言うと二人は「わーい」と喜んだ。
それにきっとカオルなら喜んで来てくれるに違いない。
みんなで遊ぶか。何やろう。今のうちに考えておこう。
「そうだ龍太さん」
とこいしが俺を見た。
「なんだ?」
「ちゃんと守ってくれてありがとう」
こいしはぺこりと頭を下げた。
フランも「ありがとぉ」と頭を下げた。
顔を上げた二人はそれはまたいい表情をしていた。
見た目は幼いが行動や考えはやっぱり外見以上に大人びた何かを感じドキリとなりかける。
「い、いやいや。二人の協力のおかげがあったからだよ」
「龍太は謙虚だね」とフランは笑ってこいしも笑う。
俺はこいしと一緒にフランを館まで見送り、とりあえず二人で神社まで向かう。
それまで俺は聞いてみたいことを聞いてみることにした。
「よく俺の世界は異形な存在には気は抜くなって言われるんだけど幻想郷ではどうなんだ?」
「その解釈は多分合ってると思う。龍太さんほど強い人間なら仕掛ける妖怪は多分少ないけど力のある妖怪はそうじゃないだろうから」
「なるほどな。強くはないぞ」
これまで危機になったことを振り返った。
ルーミアはお腹が空いてなかったら俺をスルーしてたかもしれない。
人間ではあったが咲夜もそうだった。
下手したらレミリアもその類いだっただろう。
「あ、もしかしてこいしも?」
「まぁうん。最初はそうだね。さすがに守ってもらった恩があるからしないけどね」
そう言うこいしは笑う。
俺はこいしの持つもう1つの瞳を見た。
「ん、これ?サードアイって言うんだよ。お姉ちゃんもあるよ」
「へぇ~姉がいるのか」
こいしとフランの妹コンビは凄かったなと俺は考えながらサードアイにゆっくり手を伸ばし撫でてみた。
「あはは、くすぐったいよ」
「え?あ、ごめん感覚があったのか」
「そりゃあるよ~」
「そうか。こいし、サードアイの瞳を開けないのか?」
「うん」
即答だった。サードアイ。
ちなみに俺達の世界で3つ目の瞳は心の瞳と言う。
彼女は閉じているんだろう心を。
即ちそれは意識と無意識をごちゃ混ぜにしてでもそうする必要があったのだ。
話したことやあったことの記憶があるだけまだいいのかもしれない。
無意識は意識せずともそれを行う行為であり、意識は無意識無くそれを行う行為だ。
つまりこいしの能力をそれを操る能力なのだろう。
扱いの難しい能力だ。
中途半端で少しだが俺と似ている。
自在に扱えるようになればきっとすごい力だろう。
「姉は開いてるのか?」
「うん。お姉ちゃんには必要だし誇りがあるみたい。私には必要ないから」
「そうか。…いつか必要になる日が来るといいな」
なんとなくそう言わずにはいられなかった。理由はないけど。
「いつかかぁ。そうだねぇ。そういえば龍太さんって地霊殿には来た?」
「え?いやまだないな」
「そうなの?じゃあ来てみてよ!」
「どこにあるの?」
「旧地獄!」
名前が不気味だ。酒と温泉好きが多そう。鬼がいそうだ。
「まぁそうだな。行ったことないし近いうち行くよ」
「うん!あ、ついたよ?」
「お、着いたか」
階段を上り神社に入る。屋内に入る。
「ただいま~」
「おじゃまします~」
「「おかえりなさい~」」
「って、こいしじゃない。拾ってきたの?捨ててきなさい。うちはペットは買えないんだから」
「……」
「…」
「…いや霊夢、お前何言ってんだ」
「いや…違うわよ!」
「何がだよ」
「そ、それは」
カオルが笑っていた。
いわく、カオルと霊夢は俺の帰りが遅いので「どうせ面倒ごとに巻き込まれたんでしょ」と霊夢が言ったらしく。
「じゃあ花札しようよ」とカオルの提案で、負けたら面倒ごとの犬猫を飼ってはいけませんみたいな感じで言う!ということになり霊夢が負けたらしい。
で、それがこれだ。
「さすがに捨ててきなさいはないかなぁ」
「ええー。だってめんどくさいじゃない。ったく。で、何があったのよ」
「んとな」
少年説明中。
「って感じなんだよ」
「なるほどね。グリームって言うのね。ってか龍太さんとカオル《あんたら》知ってたら言いなさいよ」
「「すいません」」
「でも知らせたら知らせたで逆にグリームに警戒されて被害が出たかもしれない。だったら言わないほうがって考えたんだ。さすがに時間かかったら霊夢だけには話す気ではあったが」
「なんでよ?」
「一緒に住んでるからな」
「…。そうね。それは納得だわ。あんたらが良く知ってるなら来るかもしれない。私なら倒せるでしょうしね」
「もう倒したがな」
「わかってるわよ。フランとこいしと龍太さんが倒したのね」
「うん」とこいし。
「そ、なら一応幻想郷を脅かす脅威を退けてくれてありがとうと言っておくわね。それでそのグリームはそれだけなのよね?」
「あぁ、そのはずだよ」
「そう。じゃああとは本当に二人をどうやって外に帰すかね」
「そっかぁ。あ、こいしちゃんだっけ?はじめまして。桜カオルだよ」
カオルがこいしに挨拶をした。
こいしはそれに対しかなりキョドっていた。
「あ、は、はじめまして。古明地こいしです」
一瞬。本当に一瞬だ。
こいしのサードアイが一瞬開きカオルをガン見した。だが一瞬すぎてサードアイはすぐに瞳を閉じた。
その光景を俺もだが霊夢も見ていた。
これちょっとまずいか?と考えた。
薄々だが霊夢はカオルがただの回復を扱う魔法使いじゃないことに気付き始めているのかもしれない。
霊夢は案の定、俺を見て目が合った。
ちょっと困ったな。
どう説明しようか。
そう考えていたら霊夢は表情自体は変えなかったが目を閉じた。
三秒ほどだ。
(????)
再び目を開けると特に意思のある目ではなかった。
霊夢はいつものように口を開いた。
「さて、挨拶も済んだようだしご飯にしましょう。こいしもどうせ帰るまで長いし食べてけば?明日帰ればいいでしょ」
「そうだな。今日もカオルが作ってくれたんだな」
「今日はカオルと一緒に作ったから!。焼き魚とご飯と漬物」
「あときゅうりや茄子にスイカもあるよ。龍太くんすごいんだよお供え物のところにあったんだよ~このスイカ達」
「そりゃまた不思議なことだな」
こいしはそのまま、食卓につくことにしたらしい。
俺はカオル、霊夢、こいし達のところに向かい座り手を合わせた。
いただきます。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回初めて主人公は幻想郷の住民と共闘しました。
今まで襲われてばかりでしたがいい方向転換になったと思います。
そして2章が無事に終わることが出来ました。
ありがとうございますありがとうございます。
次回から3章に入ります。お楽しみにです。
では今回はここまでです。
ここまで読んでくれてありがとうございました!