2章act3 俺が過ごす幻想郷
こんばんはおはようございますこんにちは
お盆ですね。
2章act3になります。
「んん…」
俺は目を開けた。
身体を起こすと大きなベッドで寝ていたようだ。
あれ?確か俺はメイドと戦って勝った。そのあとは?ここから記憶がない。
「目が覚めたかしら?」
「え?」
俺は真横を見る。
そこには10歳くらいの紅い瞳をした女の子が紅茶を飲んでいた。よく見ると背中には蝙蝠のような羽があった。
「…吸血鬼、ヴァンパイア?」
「あら?見てわかるのね」
「ああ、まあな。ってここは?」
「ここは紅魔館。そして私がここの主。レミリア・スカーレットよ」
「俺は巫凪龍太だ」
「龍太が名前ね?」
「そうだよ」
俺は次に今の状況を聞こうとすると扉が開いた。
「失礼します。お目覚めになったようですね」
「あ、お前はさっきの」
「メイド長をやっています。十六夜咲夜です。先ほど振りですね」
「……うんまあそうだな」
いろいろ聞きたいことがあった。
咲夜には殺されかけたがどうやら状況だけ見ると挽き肉にされなかったらしい。
何が目的か。
「いろいろ考えてるみたいだけど紅茶でも飲みなさいよ。冷めちゃうわよ?」
レミリアがティーカップを指す。
俺は紅茶を見る。
ティーカップを持とうとして一瞬手が止まる。警戒はすべきか?。
「ふふふ。毒なんて入ってないわ」
そのレミリアの言葉になぜか納得した。
「そっか」
俺は迷わずティーカップを手に取り口に運ぶ。
「え…!?迷わず飲むの?」
レミリアが驚いたような困った顔をした。
「毒、入ってるのか?」
「……。入ってないわよ」
「そうか」
俺はくいっとティーカップに入った紅茶を飲む。
「んん?この紅茶美味いな」
「ありがとうございます」
俺の素直な感想に咲夜が少し嬉しそうに頭を下げた。
「でしょ。咲夜の紅茶は絶品なの。紅茶だけじゃないわ。家事に炊事に戦闘も一流なんだから」
なんだその万能メイド。
「あー聞いてもいいかな?」
「なにかしら?」
「俺、最初に咲夜と戦ってたんだが、なんで俺ここにいるんだ?」
「咲夜はちょっと手荒だったからね。ごめんなさいね」
「龍太さんすみません。お嬢様がどうしてもとおっしゃいますのでこんな形になりました」
「??ああ。そうなのか。紅魔館ってたしか霧の湖に建ってるんだよな?」
「はい。妖怪の山が近くにあるのと特に用事がなければ外来人はまず来ないからですね」
つまり俺を、いや俺達をどうにかしてここに連れて来たかったということか。
思えばたしかに妖怪の山に人間はそうそう近付かないか。ましてや外来人なんて近付いたら妖怪の肴にされそうだしな。
魔法使いでない限りは。
「状況を察したようね龍太」
「ん、ああ」
「外来人の能力者なんて滅多に会えるものじゃなかったら会ってみたかったのよ」
「なるほど。能力者じゃなくて俺は魔法使いだけどな」
「そう魔法使いね。改めて言わせてもらうわね。
ようこそ紅魔館へ」
こうして俺は紅魔館のお客として館を案内されることになった。
レミリアは「私一人で大丈夫よ」と咲夜が心配げな顔をしながら仕事に戻らせて今はレミリアと二人だ。
「ここが中庭よ」
「館っていうのを初めて見たから驚きだよ。綺麗だな。そういえば」
「何?」
「あの時、気絶させたのって結局レミリアだったのか?」
「ああ、あれね?。違うわよ。私もたしかにいたけれど、そもそも私、昼間は外になかなか出れないし」
「え?じゃあどうやって外に?」
「日傘よ。日光が苦手だから」
「なるほど。なら気絶させた人は結局誰なんだ?」
「そうね、なら次は美鈴に挨拶に行きましょ」
紅魔館の入り口までやってきた。
どうやら俺を気絶させた人はこの紅美鈴という人らしい。
「あ、お客さん起きたんですね」
「えぇ、起きたわよ。美鈴は今日はおきてるのね。龍太、紹介するわ。彼女は紅美鈴。ここの門番で武術がすごいの」
「そりゃ珍しい人が来てるんですからっていやいやちゃんと起きてますよ。はい。紹介に預りました紅美鈴です」
「巫凪龍太だ。まさか気絶させられるとは思わなかった」
「いやぁ、あの時はすみません。でもギリギリで私の拳かわそうとしましたよね」
「え?美鈴そうなの?」
「そうなんですよレミリア様。いや内心焦りましたって。運悪きゃ返り討ちでしたって」
「そう。なら運がよかったのね私」
レミリアの言葉に美鈴が苦笑する。
「なによ?」
「いえいえいえいえ。とりあえずまた話ましょう龍太さん」
「あぁ」
俺とレミリアは次の場所に向かう。
「それにしても」
「なに?」
「レミリア達が幻想郷に来たのは館まるごとだったんだな」
「そうね。いろいろあったからね。フランにもたくさん嫌な思いをさせただろうから」
「フラン?」
「妹よ」
「妹いるんだな」
レミリアのいろいろという言葉にはいい意味も悪い意味もたくさん含まれているんだろう。
幻想郷の外。もし架空の存在が架空のままだったら彼女達にとっては外の世界は過酷だったに違いない。俺のいる世界にはそういうのはないから、ふと聞いてみたくなった。
「レミリアって人間は好きか?」
だがこの質問は少し良くなかったかもしれない。
レミリアの瞳に小さな炎が見えた気がした。
「…それどういう意図で聞いてるのかしら?」
「さっきレミリアも言ってたいろいろの部分。ここに来る前、ヴァンパイア…吸血鬼だからって理由で、人間とかにいろいろ言われたりされたりしたんじゃないかって思ったんだ」
「そうねぇ。仮にそうだったら?」
「仮にそうだったら、なんか」
「…………」
レミリアは俺の次の言葉を待った。
「そうだったら寂しいな。寂しくて悲しいな」
「……………」
「人間でも妖怪でもどっちでもなくても言葉が交わせるのに、たかが人じゃないからって理由で迫害されるのはなんだか痛いよな」
「……」
「あ…同情とかそういうつもりで言ったわけじゃないぞ」
レミリアが何も言わないので俺は彼女の言葉を待つ。
レミリアは小さく笑う。瞳の中に燃えていた炎はもうなかった。
「変な人ね。妖怪と人間は違うじゃない」
俺は「そうかなぁ」と呟く。
「そうよ。でも…優しいのね。龍太ありがとう」
そのレミリアの表情に少しドキっとした。
「ここが図書室よ」
レミリアに案内されたのはそれはでかい図書室だった。いやもう図書館だ。
「こんなに本が」
「すごいでしょ。私はちょっとあっちにいるわね」
とレミリアは楽しげに奥へ進んでいった。
俺は本棚を見る。まぁ訳のわからない言語ばかりで読めるかわからないが。
「あ、これは読めるか?」
一冊を手に取り開こうとすると
「あーー!!!!ちょっと待ってください!それだめです!!」
頭の両側面と背中に小さな羽が生えた女の子に本を取り上げられた。
「え?なんでダメなんだ?」
「それは呪いのかかった本で妖魔本とはまた違うんです!開いたら大変でしたよ!なんでそんな本とってるんですか!」
「いやそこにあったからだけど」
「え!あれ…私配列間違えたかな…?」
というか妖魔本。幻想郷にもあるんだな。
ちなみに「妖魔本」とは「 主に昔の妖怪が書いた本 」を指し、その種類には妖怪の手による古典書籍、人間宛に書いた書物、「グリモワール」などが含まれる。特に「 妖怪の存在を記録した本 」が多い。
そしてグリモワールってのはフランス語で呪文集を意味し、主に19世紀にヨーロッパで流布した魔術の手引書・指南書・便覧を指す。
霊的存在の力を利用する神霊魔術《demonic magic》や降霊術《necromancy》に関するものが多いとされる。
日本語では「魔導書」・「魔道書」・「魔術書」などと訳される。
キリスト教では魔術はご法度なのだが、ヨーロッパでは数々のグリモワールが制作された。
怪しい本の宿命というべきか、ソロモン王やアポロニウスといった偉人を作者とするものも少なくない。
つまり今俺が取り上げられた呪い本は黒魔術の要素が含まれた本だということだ。開けたら呪術にかかるとかそんなとこだろう。黒魔術に関してはパトリシアの仕事だな。帰ったら聞いてみようか。
「それで君は?」
「あ、すみません…私、小悪魔です。こあって呼んでください」
「巫凪龍太。龍太でいいよ」
内心、俺は悪魔だぁ?と思ったがここは幻想郷。勝手な判断で退治はよくないなと考える。
何より俺が知っている悪魔はもっとやばかった。こあは大丈夫だろう。
「はい。龍太さんよろしくお願いいたします。あ、もしかしてレミリア様の言ってたお客様って」
「多分、俺のことだな」
「そうだったんですか。男の人だったんですね」
「あぁ」
そういえば幻想郷に着いてから俺以外に男の人あまり見てないな。まぁいいか。
「こあはここで何をしてるんだ?」
「私はパチュリー様の秘書をやってるんです」
「パチュリー?」
「はい。今はレミリア様と談笑されてますね。あそこですよ。案内しますね」
「ありがとう」
たどり着くとレミリアとパチュリーと呼ばれる女の子が喋っていた。
「龍太、もういいの?」
「え?ああ。こあにここまで案内してもらったんだ」
「そうなのね。ご苦労様。こあは戻っていいわよ」
「あ、はい。わかりましたレミリア様。龍太さんまた近々お話しましょう」
そう言ってこあは秘書の仕事へ戻っていった。
「それでレミィ。この男が?」
「そうなの。とっても嬉しかったんだから」
「そう」
とパチュリーは俺を見た。
「パチュリー・ノーレッジ。私の名前」
「ん、巫凪龍太だ」
「よろしくね」
「ああよろしく」
互いに見つめあうこと約10秒だろうか。パチュリーが口を開く。
「あなた魔法使いね」
「あぁ、わかるのか?」
「わかるわよ。同族な感じがするもの。でも魔法を行う動作や物は全然違う感じがするわ」
「そこまでわかるのか?すごいんだなパチュリー」
「そこまでってわけじゃないけど明らかに魔力が違うもの」
「同族ってことはパチュリーもか」
「そう。私も魔法使い。この幻想郷に魔法使いが増えたのは少し嬉しくもあるからね」
「パチェはこの紅魔館の参謀でもあるのよ。私の自慢の友人なんだから」
「そっか。そうなんだな」
「それでレミィは館内を案内してるのね」
「そうよ」
「でもそろそろ返してあげないと。時間も時間よ」
「うー…。うーんそうね。最後にどうしても紹介したい人がいたんだけどね」
「また来た時に話せばいいじゃない」
「そうね。わかったわ。それじゃ龍太。玄関まで案内するわ」
「うん?わかった」
レミリアは紅魔館の人達と話す時は楽しそうだ。大きな家なのに、主としてだけでなくしっかりと自分の身近な存在を見ている。最後に紹介したい人がいた。きっとそれは妹だろう。
外を見ると夕方だった。
「どうだったかしら?」
「ああすごかったよ。何よりレミリアって家族思いなんだな」
「…そうかしら?」
「あぁ。レミリアにとって紅魔館の仲間は大事な家族なんだなって思ったよ」
「なんだか恥ずかしいわ。また来てくれると嬉しいわ。まだ紹介したい人がいるのよ」
「ああわかった。妹のことか?」
「な、なんでわかったの?」
「すごいの大事そうな顔をしてたからな図書室で」
「そ、そうなのね」
「あぁ。次はカオルと来るよ」
「カオル?もしかしてもう一人の?」
「そうだよ」
「なら楽しみにしてるわ。
そうそう、さっきの返答だけど今は嫌いじゃないわね」
「???」
「そりゃ私は吸血鬼だから時々は人間の血とか飲まないといけないけど。でも龍太のような人間がいれば人間も捨てたもんじゃないかもしれないわ」
「そうか。そりゃ良かった」
「それじゃ気を付けなさいね。霊夢によろしく」
「ああ、了解。ありがとう」
俺は帰路に向かう。
少し歩いて気付いた。
あ、そういえば帰り道合ってるよな?。地図はっと。
懐を探ると見つかった。あーヨレヨレだな。
今後は魔術袋に入れておこうかな。
「でねぇお姉様ったらすごくめちゃくちゃでね」
「あぁわかる。お姉ちゃんもそういうところあって」
話声が聞こえた。
まっすぐこっち向かってくる。
互いに目があい立ち止まる。
フリルをふんだんにあしらった緑と黄色の服の女の子に、背中にプリズムのような羽を持った女の子がいた。
「あなたはだぁれ?」
とプリズムが付いた女の子が聞いた。
「俺は巫凪龍太。龍太でいいよ。さっき紅魔館にレミリアに招待されててその帰り道なんだよ。二人は?」
「お姉様のお客さん?。私はフランドール・スカーレット。フランで大丈夫だよ」
「古明地こいし。こいしでいいよ」
「ああ君がフランか。レミリアから名前は聞いてたんだよ。改めて二人とも、はじめましてだな」
「うん。はじめまして」
こいしの瞳はしっかりと俺を捉えていた。
「はじめまして。そういえばお姉様が言ってたな。変な力がある外来人が来てるって。龍太のことだったんだね」
「私は新聞で見たかな。外来人久しぶりに見た」
「大抵の外来人は喰われて死んじゃうからね」
「そうらしいな。…食ってくれるなよ?」
そう俺が苦笑いで言うとフランとこいしはクスクスと笑った。
怖い怖い。
幻想郷は改めて美しくも恐ろしい場所だと知った。
フランが口を開く。
「たしかにすごく美味しそうだけどそんなことしないよ」
「ん?、なんでだ?」
というか美味しそうなのか俺。
嬉しいような嬉しくないような。
「だって簡単には食べられなさそうだし。お姉様のお客さんなら私のお客さんでもあるし」
あーなるほど。そういう感じか。
「そういえばこいし。私はここから近いけど地霊殿遠くない?大丈夫なの?」
「うん?大丈夫だよ。龍太さんは帰りって言ってたよね?」
「あぁ博麗神社だよ」
「あぁ貧乏神社ね」
こいしも言うが本当に貧乏なのかあの神社。
「あ、それなら龍太に送ってもらいなよ」
「えー、大丈夫だよ。神社ってことは霊夢もいるでしょ?さすがに龍太さんに悪いかなと」
「ならとりあえず神社に寄ってくか」
「龍太さんいいの?」
「多分大丈夫だろ。よしじゃあ」
向かおうか。と言いかけた時だ。
俺の身体が条件反射で魔法弾を背後に向かって射った。
「「わぁっ!?」」
「ちょ、ちょっと龍太、何?どうしたの?」
「い、いきなりでびっくりした…」
「悪いフラン!こいし!敵だ」
俺が再び目を向けると
『キシャアアアアア』
羽音を鳴らし黒い障気を振り撒きながらこちらを見据える蜂の姿をしたグリームがいた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
2章act3でした。
幻想郷交流編みたいな感じになってきました。
今回は主人公の視点で動く話となりました。
妖怪との関わりが強い感じですね。
次回は2章act3です。
2章は次回で最後となります。
ここまで読んでくれてありがとうございました!