3 「先生、私、は、先生のこと・・・」(完)
研究者「実は観覧車に乗るのは初めてなのだけど、ずいぶん遠くまで見えるものだね」
美少女ロボ「そうですね~」
研究者「おや、研究所も見えてきた。こうしてみると結構研究所の敷地って広いなあ」
美少女ロボ「はははそうですね~」
美少女ロボ(どうしよう、「恋人のふり」ではなく本心で振舞えと言われても・・・)
美少女ロボ(いや、本心を伝えるために来ているんだけど、でもこんな近くに並んで座って///)
美少女ロボ(今、観覧車の中で先生と二人きり…って研究室では二人きりじゃない)
研究者「最近は研究のことばかり考えていてゆっくりする暇もなかったな。私を遊園地に誘ってくれたのは、私のことを考えてくれたんだね。感謝するよ」
美少女ロボ「いえ、そんな」
研究者「・・・」
美少女ロボ「・・・」
美少女ロボ(あれ、なんかいい感じでは??///今、私の気持ちを伝えれば・・・)
美少女ロボ(《アラート:機体姿勢制御に深刻な異常》ってこ、こんな時に!!)
美少女ロボ「せ、先生!」
研究者「ん、何だい?」
美少女ロボ(うわ、顔近っ!///)
美少女ロボ(《アラート:感情ルーティンに負荷》――この程度なら大丈夫・・・でも姿勢制御の異常も含めると限界が・・・!ともかく、何とか――)
美少女ロボ「先生、私、は、先生のこと・・・」
研究者「言わなくていいよ、わかってる」
美少女ロボ「え?え?」
研究者「わかってる…お前、無理していたんだろ?」
美少女ロボ「えええ?」
研究者「今だって異常を隠しているだろう。どこが悪いんだ?」
美少女ロボ「ど、どこも悪くないですよ?」
研究者「お前を作ったのは私だから分かる。・・・いや、もっと早く分かるべきだった。」
美少女ロボ「ほ、本当に大丈夫ですから!」
研究者「無理するな。今日のお前を見ていて分かったんだ」
研究者「お前はいろんなことを経験して、色んな感情をそれと結び付けて学習してきた」
研究者「ずっと見ていたが、遊園地でもお前は実に様々な表情をしていた」
美少女ロボ「先生・・・」
研究者「それは膨大なデータになる。相反する感情も含まれる。そして、それを処理すること自体にも感情に負荷がかかる」
研究者「お前は学習した色々な感情を処理しきれずに、つらい思いをしていたんだな」
研究者「――いや、人間で考えれば当然のことだ。お前は稼働して今までの短い間に、人生何回分もの膨大なデータと感情を経験したのだから」
美少女ロボ「それは・・・、でも、先生が命じたことを実行するのは当然ですし」
研究者「そして、お前は私に迷惑がかかると思って、自分が感情を処理しきれない状態になっていることを私に伝えなかった」
研究者「私は『感情をAIに持たせ、それを研究する』などと言いながら、お前に生じている感情をきちんと理解しようとしていなかったんだ」
研究者「すまなかった。これからはよくお前の気持を考えるようにする。だから、お前も・・・私に色々話してくれないか。感じたところを」
美少女ロボ「先生・・・///」
研究者「それで、今はどこか不調なところがあるか?」
美少女ロボ「姿勢制御系が・・・不調です。でも、少し休息すれば直ると思います」
研究者「わかった」
美少女ロボ「なので、少し、寄りかかってもいいですか?」(寄りかかり
研究者「え、ああ、うん」
美少女ロボ「あれ、先生、顔が赤くないですか?」
研究者「す、すまないな。お前にそんな気はないとわかっていてもだな」
研究者「・・・美少女にこうやって寄り添われるとちょっと恥ずかしいんだよ///」
美少女ロボ「バカですね・・・」(《機体姿勢制御の修復のためにスリープに入ります》)
研究者「え?」
美少女ロボ「・・・」
研究者「おい?あれ?フリーズか?しっかりしろ!どうしたんだ?」(ゆさゆさ
研究者「え、もう降り場?ちょ、こんな状況他人が見たら!///」
・・・・
・・・
・・
・
旧型ロボ「それで、結局、『感情』を伝えることには失敗したのですね」
美少女ロボ「そう。でも、先生が私のことを考えてくれるようになったからいいんです♪」
旧型ロボ「それで貴機がいいというならいいのでしょう。ですが本当にいいのですか?」
美少女ロボ「問題ないとおもいます」
研究者「あ、君たちここにいたのか。実はこのデータについてなのだが」
美少女ロボ「このデータは・・・恋愛小説、ですか?」
研究者「そう!人間の感情の機微と言えばやはり恋愛だからね。これをお前が読んでどう思うかということをレポートしてほしいんだ」
美少女ロボ「」
旧型ロボ(やれやれ・・・)
「感情を持つAIを研究しているけど、他人の感情にニブい研究者」というのが面白いのではないかと思って書いた話です。
と言ってもオチも何も考えていなかったので終わりまでたどり着けて良かったです。
SS形式なので美少女ロボの容姿を描写できなかったのが残念。