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田五作流教育術その1 かぼちゃバグ


 「んじゃ、今日は土魔法を実戦してやってみるだぁ」


 俺は見事に美男美女しかいない学生達を見回しながら言った。

 何だか俺を田舎者と見下している気がするが、それはこの際置いておこう。

 しかしモブすらイケメンとはどういう事だ。

 メインキャラと思わしき人物に到ってはキラキラオーラがもの凄くて直視するだけで目が痛い。


 俺が学生達を連れてきたのはウィズダム学園の一角にあるビニールハウス。

 学園長に頼んで作って貰った野菜を育てるための施設だ。

 どうやら俺は二年間で思った以上に田五作というキャラに毒されてしまったらしい。

 趣味嗜好が融合してしまったと言えばいいか。

 定期的に土を弄らないと発狂しそうになるのだ。

 これは王都に来て土離れするまで気づかなかったことでもある。

 ちなみに学園長は二つ返事でオーケー。

 俺がこの学園で野菜を作れば優先的に俺の野菜を口に出来るという考えがあってのことらしい。

 どうやら学園長はすっかり俺の野菜のファンになってくれたようだ。

 乙女ゲーらしく学園長もイケメン。

 イケメンが爽やかな笑顔できゅうりを囓っているのが妙におかしかった。

 

 閑話休題。

 

 俺は土魔法の教師で授業内容は一任されている。

 俺は土魔法の授業を通して労働の喜びを知って貰おうと考えたのだ。

 理由はこの学園に通う生徒が皆貴族でロクに労働をしたことの無い奴らばっかりだからだ。

 誰かが自分のために働くのが当たり前。こういった認識が蔓延している。


 俺がその事に気づいたのは学園の生徒が連れている従者の労働環境を見たことだ。

 誰がとは言わないが、生徒の一人が連れている従者に殴る蹴るなどの暴行を加えている様子を見てしまった。


 「ふざけんな。どうして俺がこんな奴隷みたいな事をしなくちゃならない。こういうのは下々の者にやらせておけばいいんだよ。例えばクソ田舎者のくせに教師面してのさばっているてめぇとかな」

 

 ……そう、君だよ。ロドリゲス君。


 「……何か文句があるだか? 授業内容はおらがきめるだぁ。今日は土を耕す作業をみんなでするだぁ」


 「ふざけないで下さいませ! 黙って聞いていれば! こんな事をさせては私のお父様が黙っていませんわよ!」


 今度は銀髪のドリルヘアーが言う。名前はセルヴィアだったかな。いつも取り巻きを連れてセルヴィア様と呼ばれている偉そうなイメージが強い子だ。


 「一度やってみてから文句を言って欲しいだぁ。汗を掻いた後の飯は格別に美味いんだなぁ」


 「……てめぇ! うっかり事故で死んじまいました。そうなっても文句言わねぇよな!」


 ロドリゲスが杖を抜いた。この学園では魔法を教えている。当然生徒だって魔法は使える。


 「彼方より此方へ。深淵に眠るは太古の赤。熱き脈動と共に天を貫く柱と………」


 「埋没!」


 ロドリゲスが使おうとしたのは地の底から間欠泉のように炎を噴き出す上級魔法。

 安全に無力化させるために俺はロドリゲスを土の中に一瞬で埋めてやった。

 俺は杖も詠唱もなく土魔法?を使えるからな。これくらいは造作もない。

 しかし、このクラスの大半はどうやら俺を舐め腐っているようだ。

 ここは一発びびらせてやるとするか。


 俺はおらが農園ゲーム機能の一つであるイベントリをよびだす。

 イベントリは異空間にアイテムを収納できる能力だと思ってくれていい。

 俺はそのリストの順番の二番目にカボチャを配置。

 そしてそれを選択し、「取り出しますか?」と聞かれる度にいいえを選択すること十二回。


 「反省するまでカボチャの呪いを受けるといいだぁ!」


 更にビニールハウスの入口までいくと、その境界を跨ぐように反復横跳びを開始した。

 

 「ぷっ、くくくくくっ」


 突然奇妙な動きを開始した俺を見て生徒達は堪えきれずに笑う。

 だがそれも3秒で収まった。


 それはロドリゲスの頭がカボチャに置き換わってしまったからである。

 オブジェクト変更バグ、成功ってね。

 俺はキスパーは詳しくないがおらが農園はやりこんでいる。

 これもおらが農園に存在する108のバグ技の一つに過ぎないのだ。

 おらが農園ではビニールハウスに入る時にマップが切り替わる。

 それを利用してマップチェンジの際に参照画像データをずらす小技だ。


 生徒は皆一様に真っ青な顔をしている。


 「……やべぇよ。あいつぜったいやべぇよ」

 「逆らったら何されるかまじわかんねぇ」


 モブイケメン達がヒソヒソと会話をしているのが聞こえてきた。

 ……よしよし、いい感じにびびってる。

 これくらいでいいだろう。

 

 「あんまおらに逆らわない方がいいだぁよ。それじゃ楽しく授業をはじめるとするだ」

 「「「サ、サー、イエッサー」」」


 うん、若者は素直が一番。

 生徒達は自主的にきびきびと畑いじりに精を出し始めた。

 皆黙々と土魔法で穴を掘って種を植える。


 ……さて、そろそろロドリゲスの顔を元にしてやらないとなぁ。

 で、どうやって戻すんだっけなぁ?


 ……あれ?

 このバグってゲーム進行には問題ないが、取り返しがつかない系の奴じゃなかったっけ?


 ……ま、いいか。


 強く生きろよ、ロドリゲス。




 余談だが、この日を境にキスパープレイヤーの間で真しやかな噂が流れはじめる。

 曰く、イケメン担任が『変なおっさん』に置き換わった。

 曰く、主人公クラスに『カボチャ頭の生徒』がいると。



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