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第4回 東洋のガラパゴス 奄美の貴重な生き物

この放送では、皆様からの奄美情報をお待ちしております。

ご意見、ご感想、情報の齟齬などがありましたらどしどしお寄せください。


※物語はフィクションですが、事実に基づいたストーリーとなっております。

「うがみんしょーらん、南高なんこう奄民あまみん部長のリコです」

「こんにちはー。同じく奄民のミドリです。今日も、エフエムハレかな!『みどりこのシマ唄きばらんばぁ』の時間がやってきました。どうぞ最後までよろしくお願いします。なお、この番組は『シマ唄の未来を考える、奄民』、奄美民謡研究部の提供でお送りします。と、いつもの口上を述べたところで、いきなりやけど、こないだのケンミンSH○Wみた?」


「見たよー、鶏飯の話をしたその日に狙ったようにやってたね」

「いやー、実際テンション上がるよね。ずっとニヤニヤしてみてたもん」


大高だいこうの生徒とか出てたもんね。いいなー、あたしたちも出たかったぁ!」

「いつか奄民のみんなでテレビとかでたいよね!」


「ラジオにはでてるけどな」

「そうやったわ。でもやっぱりちゃんと映像で動いてるところ見せたいやん? あたしたちの美少女っぷりを!」


「このラジオからは一ミリたりとも伝わってこないけどな」

「でも奄民はみんな美少女やん?」


「ラジオだったらなんとでもいえるからな。まあ、あとは視聴者リスナーさんの想像にお任せということで」

「はげーいってたね。はげー。全国デビューしてたね。はげー」


「孝介(あに)が最後にね、『はげー、ほうらしゃー』ってね! さすがに全国デビューしたから、このラジオではげーいってもクレームこないかもな」

「全国のみなさーん! 驚いたらはげですよはげ!」


「のばせ! はげーって『(よこぼう)』いれろ! まったく油断もスキもないな」

「あたしはリコちゃんのこと、スキやで?」


「ば、ばか! ラジオの放送中に何いってるんだよ!」

「『リュウキュウアカショウビン』の次くらいに」


「まって! ちょっとまって! アカショウビンの次って何? どういうこと?」

「順位でいうと、10、20、30……」


「二桁単位! カウントダウンが二桁なんだけど! ランクめちゃくちゃ低くないか、それ!」

「うそうそ、ちゃんと上のほうにいるから、アカショウビン」


「でもアカショウビンより下かあたしは!」

「いい声で鳴くよね、アカショウビン。はじめて聞いたときは鳥の鳴き声とは思わへんかったもん。ちなみに真っ赤な体をした奄美の鳥のことね」


「綺麗な鳥だよな。チュンチュンとかピヨピヨみたいないわゆる小鳥の鳴き声とは違うよね」

「よくガイドブックなんかで『キョロロロロ……』って表現されてるけど、あれは全然違うで! クックルルルル……って感じやない?」


「おお、さすがミドリは耳がいいな。アカショウビンは地元ではその鳴き声から『クッカル』って呼ばれてるんだよ」

「あの声はいいわ。でも、フクロウ。あいつは怖い」


「あはは『リュウキュウコノハズク』な。確かに不気味だよな」

「奄美に来た最初の頃、夜中にあの声を聞いて正直ビビったもん。え? 何? 何の音!? って飛び起きそうになったし」


「コホッ、コホッてよく通る声で鳴くんだよね」

「悪魔属性の感じするもんね、あれ」


「悪魔って……でも、鳥系は奄美は見応えあると思うよ。ルリカケスは是非一度見てもらいたいくらい綺麗な鳥だからね」

「鳴き声汚いけどね。せやけどリコちゃん、こないだの行った自然観察の森でもそうやけど、『声はすれども姿は見えず』なことない?」


「都会の人って、鳥の鳴き声に鈍感だって聞いたことあるよ。自然の音をノイズとして処理してしまうから、距離感とか方向感覚が合わないらしい。奄美のガイドさんが『あそこに鳥いるよ』って教えても、見つけられない人結構いるんだって」

「いや、ホンマに見えてへんねんって。あー、あたしも妖怪ウォッチ欲しいわ」


「……なんで妖怪ウォッチ?」

「おれの友達! 出てこいルリカケス!」


「妖怪じゃないから! 奄美の鳥は妖怪ウォッチかざしても見えないから! って、また本番中にスマホ出してるし!」

『オレッチ、トモダチ…○pple W○tch! チョット、私ハ妖怪デハアリマセンヨ!』

「あはは、しゃべったー」


「何? 今の何!?」

「それはそうと、リコちゃんはアマミノクロウサギって見たことある?」


「え? さっきの何? え? クロウサギ?」

「うん」


「クロウサギは実は一回も見たことない。ていうか、地元でも見たことある人結構少ないと思うけど?」

「そうなんや? いや、実はあたし、こないだみたんよ。クロウサギ」


「……どこで?」

「長雲峠」


「うそでしょ? ていうか、クロウサギって夜行性だけど?」

「ホントホント。こないだあたしのお父さんと見てんて。 ちょっと前、龍郷たつごう町でカサリンチュの無料ライブあったんよ」


「ああ、りゅうゆう館の?」

「そう、それに行きたくて、しかも無料やし。で、仕事帰りのお父さんに頼んで車で行ったんやけど、行くのがちょっと遅かったから、もう満杯で入れませんって、断られたんよ」


「すごい並んでたらしいもんね」

「仕方がないから、帰ることにしてんけど、せっかく出てきたからと思って、長雲峠を通って帰ってみようっていうことになってんよ」


「ほうほう、夜の長雲峠とはまたチャレンジャーな……」

「ほんでね、お父さんの車って屋根がばって全部開くから星空なんかも見えるんよ。ほんでね、自然観察の森の駐車場あたりでちょっと星を見てから、秋名の方に向かって下ろうとしたら、おってんよ!」


「なんかいきなり出てきたな、おい」

「道のど真ん中に、ハブ!」


「ハブかよ! いや、たしかにハブいるけど!」

「よく考えたらハブみるのも始めてやってんけど、最初木の枝かなんかが落ちてるんやとおもったんやけど、なんか変なぬめぬめ感があってね。あ、ハブやって思った」


「あれ、けっこう嫌だよな」

「ほんでね、道のど真ん中におるわけよ。ハブ。お父さんが踏まへんようにこう反対車線に車を避けてその脇を通り抜けようとしてんけど、そしたらキュッて!」


「キュッ?」

「そう、まっすぐやった体がこう、ぐねぐねっっていうの? 体を縮めてもう今から飛び付くでー、みたいな感じでね、しかもあたし助手席やってんけど、そっちがわにハブおったから、うわぁ、来る来る! って軽くビビった」


「あいつら、本当にトラックとかにもアタックしてくるからね」

「後で気づいてんけど、屋根空いてたからもしホンマにとびかかられて、屋根から入ってこられてたらと思ったらぞっとするわ」


「危ないよ、本当に。夜の山なんて地元民は走らないもん」

「そう。ほんで秋名に降りる峠の終わりらへんで道端にクロウサギがいてんよ」


「あっさり出てきた! 特別天然記念物、さらっと出た!」

「遠目で、あ! うさぎおる! ってなって、あわててヘッドライトを消してんよ。逃げへんように。そしたら見失って」


「見失ったのかよ!」

「真っ暗やねんもん。 あー、見失ったー……と思って、仕方ないからヘッドライトつけたら、車の真正面におったわ」


「まだいた! けっこうウサギ余裕だな!」

「これが写真ね」


「……あ、本当だ。すごいね」

「いや、結構テンション上がったわ。クロウサギ」


「まあ、でも前にもいったけど、野猫とかが山で繁殖して、奄美の生態系に影響を与えたりもしてるらしいから、人間ももっと気をつけないといけないよね」

「マングース放したりしたらアカンよね」


「あれは、本当に当時の人はもうちょっと考えろよって思うよな。奄美の動物ってハブ以外に天敵がいなかったから、ハブ対策しかしていない進化の仕方をしてきたって聞いたことあるよ。そこにマングースやら猫やらが現れたもんだから、元からいた生物はなすがままなんだって」

「大変やね。まったりした職場にいきなり外資が入って上司が外国人になったくらい大変やね」


「何それ! と、おもったけど、案外そんな感じ。もうわけわかんなくてパニックって感じだね」

「それにしても、アマミノクロウサギって貴重な割にすごいマニアックな位置づけでしょ?」


「まあな。奄美自体がまだそこまでメジャーじゃないから、仕方ないんじゃない?」

「でも、ヤンバルクイナとか、イリオモテヤマネコって有名やん? これってね、名前がちょっと悪いと思うねんよ」


「名前? アマミって入ってるから、奄美の生き物ってよくわかると思うんだけど」

「いやいや、リコちゃん。ちょっとリコちゃんのスマホでアマミノクロウサギって入力して変換してみ?」


「あ・ま・み・の・く・ろ・う・さ・ぎ…………奄美の苦労詐欺……」

「思った通りリコちゃんのスマホってアホやったわ~」


――この番組は『シマ唄の未来を考える奄民』、奄美民謡研究部の提供でお送りしました――

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