第2回 奄美の難読地名
この番組では、皆様からの奄美情報をお待ちしております。
ご意見、ご感想、情報の齟齬などがありましたらどしどしお寄せください。
※物語はフィクションですが、事実に基づいたストーリとなっております
「うがみんしょーらん、南高の奄民部長、リコでーす!」
「こんにちは! 同じく奄民のミドリでーす。エフエムハレかな! 『みどりこのシマ唄きばらんばぁ!』の時間がまたまたやってまいりましたぁ。この番組は『シマ唄の未来を考える、奄民』奄美民謡研究部の提供でお送りします。さて、リコちゃん」
「なんでしょう、ミドリさん」
「2回目の放送ですよ」
「絶対に1回で打ち切られると思ってたけどな」
「いや、ホンマにありがたいね。えー、この放送はあたし、ミドリとリコちゃんが奄美大島についての雑学やら小ネタなんかをうだうだ喋るという、実にくだらない番組です」
「頼むから自分でくだらないっていうのはやめて。ヘコむから」
「ちなみに、前回放送の視聴者さんが何人やったか、知りたい?」
「うっ……知りたいような知りたくないような……」
「じゃん! なんと43人!」
「うわぁ、なんともリアクションしづらい数字!」
「まあ、20人超えたからいいやん?」
「いや、本当にありがたいですよ。ありがっさまりょーた!」
「そういうわけでね、今日も頑張っていきたいんですけど、あ、タイトルの『きばらんばぁ』っていうのは、頑張らなきゃっていう意味の奄美の方言、島口やねんよ」
「おい、どの口が偉そうにいうか?」
「島口といったら、奄美のシマ唄は全部島口でうたうねんけどね、あれは関西人からしたら難しいわぁ」
「だろうね」
「一番苦労するのが『目』ね、目」
「ああ、それね」
「むぅぃぇ」
「なんだって?」
「いや、文字でおこせんわ、むぅぃぇを一文字で表せって無理やし。あと『水』も」
「まだやるの?」
「むぅぃじぅぃ」
「この話題はしんどいわ。伝わりにくいし」
「せやね。そういえば、リコちゃんの出身の集落って崎原っていうやん?」
「うん。それが?」
「さきはらやと思ってた」
「ああ、奄美大島とか沖縄は原を『ばる』って読むからね。原生林のある金作原とか、海岸がきれいな打田原とかな」
「打田原とかおかしいない?」
「それなら、ミドリの今すんでる集落だってよめないだろ?」
「あった?」
「そう。漢字で書いたら『有る』に『良い』だもんな」
「有良なんか、大学受験にでたら、100%間違えるって。日本の漢字教育はどうなっとんねん! ってクレームつくわ」
「まあな。だからあったは「ありら」と呼ぶようにもなってるんだけど、昔からの島人にはやっぱり「あった」なんだよな。ちなみに有良には『あったどこね』っていう名物があるんだけど、知ってる?」
「あんたバカね?」
「あったどこね! これは漢字で書くと「有良大根」なんだよ」
「おお、大根。そういえば、隣のカツミさんも作ってたわ。大根」
「奄美でも有良大根は美味しいって有名なんだよ……」
「安木屋場」
「何? いきなり」
「安木屋場」
「ミドリ、わざといってるだろ」
「えへへ、バレた?安木屋場つていうのは、龍郷町の先っぽらへんの地名なんやけど、あそこも絶対読めないね」
「いきなり話題とぶな。それで、行ったことあるの安木屋場?」
「立神岩を触りに行ってんて」
「またマニアックな楽しみ方するな……」
「あそこの港から防波堤の上を歩いて立神岩まで行けるからね」
「で、どうだったの? 触ってみて」
「それが、岩の隙間からでっかいフナムシがうじゃうじゃでてきたから、もうキモくってそれどころちゃうかってんて。ギャーって慌てて逃げようとして海に落ちそうなったわ」
「すいません! 安木屋場の皆さん、ホンッとにすいません!」
「まあ、でもすごい神々しくはあったね。立神」
「まあな、シマ唄の歌詞にもでてくるけど、信仰のシンボル的存在だよ、立神岩って」
「あれ、不思議やねんけど奄美の集落で海に面しているところってだいたい立神岩あるやん? あれって狙ってやってるんやろか?」
「うーん、実際のところはわからないけど、昔の人がそういう土地に好んで住んだということは考えられるね。奄美って海の後ろがすぐ山だろ? だから昔の交通手段は船が一般的だったんだよな。そうすると目印として立神岩が見える場所に集落ができるのは不思議ではないもんな」
「酔っぱらって帰ってきて、たまにお隣さんと間違えたりするんやろか?」
「いや、マンションじゃないから! ただいまーって帰ってきたら隣の集落でしたー! とか、おっちょこちょいのレベルじゃないから!」
「ちなみにこないだ、サヤカちゃんと花火いったんよ」
「あ、そうなの? 知らなかった」
「リコちゃんはナナちゃんとデートやと思ったから誘わへんかった」
「いや、誘ってくれよ。あ、サヤカっていうのもウチの部員の泊清風のことね」
「すっごい上品やねんよ! 気品がにじみ出てる! リコちゃんに爪の垢天ぷらにして食わせたいレベル!」
「爪の垢煎じて飲ませたい、な。なんだよ天ぷらって。それで花火がなんだったの?」
「大熊っていう場所の展望台で見たんよ、花火」
「ああ、奄美祭りの花火か。あの打上花火あげる公園も読めないよ。『御殿浜』ってかいて『うどんばま』だから」
「あれ、ホンマに嫌がらせかと思うよね。内地人に『うどんばま』で待ち合せね~、なんていったら、一晩さまようで、マジで」
「ごめん、話そらした、それで大熊の展望台だっけ?」
「うん。ほんでね、展望台のそばで猫を見かけてん」
「ほう、猫を」
「大熊猫がおったんよ!」
「いや、なんか変になってる。奄美にジャイアントパンダがいる感じになってるから!」
「かわいいよね、大熊猫」
「奄美にパンダいてませんからね。ミドリ、あんまりクレームつきそうなのはやめてくれよ。あ、そうそう、ちなみに、奄美では猫のことを『マヤ』っていうって知ってた?」
「えっ? ホンマに?」
「犬と猫は『いんとぅまや』っていうのよ。カサリンチュの歌にもあるから聞いてみてね」
「では、ラジオネーム、南リコちゃんのリクエストで、いんとぅまやです! どうぞ!」
「流れない! 音楽用意してないから! しかもラジオネームが本名!」
「ちょっと~、段取り悪ない?」
「頼むからフツーに進行してくれ」
「ちなみに関西では阪神高速の神戸線に摩耶出口というのがあんねんよ。猫出口。猫ひろしみたいやね、にゃ~」
「あのカンボジア人な」
「あと真矢ミキって、猫ミキになるわけやね?」
「しかも奄美にミキって飲み物あるしね」
「あ、あたしミキ大好き! リコちゃん島人やのに飲めへんねんで」
「ほっといて。でもそう思うと、なんか真矢ミキさんに是非奄美に来てもらいたいね」
「猫カフェでミキのんで欲しいね」
「そういうわけで、今日もぼちぼち時間が差し迫ってきたわけですけど、もうちょっと奄美の魅力を発信できる番組を目指しません?」
「えー、結構魅力的に紹介してると思うねんけど?」
「具体的にどのへんを指してるのでしょうかね?」
「大熊猫あたり」
「デマ! デマ流したらダメだから!」
「奄美には猫いっぱいいるよ」
「確かに猫多いね。金久公園の近くで猫屋敷みかけたよ。でも今はその猫が山の中で繁殖しすぎて、奄美の独自の生態系を脅かす恐れがあるっていって、けっこう対策に乗り出してるんだって」
「へぇ! っていうことはやで。 そのうちに「猫」VS「マングース」のショーをやるお店が出てきたりすんのかな?」
「やらないから! 動物愛護団体からクレーム来るから!」
「そういうわけでそろそろエンディングの時間やから、きょうのまとめやねんけど」
「はいはい、どうぞ。好きにまとめちゃって」
「リコちゃんのこないだの漢字テストは55点でした。もう少しきばりましょう」
「なにさらっと人の個人情報流してるんだよ!」
――この番組は『シマ唄の未来を考える、奄民』奄美民謡研究部の提供でお送りしました。