4-14 再会2
拓海と胡桃の二人が山を登り始めて約一時間半。ようやく山の頂上に着いた。頂上は開けていて所々に花が咲いていた。拓海が周りを見渡すと三十メートル離れた場所にその場に座って花をじっと見つめながら左右に体をゆらゆらと揺れている真っ白な髪の女の子を見つけた。
(何やってるんだあの女の子?)
よく見るとその女の子の頭の上でぱたぱたと何かが動いていた。
(あれは……耳……か?)
拓海が呆然としているとついさっきエイプ三体と戦っていた胡桃が遅れてやってきた。胡桃は一足早く頂上に着いた拓海が呆然としているのを見て不思議に思いながら拓海に尋ねた。
「どうしたの? そんなところで突っ立ってさ」
「いや、あの子さ。一人で何やってるのかなって……」
「あの子……?」
胡桃が女の子を見ると一瞬驚いた表情を浮かべたと思ったら、笑顔になりその子に駆け寄っていった。
「志乃! 志乃だよね?」
胡桃が女の子の隣でしゃがんで声をかけると、女の子はゆっくりと胡桃の方を向いた。
「ん……? あ、るみちゃん久しぶり〜」
白い猫のような耳を持っているが顔は人間の女の子であるその女の子こそ、ギルドで会話していた時に胡桃の話に出てきた志乃という胡桃の昔からの友達であった。
(獣人……ではないのかな?)
不思議そうに拓海が志乃を見ている中、胡桃は志乃に尋ねた。
「あれ? パーティーを組んでるってギルドの人が言ってたんだけど一人?」
「ん……。はぐれた」
「あはは……。確かに相変わらずだね」
胡桃が苦笑していると志乃は拓海に向かって指を差した。
「あの人は……?」
「あ、紹介するよ! 今私と二人で冒険者のパーティーを組んでいる拓海だよ!」
胡桃に紹介されると、胡桃の隣に拓海もしゃがんだ。
「よろしくな! えーと、志乃さん?」
「志乃でいい……」
「わかった。よろしくな志乃」
「ん……。よろしく」
拓海が志乃と挨拶がてら握手していると少し離れた場所からモンスターの雄叫びと木が倒れる音が聞こえた。
「あそこにいる……」
志乃がそう呟くと、素早く立ち上がって胡桃を凌ぐ程の速さで雄叫びがした方に向かって駆け出した。拓海と胡桃も急いで志乃が走っていった後を追った。
再び木が生い茂る山に入って、志乃の後を追って三分ほど走り続けると木と木の間から三メートルほどの体長を持つ巨大な猿のようなモンスター、ジャイアントエイプが見えた。正面に誰かが対峙しているようだが、木が邪魔でよく見えない。拓海が木を避けながら走っていると、先頭を走る志乃が魔法を詠唱した。
「“ウインドソウル”」
詠唱が終わると同時に志乃の姿が煙のように消えた。そして、周りの草木を巻き上げながら突風が吹くと木々の間からジャイアンエイプを吹き飛ばす志乃の姿が見えた。
(何だ今の!? もしかして瞬間移動か?)
一足遅れるようにして拓海と胡桃の二人がジャイアンエイプの元に駆けつけるたのと同時にジャイアンエイプの鞭のような尻尾が志乃のパートナーであろう和風な感じのピンク色を基調にした服に黒い帯をした黒髪の女の子を弾き飛ばした。
「え?」
そして吹き飛ばされた女の子は駆けつけたばかりの拓海に直撃した。
「きゃっ!?」
「ぐはっ!?」
吹き飛ばされた女の子に激突され、勢いよく尻持ちをついた拓海は自分の尻をさすりつつ身体を起こして横に倒れている女の子に手を差し伸べた。
「いてて……。君、大丈夫……か……?」
拓海は目の前で身体をゆっくりと起こした女の子を見て、手を差し伸べたまま思考が停止した。
「いたた……。すいません、ありがとうござい……え?」
拓海と女の子の二人は目を合うとお互い目を見開いて驚いていた。そして女の子の目からぽたりぽたりと滴が落ち、女の子は涙を流し始めた。
「柑菜……だよな?」
「う、うそ……。お兄ちゃん? 拓海お兄ちゃん……だよね?」
驚きと戸惑いで呆然としている拓海の目の前には拓海がいた世界にいるはずの拓海の妹。桐生柑菜がそこにいた。
実は作者には妹がいません_(:3 」∠)_
実際、妹ってどんな感じなんだろ?




