4-13 再会1
依頼を受けた拓海と胡桃は冒険者ギルドの建物を出てからそのままメインストリートから脇道にそれて緑の葉をつけた木が生い茂る一、二時間あれば頂上まで登れてしまいそうな山に向かった。
二人は道中特にモンスターと出会うことなく山の麓についた。
「よし、それじゃ依頼内容を再確認するね! 今回の依頼内容は山の頂上付近にある希少な薬草『白癒草』の採取だよ」
「『白癒草』か……」
白癒草というのは大和とその付近の島の一部でしか採取出来ない真っ白な花びらが咲く薬草で、薬草から滲み出るエキスを飲むことで熱が引いたり軽い傷が治ったりと様々な用途で使う事が出来るものらしい。
「内容の確認も済んだし、行こうか」
「うん。私の後ろからついて来てね」
二人が歩き出したところで先頭を歩く胡桃が何か思い出したかのように立ち止まって拓海の方に振り向いた。
「今日は拓海は後ろで見ててね! 白癒草がないか探してね」
「了解。戦闘は任せるぞ」
「うん! 任せといてよ!」
それから二人が山を登り始めて三十分ほど経ったところで遠くの方で微かにモンスターの雄叫びが聞こえた。
「胡桃、今のは?」
「山のどこかで他の冒険者がモンスターと戦っているんじゃないかな? 今のは声的にAランクのエイプジャイアントだね」
胡桃の話ではエイプジャイアントというのは大和と大和の周りの島でしか生息していない巨大な猿のようなモンスターのことらしい。
「この森はエイプとエイプジャイアントの住処だから注意しないとね」
「そうだな……」
(大和特有のモンスターか……。この世界も地域によってモンスターの種類も変わったりするんだな。街に戻ったら冒険者ギルドでモンスターの資料でも見せてもらうかな)
そんなことを拓海が考えて二人が歩いていると前を歩く胡桃が突然、懐からクナイを二本取り出し勢いよく右上に向かって投げた。
「キキッ!?」
胡桃の投げたクナイの一つは木の上にいた体長一メートル程のエイプに突き刺さって木から落下させ、もう一つはそのエイプが投げてきた石礫を砕いた。全く気付かなかった拓海は胡桃を見て目を見張って思わず拍手していた。
「おぉ……色々と凄いな胡桃」
拓海の言葉を聞いた胡桃は得意気な顔をしていた。
「拓海も冒険者をしてればそのうちわかるようになるよ!」
「そういうものか……」
(いや、流石にこんなこと誰でも出来るようにはならんだろ)
そう拓海は心の中で胡桃にツッコミを入れた。
それから数十分、胡桃が遭遇したエイプを一掃しながら二人は山を登り続けるのだった。




