4-11 決意
「ーーーーはっ!?」
美琴の魔法により視界がホワイトアウトした胡桃が再び目を開けると目の前に正座した拓海が正座していた。
「気がついたようね」
声がした左隣を見ると美琴とルナと呼ばれていた女性が正座をしてこちらを見ていた。二人の顔には少し疲労が浮かんでいた。
「一応、私がやれることはしたわ。そのうち魔法だけじゃなくて霊気も使えるようになるくらいには回復すると思うわ。ただーーーー」
「ただ?」
「拓海君の心の世界は回復しても、あそこにいた龍がどれだけ回復するかはわからないわ。それは拓海君の……。まあ、自分次第ってところよ」
胡桃は美琴が言葉を濁したことに疑問を持ち、首を傾けて不思議そうにしていると、正面に正座していた拓海がゆっくりと目を開けた。
「ーーーーん? お、おぉ! さっきまで身体に詰まっていた何かがとれたみたいだ!」
(身体が軽いし、魔法も前みたいに使えそうだな……。一体何をしたんだ?)
目を開けて自分の身体の変化を感じて一人喜んでいる拓海の様子を美琴とルナは微笑んで見ていた。
「拓海君。いくら調子が少し良くなったからといっても、まだ魔法の使用もほどほどにね」
「了解です。本当にありがとうございました」
「ふふっ、ルミエールさんと可愛い胡桃の頼みだからね」
「え? 胡桃の頼み?」
胡桃から何も聞いていない拓海は驚きながら胡桃の方を見ると頰を赤く染めた胡桃があたふたしていた。
「うぅ……秘密って言ったのに……。ル、ルミエールさんは何て手紙に書いたの美琴お姉ちゃん?」
「ふふふ、久々にお姉ちゃんって呼んでくれたわね胡桃。そうね……。ルミエールさんは胡桃に泣きながら頭を下げて頼まれたって書いてあったわよ?」
「泣きながらって……。そんなことがあったのか胡桃?」
「わ〜!? わ〜〜〜〜!?」
美琴に向けていた視線を再び胡桃に戻すと顔を真っ赤にした胡桃は自分のマフラーに顔を埋めて両手で顔を覆って俯いて恥ずかしそうに身を震わせていた。
「ふふっ、何か安心したわ。少し前まで胡桃は一人で塞ぎ込んでたって聞いてたからさ」
「胡桃ちゃんのことかなり心配してたもんね美琴は」
胡桃はまだほんのりと赤い顔をマフラーから上げるとふと気になっていたことを尋ねた。
「そういえばルナさん? と会うのって私も初めてだよね?」
ルナはキョトンとした表情を浮かべ、少し考えると一人納得したように頷いて話し始めた。
「まあ、実際この姿で会うのは初めてかもね」
「この姿?」
「私は昔、美琴と契約を交わした光の大精霊よ。昔は今みたいに人間の姿でいたわけじゃなくて、美琴の心の世界にいたからね」
「えっ!? ルナさんって精霊なの!?」
「そうだよ。昔から美琴の心の世界から貴方達兄弟のことも見てたよ」
それからルナと胡桃がわいわいと話し始めたのを見た美琴は拓海のそばに近寄りそっと耳打ちした。
「胡桃のことよろしくね拓海君」
「え?」
拓海は美琴の方を振り向いたが既に部屋からいなくなっていた。
拓海は一つ息を吐くと楽しそうに談笑している胡桃の横顔を見つめた。
(よろしくね……か。今度マルコシアスみたいにどうしようもない敵が現れたら俺は胡桃を守ることが出来るのかな? そもそも俺より胡桃の方が強いしな……)
拓海は自分の拳を握りしめ、もっと強くならないとと一人決意を固めるのだった。




