4-9 大和の姫巫女
大和の飲食店で朝食を食べ終えた拓海と胡桃は大和の中心にある胡桃の家よりさらに大きい屋敷に来ていた。
「立派な屋敷だな……。それで、ここに住んでいるのか?」
「うん! ここだよ!」
拓海を先頭に屋敷の入口であろう大きな門まで歩いて行くと傍に立っている二人の門番のうち年を取っている一人に拓海は引き止められた。
「君、用件は何だ? 見ない顔だが……」
「えっと……」
ルミエールに貰った紹介状を出そうとマジックバックを探っている拓海の後ろからついてきた胡桃がひょっこりと拓海の背後から顔を出した。すると門番が胡桃を顔を見て驚いた顔をしてから急に態度が変わった。
「これはこれは、剣聖様の妹の胡桃様ではありませんか! 今日はどういった御用で?」
「あはは……。えっと美琴様への面会に来たんだけど会えるかな?」
門番は少し難しそうな顔をして唸った。
「通して上げたいのは山々なんですが、今は正式な何かがないと厳しいですね……」
「それなら拓海……この連れの男の人が持ってるよ! 正式な紹介状!」
紹介状を自分のマジックバックから見つけた拓海は門番に見せると、その紹介状を見た門番は驚いて紹介状と拓海の顔を交互に見ていた。
「少々お待ち下さい。美琴様に確認をとってきます」
一人の門番が屋敷の中に入って行った。残った一人の若い門番はいそいそと胡桃に近づき声をかけた。
「いやぁ……いつの間に大和に帰られたんですか? あ、今度一緒に食事でもどうですか?」
「あ、あはは……。昨日帰ってきたばかりだよ。食事は申し訳ないけど遠慮しておこうかな……」
突然迫られた胡桃は顔を引きつらせながら男の誘いを断っていた。
(門番がナンパって……。胡桃って、やっぱり人気あるんだな)
誘いを断られて、がっくりと肩を落とした若い門番に拓海は何故か物凄い形相で睨まれた。
(俺あの人を怒らせるようなことしたか……?)
拓海が睨まれているのを気づいていないふりをしてしばらく待っていると、年を取った方の門番が屋敷から帰ってきた。
「客間に案内します。ついてきて下さい」
屋敷の中に入って門番の後ろについて歩きながら外を眺めると、やはり大和の偉い人が住んでいる屋敷なだけあって屋敷の庭は綺麗に手入れされていた。
(何か日本の観光スポットみたいな感じだな……)
拓海は屋敷の庭を眺めながら一人で関心していると畳が敷き詰められた大きな客間に案内された。二人を客間まで案内した門番は一礼をして去っていった。案内された二人は部屋に置かれた二つの座布団の上に腰を下ろした。
「そういや、胡桃って今から会う人と面識とかあるのか?」
「うん! 最近会ってないけど、昔はよく遊んでもらったよ! うーん、そうだなぁ……。私からしたらお姉ちゃんって感じかな」
「ふふふ……。嬉しいこと言ってくれるわね胡桃」
突然二人の背後から声がして、拓海と胡桃の二人は驚きながら勢いよく後ろを振り向いた。そこにはいつの間にか巫女装束を身につけた一人の綺麗な長い黒髪の女性が微笑みながら立っていた。
「ふふ、胡桃は久しぶり。そちらの男の子は初めましてだね。私が現大和を統治する姫巫女の神代 美琴よ。よろしくね」




