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異世界に導かれし者  作者: NS
第4章 新たな地『大和』へ
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4-1 旅立ち

第4章スタートです!

 アストレアの防衛戦から二週間経った。この二週間の間では戦いで戦死した冒険者を弔う葬式のような事が行われ、戦いで負傷したほとんどの人達が無事治療所から退院したようだ。


 そして、二週間前死傷者がたくさん出た大規模な戦いがあったというのに、やはり大きな街なだけあって既にアストレアの街はいつも通り賑わっていた。


 そんな中、昼頃アストレアの街の入口にはアストレア聖騎士団の鎧を身につけた二人の男女と一人のエルフの女の子、そしてマジックバックを背負った二人の男女が立っていた。



「随分と世話になったな二人共。道中危険なモンスターが出るようなことはないだろうが気をつけて行けよ!」


「二人共、防衛戦の時といい色々助かったわ。ありがとね」



 ロイとシルフィの二人は笑顔で拓海と胡桃に感謝の言葉を送った。アストレアの防衛戦で瀕死だったロイとシルフィの二人は無事意識を取り戻し、一人で歩くことが出来るくらい回復していた。



「こちらこそ、世話になったな。アストレア聖騎士団の皆にもよろしく伝えといてくれ」


「私達はやれることをやっただけだよ! またね、二人共!」



 二人との別れの挨拶をしたところで一人のエルフの女の子、アイリスが俯いて寂しそうな表情を浮かべながら拓海と胡桃にゆっくりと歩いて近づいてきた。



「アイリス……!!」



 俯いて元気がなさそうなアイリスを見た胡桃は我慢出来ず、涙を浮かべながらアイリスに抱きついた。ずっと寂しそうな表情を浮かべていたアイリスは抱きついてきた胡桃を見て、ようやく少し笑顔を見せた。



「胡桃さん……。あなたは私が里を出て初めて出来たお友達であり、冒険者の依頼を一緒にこなしてきた大事な仲間です。今まで本当にありがとうございました」


「また……会えるよね?」


「私から会いに行くのは多分不可能ですが、エルフの里に遊びに来て下さればきっと会えますよ」



 アイリスと胡桃はより強くぎゅっと抱き合って二人が別れるとアイリスは拓海の方を向いた。アイリスの顔をよく見てみると、目の周りが少し赤くなっているのがわかった。そして、アイリスは涙を流すのを堪えて必死にぎこちない笑顔を浮かべた。



「アイリス、今まで本当にありがとうな。一緒に話してて楽しかったし、アイリスには依頼以外の事でもたくさん助けられたな。里に戻っても元気でな。アイリス」


「はい……」



 すると小さく返事をしたアイリスの頰を一筋の涙が伝った。



「アイリス……」



 そして、我慢していたものが一気に溢れ出したように大量の涙が流れ始めた。



「あ……あれ? お、おかしいですね……。最後まで泣かないって決めてたのに……」



 アイリスは流れ出る涙を必死に抑えようと目をこすっていた。そんな様子を見た拓海は目を伏せると、アイリスを抱き寄せた。



「拓海さん……?」



 すると、拓海はアイリスの頭をそっと撫で始めた。



「ごめんな。こんな時何て言葉をかけたらいいかよくわかんなくてさ……。柑菜……妹を慰めてあげる時に頭を撫でてあげると何故か喜んでたから、ついね……」



 頭を撫でられたアイリスは気持ちよさそうに目を細め、拓海のことを見上げた。



「ふふ、妹さんの気持ちが少しわかる気がします!」


「ん? そうか? それなら良かったよ」



 拓海がアイリスを撫でるのをやめるとアイリスは一歩後ろに下がり拓海を見つめた。その顔にはいつものアイリスの笑顔が浮かんでいた。



「もう大丈夫です! 拓海さん、お元気で!」



 アイリスは拓海にそう言葉をかけ、拓海達に背を向けて一歩進むと突然立ち止まった。



「あ、そうだ」



 アイリスは何かを思い出したかのように呟くと拓海の方に振り返った。



(ん? 何か言い残したことがあったのか?)



 そんなことを考えている拓海の目の前に振り返ったアイリスは駆け寄った。



「大好きです! 拓海さん」



 拓海の頰に何か柔らかい感触がした。そして、駆け寄ってきたアイリスが少し背伸びして自分の頰にキスしているのにようやく気づいた拓海は顔が赤くなり頭の中が真っ白になった。



「な、な、な……!?」



 拓海にキスをしたアイリスは拓海から離れ一歩後ずさると今まで見てきた中で一番嬉しそうに笑顔を浮かべた。



「ふふっ! いつか元の世界に戻っても、私のこと忘れないで下さいね!!」



 その一連の様子を見ていた胡桃は目を見開いて、口をパクパクしながら驚いていた。ロイも胡桃と同じような状態になっていて、シルフィは頰を染めて口元を抑えて何故か恥ずかしそうにしていた。


 その後、拓海と胡桃は三人と別れアストレアを出発した。歩き始めた、拓海は自分の頰に触れると、まだアイリスの柔らかい唇の感触が残っている気がした。



(……こんなことされて忘れるわけないだろ。元気でな……アイリス)



 拓海は一人苦笑を浮かべながらどこか上の空な様子の胡桃と視界に広がる草原に歩を進めた。

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