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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-34 防衛戦を経て


「ーーーーん……」



 目を開けると真っ白な天井がぼやけた視界いっぱいに広がっている。


 そのままの体勢で何度か瞬きを繰り返し、腕で目を擦ると次第に視界がはっきりとしていく。



「ここは……?」



 起きたばかりで脳がまだ働いていない拓海はゆっくりと身体を起こすと、自分がベットで寝ていたことに気づいた。


 辺りを見渡すと、部屋には拓海が寝ていた他にもベットが置かれていた。どうやらここは以前何回か訪れたことがあるアストレアの治療所のようだ。


 そこでようやく、何故自分がここにいるのかということと、アイリスが自分を庇って血に塗れで意識を失ってしまう光景が脳内に浮かびあがた。



(俺は……俺を庇ってアイリスが……)



 拓海が脳内に焼き付いて離れないアイリスや他の皆が血塗れで倒れている光景を思い出して、一人頭を抱えて青ざめていると、患者の巡回をしている治療所の女の人が二人部屋に入ってきた。


 そして二人は拓海を見て驚いた顔をすると一人は何かを指示を受けて慌てて部屋を出て戻っていき、一人は心配そうな表情で拓海に近づいてきた。



「桐生さん、気分が優れないように見えるのですが少し横になってはいかがですか?」



 声をかけられた拓海は一瞬身体を震わせると、恐る恐る顔を上げて治療所の女性の両肩に掴みかかって尋ねた。



「皆は……アイリスや胡桃達は無事なのか?」



 治療所の女性は一瞬驚いたが、不安で青ざめ表情を浮かべる拓海の顔を見て口元に笑みを浮かべて優しい口調で答えた。



「アイリスさんは桐生さんと同時に運ばれてきた金髪のエルフの女の子ですよね?」


「は、はい。多分そうです……」


「彼女は目立った外傷が無く二日前に意識が戻って退院しましたよ。胡桃さんはあの夜から一日で目を覚ましてしばらく安静にしてから退院しました。あと、丁度少し前に二人がここに来てあなたの様子を見に来ましたよ」



 拓海は治療所の女性の言葉に、自分の耳を疑った。



「ちょっと待って下さい。少し混乱してて……。まずあの夜の戦いはどうなったんですか?」


「えっと……そうですねーー」



 治療所の女性の話を聞くと、ここに拓海が無事運ばれていることからも分かるように冒険者達はモンスターの大群から何とかアストレアの街を守る事に成功したようだ。そして拓海はあの夜から三日意識を失っていて、現在拓海が目覚めたのはあの夜から四日経った昼らしい。


 色々気になることはあったが、目の前でマルコシアスに殺されかけた仲間が生きていたこと、何とかアストレアを守り切れたことに安堵し、自分がかなりの長時間眠りについていたことに衝撃を受けていた。



(まじか、そんなに長い時間意識を失っていたのか俺は……)



 先程より表情が明るくなった拓海が次の質問をしようとすると、部屋の扉が音を立てて凄い勢いで開く。



「っ!?」



 拓海が扉に目を向けると、そこには相当走ってきたのか息を切らした胡桃とアイリスが立っていた。


 そして二人が拓海と目が合い、無事意識を取り戻した姿を確認すると胸を撫で下ろし感極まった表情を浮かべて目の端に涙をためて近づいてきた。



「よかった……本当に。皆、心配してたんだよ? このまま意識を取り戻さなかったらどうしようってさ」


「本当に、本当によかったです……」



 自分に抱きついて泣きじゃくる二人に戸惑いながらも、とりあえず拓海は治療所の女性に礼を言い、席を外してもらった。


 そして治療所の女の人が部屋を出ていったのを確認し、拓海は一度二人に心配してくれてありがとうと礼を言ってからなだめて、二人が落ち着きを取り戻してから質問をした。



「アイリス、本当に大丈夫なのか? さっきの人がアイリスが運ばれてきた時目立った外傷がなかったて言ってたんだけど……」


「あ、そのことですか」



 拓海の質問を受けたアイリスは、背中から自分の先についた宝石が砕けた杖を取って拓海に見せた。



「胡桃さんの話ではこの宝石から金色の光が出て、私の傷を治したようです。この杖……家から勝手に持ち出してきた物だったんですけどね」



 アイリスは杖を撫でながら、複雑そうな表情を浮かべていたが拓海は胸を撫で下ろした。



「そっか……。まあ何はともあれ二人が無事で良かったよ。あとロイとシルフィさんは大丈夫か? 一応無事だってのは聞いたんだけど」


「あの二人も何とか一命をとりとめたよ。暫くは絶対安静って言われてたけどね。それと拓海に伝言があるんだけど……。まあ、順を追って説明するね」



 その後、胡桃があの夜に目にした事を全て教えてもらった。自分の記憶が途切れてから大量の霊気を放出させながら戦っていたことなど俄かに信じ難いが、今自分が生きていることや胡桃が嘘を言うとは思えないので無理矢理納得することにした。


 また胡桃はマルコシアスを撃退したアストレア聖騎士団の団長であるルミエールから拓海への伝言を頼まれたらしい。



「団長さんが拓海が目を覚ましたら、一人で自分の部屋に来いだってさ」


「ルミエールさんが? わかった」



(ちょうど俺も聞きたい事があったからな……)



 それから胡桃とアイリスとの会話を終えた拓海は治療所の受付で退院の手続きを済ませてルミエールに会いに行く前に三人で昼食をとりにアルカディア城の酒場に足を運ぶのだった。

中々良い感じのサブタイトルが思いつかない……。

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