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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-31 魔将6

第3章が当初の予定より長引いてる……。


「ーーえ?」


 拓海は死を覚悟し思わず目を閉じてしまったが、マルコシアスの大剣が振り下ろされた瞬間拓海の身体は何かに突き飛ばされ、マルコシアスの大剣は拓海に当たることはなかった。



「よ……よかった……間に合った……」



 聞き覚えのある声がすぐ近くで聞こえ、拓海は恐る恐る目を開けた。



 倒れた拓海に覆いかぶさるように折角新調した防具は血と土で汚れてボロボロに気付いている。口からは血が滴り、全身傷だらけで呼吸するのも苦しそうなアイリスがいた。


 苦悶の表情を浮かべ、半目のアイリスは力なく拓海に倒れ込んでしまう。



「ア、アイ……リス? なんで……」



 慌てて身体を起こしてアイリスを支えた拓海がモンスターの大群の方を目を向けると、誰かが強引に大群を突破した後が見える。アイリスが拓海達が突破してきた空間を利用して一人で無理矢理ここまで来ていたようだ。


 するとアイリスは拓海の腕の中で喋るのも辛そうな表情を浮かべ、必死に絞り出すように言葉を紡いだ。



「はぁ……はぁ……胸騒ぎが……収まらなくて……二人が……心配で……」



 拓海は手に何かがべとりと付くのを感じて、背筋に嫌な汗が伝うのを感じた。

 アイリスの背中に触れた手を見るとその手が真っ赤に染まっているのに気が付いた拓海は目を見開いて、アイリスを抱き寄せて背中に目を向けると真っ白だった装備は背中に一直線に切れていて、そこから血が止まることなく溢れ出して真っ赤に染まっている。


 アイリスは拓海の代わりにマルコシアスの大剣の一撃を受けてしまったのだ。


 思考が停止し、目の前の現実が受け止められない拓海は震えた声で呟いた。



「う、嘘だ……」


「拓海……さん……。生、きて……」



 アイリスは吐血しながらも拓海にそう微笑みながら言い残すと身体から力が抜けて半目から覗く瞳からは完全に光が消えてしまった。


 そんな二人のやり取りを腕を組んで傍観していて、アイリスから完全に力が抜け落ちたのを確認したマルコシアスは拓海に声をかけた。



「最後の会話は終わったか? 今度こそトドメをさしてやろう」



 そして、ゆっくりとマルコシアスは大剣を拓海に向かって振り上げる。


 空からは雨が音を立てて降り始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「俺は自分にとって大切な人達を守れるようになりたいな」



 これはいつしか妹の柑菜に将来の夢を聞かれた時に拓海が返した言葉であり、今もその夢は変わっていない拓海の夢、というより目標、信念である。


 しかし、実際はどうなのだろうか。拓海はついさっき大切な人の一人であるアイリスに守るどころか守られ瀕死の状態に陥っている。



(守れてないじゃないか……。何も……)



 血まみれで倒れて、ピクリとも動かないアイリスを見て、無意識のうちに拓海の目から一筋の涙が頰を伝う雨の雫に混じりながら流れた落ちた。



(そうか……俺には力が足りない……。全てを守れるような圧倒的な力が。力さえあれば。力さえあればこんなことには……力が欲しい……)



 心臓の鼓動が一際大きく鳴り響く。


 そして拓海の目から光が消え、何かが壊れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 マルコシアスは振り上げた大剣を思わず止めてしまった。それは目の前の少年、桐生拓海から突然凄まじい量の銀色のオーラが溢れ出てきだからだった。



(何だ……。この凄まじい魔力の高ぶりは……)



 拓海はゆっくりとその場を立ち上がってマルコシアスの方を振り向いた。振り向いた拓海の両目からは銀色の光がゆらゆらと揺らめいていて、全身からは銀色のオーラが異常なまでに溢れ出し大気が揺らぐ。


 そしてマルコシアスの方を向いた拓海がゆらりと横にふらついた瞬間拓海はその場から一瞬で消えた。



「む!?」



 突然消えたと思われた拓海はマルコシアスの真後ろに煙のように現れ、どこから取り出したかわからない白銀に輝く刀を目にも留まらぬ速さで振り下ろした。


 拓海の気配を察知したマルコシアスは振り返りギリギリ大剣で拓海の刀を受け止めたが、あまりの威力に後方に跳んで衝撃を殺す。


 無言でマルコシアスの方を向き、刀を地面に引きずりながらゆっくりと歩み寄って近づく拓海の姿を見たマルコシアスはさっきまでとは比べ物にならないほどの覇気を放出し、大剣を構えると嬉々とした声を張り上げた。



「面白い! 我も少し本気を見せようか! “アビス・イロアス”!」



 ーーーーアストレアの防衛戦、現在冒険者側の後衛隊にも負傷者が出始め劣勢。冒険者側の指揮官ロイ、シルフィは瀕死の重症ーーーー

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