3-28 魔将3
冒険者達の怒号や悲鳴、モンスターの悲鳴や絶叫、魔法による轟音が絶えず響き渡っていた。
聖都アストレアの外は既に地獄絵図のようになっていた。一体一体のモンスターはそこまで強力なモンスターは今のところいないが、複数のモンスターに囲まれてそのまま抵抗する間も無く殺されてしまった冒険者と数々のモンスターの死体やそれらから流れ出る血が草原、地面を赤く染め上げていて鉄臭い匂いが辺り一帯に充満している。
そんな中、最前線で一人魔法を使いながら細剣を振るい迫り来るモンスターを圧倒しているシルフィは小さく舌打ちをして二体のジャイアントゴブリンの攻撃を素早くバックステップして避けながらも、今の状況に少し焦りを覚えていた。
(くっ……数が多すぎる!? このままでは私達だけではもたないぞ)
すると焦りを感じつつも気を緩めず戦い続けるシルフィの隣に、返り血で装備がところどころ赤く染まった一人の少女が、周りのモンスターを切り飛ばしながら走り寄ってきた。
「シルフィさん! このまま受け身では押し切られます。この大群を率いているリーダーを倒しましょう! 既にロイさんと拓海がリーダー格を探しにモンスターの大群の中に入っていきました。私達もいきましょう!」
「ロイと拓海君か……。そうね、このまま突っ切るわよ!」
返事をしたシルフィは集中力を切らすことなく細剣を振るい目の前にいた三体のゴブリンに急所である首にそれぞれ一突きいれて絶命させると、二人はモンスターの大群の中に入り込んでいくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、死の森では湖から森を出ようと森の入口まで辿り着いたモーガン達は強力な結界により死の森に閉じ込められていた。
「くそっ! こちらが罠だったとはな……。しかし、何なんだこの結界は? 俺とアークが全力で攻撃しても壊れないとはな」
モーガンがイライラしながらそう呟くと隣にフィーネが歩いてきた。
「私も試したけど、単純に攻撃を仕掛けても壊れないね。でも、私達の中で重傷者が出なくてよかったね。治療も出来なかっただろうからね……」
最後ゴブリンロードの大爆発はモーガンが咄嗟にゴブリンロードの近くにいた人達全員に強力な防御障壁を発生させる『ランパート・プロテクション』の魔法をかけたお陰で何とか全員無事だった。モーガンの魔法がなかったら最悪死人が出ていたかもしれない。
「俺達で破壊出来ないような結界を作る敵と考えると相手は相当強いぞ……」
モーガンは悔しそうに歯を食いしばって、爪が手の平にめり込み血が出るほど強く拳を握りしめていた。
(くっ、あの人が気づくのを待つしかないのか!? 頼む、持ちこたえてくれよ……)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アイリスは街の入口付近で光属性の魔法を使い最前線で仕留めれなかったモンスターを迎撃していた。
そして街の入口に向かって走ってきた黒い狼のモンスターを光魔法で仕留めたアイリスはふと拓海達が心配でモンスター達の進行を食い止めている最前線の方を探してみると、ちょうど拓海がロイと共にモンスターの大群の中に入っていくのが視界に映った。
すると突然動悸が激しくなる。モンスターの中に消えていく拓海がそのままどこか遠くに、もう会えなくなるのではないかと根拠は無いが不安が心の中で大きくなっていき、アイリスは胸の辺りを押さえて表情を曇らせた。
(何だろう……。すごく胸騒ぎがする……。拓海さん、胡桃さん……どうかご無事で)
ーーーーアストレアの防衛戦、現在冒険者側がモンスターの圧倒的な数に押され始めやや劣勢ーーーー




