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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-27 魔将2

 急いでアルカディア城を出た拓海達三人はいつも寝泊まりしている宿のそれぞれの部屋に置いてある装備を持って、宿の外に集まっていた。


 拓海が辺りを見渡すと既に街を出歩く人は一人もいなくなっており、街には準備を急かす怒号が飛び交っていて装備を整えた冒険者が次々とアストレアの入口に向かって走っている。



「俺達も行こう!」


「うん!」


「はい!」



 そして拓海達は三人が揃うと、拓海の声に胡桃とアイリスが返事をしてアストレアの入口に向かって走り出した。


 入口に着くと既に、アストレアに残っていたロイとシルフィを先頭にしたアストレア聖騎士団と百名以上のアストレアに残っていた冒険者達は臨戦態勢になっていた。



(凄い人数だな……。こんなに人数がいたら何が来ても何とかなりそうだけど)



 拓海が想像以上に集まった人数に驚いていると、そんな拓海の様子を見た胡桃がそっと耳打ちした。



「これだけ人がいるからって絶対に油断しちゃ駄目だよ」



 それを聞いた拓海は胡桃の言葉に頷き胡桃の方にそっと目を向けると、流石何年も冒険者をやっているだけはあり、落ち着いてはいるがいち早く敵の発見をするため遠くを見つめるその目付きと立ち振る舞いからかなり集中しているのが感じられる。



(俺も集中していこう……)



 拓海も呼吸を整えて、集中力を高めていると後ろから突然手を握られ驚いて振り返ると、心配そうな表情を浮かべるアイリスが微かに震える両手で自分の手を握っていた。



「しばらくこうさせて下さい……」


「おう」



 冒険者になってまだそこまで時間が経っていない拓海にはアイリスが感じている恐怖、不安が伝わってきた。それは当然自分も感じていることで、アイリスと手を繋ぐことで自分も少しはそういった感覚が和らぐから拓海は短く返事をして手を握り返した。



 そして拓海達がこの場に来てから数分。


 遂にその時がきた。



 いち早く異変に気付き、普通の人より夜目が利く胡桃が声を張り上げた。



「モンスターとの距離約五百メートル! もうすぐ皆が見える位置に来るよ!」



 周りに更に緊張感が走り萎縮する者も出る中、胡桃の声を聞いたシルフィは息を吸い込み、他の冒険者達に声を張り上げて指示した。



「遠距離魔法が得意な者は敵が見え出したら、すかさず撃て! 遠距離魔法が放たれるのを確認したら近距離攻撃の得意な冒険者は一部は遠距離攻撃を得意とするものの護衛、残りはモンスターに接近し、撃退しろ!!」



 するとシルフィの掛け声を聞いた他の冒険者達は雄叫びを上げて応えてみせ、士気が一気に高まるのを感じた拓海は息を飲んだ。



(すごいな……シルフィさん)



 拓海が感心していると、それから一分も経たないうちに遠くの方から何十体ものゴブリンと複数体のジャイアントゴブリンをはじめとするその他多数のモンスターが見え始めた。



「今だっ!! 放てぇぇぇ!!」


 

 モンスターの大群を前に何名か腰を抜かしているが、シルフィの掛け声と共に遠距離魔法の使える冒険者達が魔法の詠唱を開始して様々な色の魔方陣が次々に宙に浮かび上がる。


 そして次の瞬間。風、火、水などの様々な属性の魔法が次々に空高く打ち上げられていき、流星の如くモンスターの大群に轟音と共に次々に直撃していき、モンスターの悲鳴が耳が痛くなる程響き渡ってくる。



「狼狽えるな! 俺達の手でアストレアを守りぬくぞ!!」



 耳が痛くなるような大音量のモンスターの悲鳴や絶叫の中、ロイの号令と共に拓海や胡桃を含む近距離攻撃が得意な冒険者達は自分を奮い立たせようと、雄叫びを上げながら一斉にモンスターの大群に向かって走り出した。


 そして拓海が百メートルほど走ったところで、四体の斧や短剣を持ったゴブリンと黒い狼のようなモンスターが一斉に拓海に襲いかかってきた。


 そんな中拓海は落ち着いて長剣を抜き放ち全身にオーラを纏うと、落ち着いてゴブリン達の攻撃を避けながら剣でその身体を両断していった。


 拓海が四体を難なく斬り伏せると、他の皆は大丈夫かと周りを見渡した。


 するとロイとシルフィがモンスターの大群に向かって強力な魔法を放っているのが見えた。



「“エア・スプレイド”!」


「“セイントアーク”!」



 ロイの剣を振りかざすと広範囲に強力な魔法の風が放たれて、前方のモンスターが一気に斬り刻まれ吹き飛んでいく。


 シルフィの方は前方五メートルくらいに一つの光の小さな球体が発生し、光の球体が一度強い光を発すると周りにいたモンスターが次々と光に吸い寄せられ消滅していった。


 その圧倒的な魔法の力に拓海は息を飲んだ。



(あれが二人の本気か……。やっぱりすごいな)



 そして拓海が二人の戦いに見とれていると、後頭部に突然衝撃が走った。



「いてっ!?」


「こら拓海! 戦場で余所見しない! “ダークウィズドロー”!」



 拓海の後頭部を叩いた胡桃は拓海の頭上で一回転しながら飛び越えて、いつの間にか距離を詰めてきていた三体の狼型のモンスターを一瞬で切り飛ばした。



「まだまだ来るよ! 油断しないで!」



 拓海にそう言い残した胡桃は目にも止まらぬ速度で冒険者達が倒し損ねてアストレアに向かったモンスターを次々と倒しにいくが、次々に湧いてくる想像以上の魔物の数に胡桃は表情を曇らせた。



(これじゃあキリがないよ……。だけど、これだけのモンスターの大群だから絶対どこかにリーダーがいるはず!)



「“アイシクルレイン”!」



 胡桃がモンスターを倒しながら敵将を探そうと考えている一方、拓海が前方の上空から大量のつららを落としてモンスターに攻撃していると突然近づいてきた険しい表情を浮かべたロイが拓海に声をかけた。



「拓海! お前も来い! 大群のリーダー格を探しに行くぞ!」


「了解!」



 返事を返した拓海は目の前の武器で防御姿勢をとったゴブリンを防御の上から斬り飛ばし、ロイと共に大群の中に入り込んでいくのだった。



 ーーーーアストレアの防衛戦、現在冒険者側が優勢ーーーー

 

 

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