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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-26 魔将1

 死の森で戦闘が行われている中、拓海達三人はアルカディア城のギルドの受付兼酒場である三階で夕食をとっていた。


 胡桃が切り分けた肉を食べている隣で、アイリスが満面の笑みを浮かべて同じく肉を頬張っていた。



「本当にアイリスは美味しそうにご飯を食べるね〜」


「ほ、ふぉーれすは?(そ、そーですか?)」



 一足早く食べ終わった拓海はそんな二人のやり取りを見て笑っていると、ふと胸騒ぎがして一人心配そうに呟いた。



「モーガンさん達は大丈夫かな?」



 そんな拓海の心配そうな呟きに丁度食べ終わった胡桃は、元気づけようと明るい声で答えた。



「大丈夫だよ。アストレア聖騎士団の副騎士団長二人にSランク冒険者が数人いるんだからゴブリンロードが何体いても勝てると思うよ! それにモーガンさんは今SSランク冒険者の中で最もSSSランクに近い力を持っているとも言われてるからね〜」


「そっか。まあ、そうだよな……」



 その胡桃の言葉に拓海は安心するとグラスに入った飲み物を一気に飲み干して、切り替えて話題を変えた。



「そうだ、いつアストレアを出発しようかな? 一応アストレア聖騎士団の人達に一言挨拶してから行きたいからな……」


「ん〜、とりあえずゴブリンロードの討伐作戦が終わって一息ついてからで良いんじゃないかな? アイリスはどう思う?」



 するとアイリスはビクッと身体を震わせ、笑みを浮かべて答えたがその笑みにはどこか陰りが見えた。



「それで良いと思いますよ! あ、あの……ちょっと二人には伝えておきたいことがあるのですが……。いいでしょうか?」


「ん? どうした?」



 拓海と胡桃は、一息ついてから真剣な表情になり、珍しく改まって話そうとするアイリスを不思議そうな顔で見つめる。


 そして二人の顔を一瞥したアイリスは一度深呼吸してから、暗い表情で話し始めた。



「私、実は村を勝手に飛び出して来たんです」



 突然のアイリスのカミングアウトに拓海は目を丸くした。



「え? 家出ってことか?」


「でも、アイリスくらいの年齢で一人立ちなら別に珍しくはないんじゃない?」



 そんな胡桃の言葉にアイリスは少し困ったような表情をしてから、覚悟を決めたような顔をしてゆっくりと話し始めた。



「私はエルフの王族なんです」



 そのアイリスの言葉に一瞬胡桃は口を開けたまま固まってしまい、すぐに首を振って慌てた様子で小声で尋ねた。



「え、ちょ、それ本当なの? ここにいるのがバレたら速攻で連れ戻されるんじゃない!?」



 アイリスは膝に置いた手で服を強く握って、俯いてしまいながらも答えた。



「ええ、そうですね。でも、まさか私が冒険者をしているとは夢にも思ってないでしょうからね……。今頃エルフの村に一番近い魔法都市ソーサリーでも探し回ってると思います」



 拓海が話に全くついて行けずに目を白黒させていると、そんな二人の顔を名残惜しそうに交互に見つめてアイリスは寂しそうに二人に笑いかけた。



「流石にこれ以上村の方々を心配させることは出来ません……」


「アイリス……」



 綺麗だが不安を感じさせる、そんな不安定な表情を浮かべるアイリスに胡桃は名前を呼ぶことしか出来ず、拓海はかける言葉を見つけることが出来ずに黙って耳を傾けていた。



「私は大和には行かず、一度村に戻ります。残念ですけど、お二人とはここでお別れになりそうです……」



 アイリスから突然の別れを告げられ拓海と胡桃が固まっていると、その重い空気を壊すかのように酒場に一人の男が慌てて走り込んで来た。


 突然勢いよく走り込んできた男に酒場にいた人達は何事かと男の方に注目していると、切羽詰まった様子の男に一人のギルドの受付嬢が受付から出てきて小走りで近づいた。



「どうしたんですか? 一度落ち着いて下さい」



 心配そうに顔を覗き込んでくる受付嬢の言葉に息が荒く、肩を上下に揺らしている男は落ち着く間もなく口早で叫ぶように話し始めた。



「大量のモンスターが突然アストレア周辺に現れたんだ! あと十分くらいでアストレアの入り口まで来ちまうんだ! 助けてくれぇ!!」



 その話を聞いた受付嬢は血相を変えて急いで受付の奥の方に走っていき、酒場では男の言葉にどよめきが起こり始めた。


 それは拓海達も同じで、拓海は動揺しながら胡桃に尋ねた。



「な、なあ。アストレア周辺に突然大量のモンスターが現れたって……。そんなに急にモンスターが現れるものなのか?」


「突然過ぎて状況がよくわからないね……。申し訳ないけどアイリスの話はまた後でしましょ。今は緊急事態っぽいからね」



 表情が優れないアイリスが頷くと、拓海は突然頭の中に見知らぬ男の言葉が入り込んでくる感覚を覚え、目を見開いた。テレパシーのような魔法だろうか。



(アストレアにいる冒険者達に緊急依頼だ。数刻前にアストレア周辺に突然大量のモンスターが現れた。原因は不明だ。君達には今すぐアストレアの入り口に行きアストレアにモンスターが入ってこないよう防衛してもらいたい。報酬は後から参加した全員に必ず払うことを約束しよう。アストレアに住む一般人は事が収まるまでは自宅に戻り待機するように)



 アストレアの街中にどよめきが起こる中、アストレア過去最大の防衛戦が始まろうとしていた。

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