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異世界に導かれし者  作者: NS
第3章 死の森
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3-25 終わりの始まり6

「ぉぁぁ……」



 苦しげな唸り声を上げる巨体は蒼色の炎に包まれる。



「ようやくこれでタイマンだな」



 そう呟きながらモーガンはゴブリンロードの腹を貫通している蒼色の炎を纏った紅色に煌めく長剣を引き抜いた。


 それと同時にゴブリンロードは口から大量の血を吐き出し、身体を蒼色の炎で燃やしながら地響きを立てて崩れ落ちる。



(ふむ……)



 モーガンは背後の森から三本の青い煙が上がってるのを確認して、残り一体となった巨大な棍棒を持つゴブリンロードにずっと気になっていたことを尋ねた。



「お前達は何故闇魔法を使えるんだ? どこで誰に教わった?」


「さあなぁ……。俺が貴様に教えるとでも?」



 通常ゴブリンロードは魔法を使うことが出来ない。しかし、今回遭遇したゴブリンロード達は本来使用することが出来ない筈の闇属性魔法を使うことに加え、ゴブリンロード同士が連携しているという今までにない事例だった。



(さて……どうするかね……。出来るだけ情報を引き出したいんだがな)



 そしてモーガンとゴブリンロードが一定の距離を空けて睨み合っていると背後の森からアーク達のグループが到着した。


 到着して周りを見渡したアークは湖の向こうのゴブリンロードとモーガンが睨み合うのを見つけ、念のため声をかけた。



「モーガン! 加勢しようか?」


「そこで見てな! すぐ終わらせる」



 モーガンは背後から聞こえてきたアークの大声に振り返らず言葉を返し、その数秒後睨み合っていた両者は同時に飛び出した。



「“シャドウインパクト”!」



 ゴブリンロードは魔法により威力と速さを上乗せした上に飛び出した勢いを上乗せした棍棒による渾身の一撃をモーガンに向かって上から振り下ろした。



 ーーガキンッ



 凄まじい速度で振り下ろされた棍棒はモーガンを完全に捉え、轟音と衝撃波が辺りに広がった。



「ぐっ!?」


「今のは良い動きだったぞ。並の冒険者だったら間違えなく殺されていただろうな」



 しかし、叩きつけた棍棒の下でモーガンは無傷で立っていた。ゴブリンロードの渾身の一撃はまたしても空中の見えない何かに完全に止めらてしまったのであった。


 そして、ゴブリンロードは自分の渾身の一撃が止められたのに気づいて逃げようとしたが既に手遅れだった。



「“ラヴァ・ゼーデル”!」



 魔法を詠唱するとモーガンの紅の長剣からボコボコと音を立てて紅蓮の炎が渦巻いた。



「はあぁぁぁぁぁ!」



 雄叫びと共にモーガンの真紅の長剣から生み出された紅蓮の斬撃が咄嗟に盾がわりにしたゴブリンロードの棍棒を焼き切り、そのままゴブリンロードの身体を鎧ごと焼き切った。



「グオォォォォォォ!?」



 悲鳴を上げたゴブリンロードの身体からは大量の血が吹き出し、後ろによろめき膝をつく。


 そしてゴブリンロードにモーガンの強力な一撃が入ったのを確認したアークはその隙を逃さずに逃げられないよう拘束するため、杖を構え素早く魔法を詠唱した。



「“アースバインド”!」



 致命傷を負ったゴブリンロードに地面から出てきた長い土の鞭が締め上げて、モーガン達はゴブリンロードの身動きを完全に封じることに成功した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 しばらくして戦いを終えていち早く合流したアーク、フィーネ、ベルデがモーガンの元に集まった。



「これで終わりな訳だが、最後に言い残すことはあるか?」



 モーガンは拘束されたゴブリンロードに長剣の切っ先を向けて尋ねると、拘束されてから一言も言葉を発することがなかったゴブリンロードは突然口元を歪め不気味な笑みを浮かべた。



「ふっ、くくく……」



 そんなゴブリンロードの様子にモーガンは眉をひそめた。



「何がおかしい? 最後の最後で気でもおかしくなったか?」



 やがて誰一人として自身達の考えが読めていない様子で、困惑している冒険者達を笑い飛ばしたゴブリンロードは話し始めた。



「お前らは何か大きな勘違いをしているようだな」



 しかし、何の事かさっぱりという表情のフィーネはゴブリンロードに尋ねた。



「それはどういう意味?」


「この森にいるゴブリンロードは俺が最後な訳だが、何かおかしいとは思わないか? お前らがこの前見つけた冒険者の死体の事だ」



 ゴブリンロードの言葉に目を見開いてアークが思わず反応した。



「ちょっと待て。何故貴様がこの前死の森で冒険者の死体が発見されたことを知っている? それにあの冒険者達は貴様らが殺したのだろ?」


「くくく、本当にそうか? 俺達が使っていた武器に人を切り刻むような物がはたしてあっただろうか?」


「貴様! 何が言いたいんだ!」



 話を中々進めないゴブリンロードにベルデが声を荒げる中、モーガンは自分の心臓の鼓動が徐々に早くなるのを感じ、額に嫌な汗が浮かんでいた。


 するとモーガン達がゴブリンロードと話をしているとエンデ村の方の森から一人の騎士団員が焦った表情で駆けてきた。


 そして、騎士団員は息を切らしながらモーガン達に叫ぶように伝えた。



「副騎士団長! 大変です、森の周囲に何らかの結界が張られていて森から出る事が出来ません!」



 そんな悲鳴のような騎士団員の言葉にモーガンはごくりと唾を飲み込むとゴブリンロードに自分の予想が当たってほしくないと願いながら恐る恐る尋ねた。



「ま、まさかお前らの他に別動隊……。本隊は別にいるとでもいうのか……?」



 絶句している皆の表情にゴブリンロードは満足気に愉悦の表情を浮かべて、ついに耐えきれなく再び笑い始めた。



「くくく……あははははは! まさかアストレア聖騎士団の副騎士団長二人にSランク冒険者達まで釣られるとはな!!! そうだ! 俺達はあの方々の囮だ! お前らはまんまと騙されたんだよ」



 そこまで話終えたゴブリンロードの身体は何の前触れもなく突然赤く発光し始め、いち早くゴブリンロードの異常に気づいたアークが目を見開いて叫んだ。



「ッ!? まずい!? 伏せろぉぉぉ!!!」



 あっという間に視界一杯に死の光が広がる。


 そして目の前の赤く発光したゴブリンロードは辺り一帯の大地をえぐり取る大爆発を起こし、モーガン達は黒い煙に覆われた。

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